宮城県の松島~三陸に行ってきました(6)放射能汚染における、穢れ思想とエンガチョ問題

宮城県の松島~三陸に行ってきました(5)大川小学校の津波被害」の続き。

三陸といえば海と海の幸。

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しかしながら皆が気になるのは放射線の影響。特に過敏(ヒステリック)に反応しすぎる人々は多く、防衛的になる余りに他者に攻撃的になる姿はいくらなんでもないだろう、というのもあります。私は放射線に関しては、理工系として理論的かつ冷静に対応するべきと考えており、現在の放射線の影響を日々注視した上で今回の旅行はまったく問題がない、と判断して行きました。

放射能情報サイトみやぎ

空間放射線だけでなく、海水浴も同様に問題はないです。

その他の測定結果 - 放射能情報サイトみやぎ

県内海水浴場の水質等検査結果について(PDF, 2012/6/20発表)

県では,海水浴場の水質の現状を把握するとともに,その結果を県民の皆様にお 知らせするため,毎年度検査を実施しております。
今年度は,開設を予定している海水浴場(1箇所)の水質検査を行ったところ,環境省が定める水浴場判定基準で適と判定されましたのでお知らせします。
また,放射性物質の検査を実施したところ,放射性物質は検出されませんでした。

これにさきだち、湖沼、河川、海岸の状況も確認しています。

河川、湖沼及び海域における放射性セシウムの状況について(PDF、2012/2発表)

1.汚染の状況
① 水質の状況
これまで実施した約700 地点中、直近の調査で1Bq/L 以上検出されたのは7地点であり、最大でも7Bq/L。

② 底質の状況
・現状
【河川、湖沼】(別紙1~4)
河川、湖沼とも、20km 圏内など一部限られた地点において高い数値が見られるが、大半の地点では、概ね2,000Bq/kg 程度以下。

【海域(沿岸1~2km)】(別紙5、6)
全体としては、概ね100Bq/kg 程度以下と河川、湖沼と比べて低い水準。

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また、海産物、特に私が大好きな貝類、養殖カキについても確認しています。

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(焼きガキ)

気になる、放射性物質のこと - 後藤家の食卓~石巻カキ~通販サイト

今、海産物においていちばん気になる放射性物質のことも、生産者としてみなさんにきちんとお伝えする義務があると、後藤家は考えています。宮城県産のカキはすでに水産省の検査で「限界値以下」の数値が出ていましたが、念には念をと、石巻市竹浜の海で育てた後藤家のカキも独自検査に出すことにしました。その結果、ほかの宮城県産カキと同様、放射性ヨウ素、セシウムともに非検出という安心の結果が出ましたのでここにご報告いたします。

宮城県内の農林水産物の放射能測定結果(地図形式)

宮城県内で採取した農林水産物について,下記のとおり放射能測定を実施しています。
 これまでの測定結果を,地図形式にて公表しています。

データをみても検出せず(測定限界値以下)が多いです。

データ上では安全であることが確認されていますが、津波の甚大な被害の前にカキ養殖業は壊滅的な打撃を受け、今も復興に向けて苦難の道のり中にあります。現在での経営再開状況はたったの23%、将来的にも震災前の 6割程度にとどまるという見通しです。

【東日本大震災復興に向けて】宮城県におけるカキ養殖の震災被害と復興状況 | その他レポート(休刊中) | 過去の刊行物 | その他刊行物 | 農林中金総合研究所

今回の東日本大震災では農林水産省の発表によれば、宮城県のカキ養殖施設は98%とほぼ全施設が被災し、1年経過した時点での経営再開状況は23%にとどまっている。同発表では、今後の経営再開予定を加えても震災前の6割程度にとどまるとしており、今回この事情を調べる目的で現地に出向き、カキ養殖が管内漁業の中心に位置づけられる漁協の支所で関係者からヒアリングを行った。
宮城県におけるカキ養殖の概要を整理したうえで、被災・復興状況にかかるヒアリング結果を報告する。

さらに輪をかけての打撃は「太平洋全域が汚染されている」という風評被害です。カキといった海の中に長い間浸かっているもので非検出なのに、海水浴すら許さない風潮もあります。もちろんデータはデータ、モニタリングポストはモニタリングポスト。今、現在の空間線量を正しく計測できているかどうかは検証が必要です。

そういったこともあり、念のため空間線量計も購入して持参しました。

【Amazon】 エアカウンターS
B006YJEWTQ

エアカウンターSは大ヒット商品、エアカウンターと同等の性能をもちながら計測時間の短縮、持ち運びが便利なスティックタイプとなった後継商品です。こちらで行く先々すべて計測してみましたが...

