デトロイトショーで新型NSXコンセプトがお披露目されています。今回は内装もみることができ、いよいよ市販に向けてカウントダウンです。
カッコイイし、ハイテクだし、フラッグシップに相応しいアピアランスだと思うのですが...どうしても馴染めないんです。
その理由は、新型NSXが初代NSXのDNAを引き継いでないから。
V6横置きミッドシップと全体のシェイプは似てなくもないのですけど、デザイン的に明示的に踏襲した部分を感じないのです。隔絶しているといってもいいでしょう。
初代NSXのアピールポイントは横に伸びたエアインテーク、これはその後ビートにも継承されたデザインアイデンティティです。
そしてもっとも目をひいたのが長いリアオーバーハングとトランク、そしてトランク上に左右に橋のように渡された横一文字の赤いLEDハイマウントストップランプ。
新型NSXもこの意匠を引き継いで、左右に長いハイマウントストップランプをつけてはいます。だが違うんです、全然違うんです。空中に浮いてないんですよ。
空力的なことをいいだせば、これがきっとある速度域になると上にせりあがってくるアクティブリアスポイラーであろうことは容易に予想できます。ただNSXのリアウィングは台形の安定した形、柱の上に掛けられたご神木のような形状であるべきなのです。何がいいたいかというと、これは
鳥居
なのですよ。
鳥居といえば朱色に染まり、2本の太い柱が笠木、島木そして貫をいれてがっちりと固定しています。NSXのテールランプとハイマウントストップランプ一体型リアスポイラーはこの鳥居の意匠そのものなのです。ですからそこには日本人の魂が宿っているのです。
ところがこの新型NSXコンセプトにはその日本人らしさが表れてきません。エンブレムはホンダではなく、ACURAのもの、そして生産するのはアメリカの工場です。
確かにスーパーカー市場はアメリカであり、ヨーロッパが中心でマーケット的にいえば経済の停滞した日本はマイナーな存在かもしれません。しかし、あえて聞きたいのは、ホンダはどこの会社なのか、ということなのです。
初代NSXにあこがれたのは、それは創業者・本田宗一郎さんの作品の一つであり、ホンダF1に通じる懸け橋だったから。アイルトン・セナが、中島悟さんがステアリングを握り、鈴鹿サーキットを周回することで、ホンダ=F1というイメージを強烈にアピールしてくれました。日本人が世界に挑戦して勝つ、勝てるということを実証してくれたひとつの象徴です。
新型NSXはそのルーツ、DNAを忘れてしまったかのよう。NSXという名前は付いていますが、これはACURAであり、アメ車であり、どんなにたぐっていっても、本田宗一郎さんにも、F1にも辿り着きません。
それが日本人として、とても残念なところ。
仏像と同じで、魂が入ってないと良くできた単なる彫刻でしか過ぎません。ホンダが日本人の名前を冠している会社である以上、フラッグシップはHONDAバッジをつけ、日本人の文化、伝統、美意識を集めて欲しかったです。
新型NSXに足りないもの、それは日本人の心。経済性やマーケティングを重んじ、魂をなおざりにしてませんか。
[Honda | 2013年北米国際自動車ショーでアキュラ新型「MDXプロトタイプ」と進化した「NSXコンセプト」を世界初披露]