ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第2話 スピードレース #mini4wd

前回までのあらすじ

流しのミニヨン・レーサー北川は久々に新橋に来てみたところ、賭けレースのトラブルに巻き込まれる。イカサママシンを壊そうという大男に対し、マシンを壊すことが許せない北川。二人はミニ四駆で勝負することになる。

ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第1話 新橋の夜 #mini4wd ([の] のまのしわざ)

カランカラーン

いきつけのミニ四駆飲み屋ののれんをくぐる。普段とは違う雰囲気だ、それもそのはず、この大男が騒ぎを起こしたからみんな様子を伺っているのだ。普段は気さくなマスターも、今日ばかりは奥で無口に皿を磨いている。

マスター「き、北川さん!? ひ、久しぶりですね。最近調子はどうですか」

北川「どうもこうもないよ、この大男と勝負することになってしまってね。ところでマスター、最近よくない噂を聞いたけど、マスターこそ調子はどうだい」

マスター「え、ええ、まあぼちぼちですよ、ぼちぼち・・・」

おおかたお金に困って賭けレースに手を出したのだろう。胴元にもいくらかお金が転がり込む仕組みだし、最近のミニ四駆飲み屋の「飲み」はビックリマンチョコのチョコのようなものだからな、賭けレースが目的化しているところも多いのだ。

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大男「おう、そこの、勝負の準備はいいか」

北川「...」

北川はコースを一瞥すると、おもむろに手にした皮鞄から弁当箱を2つ取り出した。カラフルな弁当箱だが中身は弁当ではない、ミニ四駆と工具が詰まったものだ。マシンが2つ収められ、そのうちの1つを北川は取り出した。赤とピンクに輝くボディがスポットライトに照らされて眩しい。

小男「あ、あのマシンは!」

大男のとりまきであろう小男が北川のマシンのオーラに気付く。

小男「浜田さん、あのマシンはやばいっすよ。私の記憶が確かならば、あのマシンの使い手は流しの北川といって、全国各地のミニ四駆飲み屋のコースレコードを更新していく、伝説のレーサーですぜ」

大男(浜田)「な、なんだってぇ~~~~~~」

小男「マシンがジュニアニュースに載ってたので間違いないです。勝負するのはちょっと・・・」

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浜田「なに、お前は俺が負けるとでも思っているのか?」

小男「浜田さん落ち着いて下さい、万が一、負けでもしたら浜田さんのこれまでの栄光が...」

浜田「むう、まさかあんなゴロツキが伝説のレーサーだとは」

北川「・・・どうした、やらないのか?」

浜田「ミニヨン・レーサーたるもの、男に二言はない。例え負けると分かっていても、僅かなチャンスに賭けて戦うのが男だ。よしやるぞ!」

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ざわ・・・ざわ・・・ざわ・・・

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北川と浜田のマシンを並べ、マスターがカウントダウン。1ラップ3周でのスピードレース、その結末は一瞬でついた。

マスター「北川選手の勝ちです」

圧倒的なスピード、そして安定性で一分の隙も見せない北川の走り。浜田の完敗である。

浜田「オレの負けだ。それにしてもお前の走りは見事だった。あの鮮烈な走り、オレのこの瞳に焼き付けたぜ。どうだ、ここはひとつおごらせてくれないか。マスター、酒だ、酒もってこい!」

北川「・・・オレは酒は飲まない。すまんが辞退させてもらう」

浜田「オレの酒が飲めないなんて、はっきりいう奴は珍しいぞ。気に入ったぜ、兄弟。今日から兄貴と呼ばせてもらう。頼むぜ、兄貴。」

浜田はすっかり北川の最速マシンがいや北川を気に入ったようで、学生のマシンのことなど忘れてしまったようだ。

北川「学生さん、君のマシンを見せてくれないか」

学生が親の形見というマシンを見せる。

北川「こ、これは!・・・」

驚愕する北川。

学生「え、何か、何か知っているんですか?」

北川「いや、なんでもない。このマシンは確か...」

学生「パパが作ったものなんです。でも、先日突然いなくなって・・・。ミニ四駆飲み屋にいけば何かわかるんじゃないかと思ってきたんですけど、この店の主と呼ばれるその人に勝負を吹っかけられて、走ってみたら勝っちゃったんです。そしたら因縁つけられて...ところでWD-40って何ですか?」

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WD-40は独特の甘い香りをする潤滑剤だが、飲み屋のことである。大方カクテルかなにかの匂いと間違えたのだろう。大男もとい浜田もおっちょこちょいである。

浜田「すまんな、学生。そんな事情があるだなんて...オレに勝つマシンを作るオヤジさん、相当な腕前だったんだろう。早く見つかるといいなあ...ぐすっ」

どうやら浜田は涙もろいようだ。にしてもオレ様系は相変わらずである。一方、北川は相変わらず深刻な顔をしている。

マスター「北川さん、いつもの奴です」

マスターが北川にミルクを、学生にはコーラを持ってきた。

浜田「よし、友情の証に乾杯だ。」

ひとり浜田だけが盛り上がっている。北川は考えごとをした挙句、ひとこといった。

北川「・・・新宿だ」

学生「えっ?」

北川「新宿に行こう」

浜田「オレもいくぜ、兄貴!」

北川は何に気付いたというのか、そして新宿に何があるというのか。学生の父の行方は分かるのか。

(つづく...)

この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。

賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。

20歳未満の飲酒は法律で禁じられています。

ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。

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いなくなった父はどこに...地平線の彼方なのか。