ほとんど0.05μSv/hしかさしません。

このエアカウンターSの計測範囲は 0.05~9.99μSv/h。つまり0.05ということは測定限界値以下ということです。ちなみに計測誤差は±20%となっていますが、どこを何度計測しても0.05~0.06程度しかさしませんでした。これは松島の各所、海岸、女川、雄勝、大川小学校、すべてだいたいその数値です。

これらのことを総合すると、今回のツアーの先々で、現在心配するほどの放射能汚染はほとんどない、といっていいでしょう。しかしそれを言っても分からないひとがいます。

その場合の口上はだいたいこんな感じ。

・今も福島から放射能が降り注いでいる
・あなた(私)が知らないだけ
・安物の家庭用線量計じゃ分かるわけない
・とにかく海のものは食べさせないで
・とにかく海で泳がせないで
・大人(私)はいいけど、子供にはさせないで

私はどちらかというと慎重派です。危ないこと、特に死の危険性がある事に対して大きな警戒をしています。しかし少なくともこの短期間の旅行において、放射線による悪影響はないと断言できます。にもかかわらず、偏見と差別を受けたのはなぜだろう、と3日3晩考えて出た結論が「穢れ思想」とエンガチョです。

そのキーワードをググったところ、なんとまさにそれをいいあてた記事を見つけました。すべてを引用したいくらいですが、一部を。

穢れ思想とつくられた母親像から見えた放射能問題−「現代化」問われる日本社会 : Global Energy Policy Research

現代に蘇った前近代的概念「穢れ」

エンガチョという子どもの遊びがある。「汚い」ものに触れてしまった子はその部位を別の子にこすり付ければ「穢れ」から逃れることができる。しかし、ターゲットとなった子は「エンガチョ」と叫び、仲間内で決められた印を結ぶとそれを防御できる。年代や地域によってさまざまなバリエーションがあり、エンピ、バリアーなどと呼ぶこともある(ちなみに筆者は「エンピ」世代だが、保育園に通う筆者の子どもたちは未体験らしい)。

「穢れ」とは神道や仏教における観念であり、清浄ではなく汚れて悪しき状態を指す。とくに死、疫病、出産、月経や犯罪によって身体に付着するものであり、個人のみならず共同体の秩序を乱し災いをもたらすと考えられたため、穢れた状態の人は祭事などに関われずに共同体から除外された。

被災者・避難民のみならず、被災地のがれきや青森の雪までも排除するのは、まさに震災と原発事故という災いによってもたらされた「穢れ」が共同体の秩序を乱すことを恐れ、自分たちの共同体の清浄を保ちたい望む前近代的心性ゆえである。

戦時下では、「母である女性」という言葉が躊躇なく用いられ、家庭運営、とりわけ育児の責任は女性に全面的に課せられた。「母性」はさらに「国家的母性」へと収斂され、女性の生き方は「母性」に限定された。戦時下の絶対的な米不足を背景に代用食としての郷土食や玄米食が推奨され、家族の栄養摂取と健康増進は「主婦」の責任とされたのである

このような状況下で、女子教育においても国策に忠実な「母性教育」が行われ、婦徳、貞淑礼節と母性の涵養が説かれた。かくして、国家のみならず婦人雑誌を中心としたメディアにも後押しされ、母子の結合は聖化され強要されていった。家族、とりわけ子の食と健康に責任を負うのが母の務めという意識は、戦時下の産物なのである。

放射能パニックと「勝ち組」母の動揺

すなわち、放射能問題の根幹には前近代的な「穢れ」思想と近代的な家族観・母性概念の奇妙な結合が存在しているように、筆者には思える。しかも、子の被曝を恐れて産地を選んで割高な食品を購入し避難も厭わない母親の姿は、それだけの時間的・経済的余裕がある「勝ち組」家庭であることを意味する。もはや、標準家族であることは「勝ち組」なのである。「勝ち組」としてのみずからのあり方を侵害されたくないという心性が、秩序を乱しかねない「穢れ」の忌避に向かっているともいえるかもしれない。

つまり、現代において「放射能」とは「穢れ」であるため、たとえば福島を高速道路や新幹線で通過するといったことであっても「穢れる」ことになります。

たとえ空間線量が低く、測定限界値以下であっても東北地方や太平洋は「穢されてしまった」ため、忌避されることになります。完全にエンガチョ切った状態です。

食品について、子供の口にするものをすべて選別、「パーフェクトに安全なものにしたい」という欲求は震災以前から自然食品を偏重する傾向がある家庭では、より顕在化したことでしょう。

しかしですよ。

そういった自分の狭量な欲求をすべて充足させるために、風評被害を蔓延させるのは私は看過できません。

甚大な津波被害を受け、今も物質的にも精神的にも大きな傷を受けた被災地で生きる人々の希望を奪いかねない、とても野蛮な行為です。自分たちが防衛的になるがあまり、弱い人々を苦しめていることに気付かないフリをしているだけではないでしょうか。

いいかえればイジメの構造と同じです。イジメの理由はほんの些細なことです。多少服装が汚い、だらしないことをあげつらねて、徒党を組んで無視、排除する。場合によっては直接的、間接的に攻撃する。放射線汚染問題についてアレコレ言うのは、自分たちは直接手を出してないから無実だ、という悪辣ないじめっ子と同じです。これを大の大人が「私たちの子供を守るため」と正義を振りかざして行っているのが、現状です。

これを世間では「放射」と呼んでいます。しかし放射脳は放射脳を呼ぶらしく、特に前述の自然食品愛好家、偏執狂といってもいいクラスタは全員がそうなので自分たちの過ちに気付きません。それどころか集団ヒステリーは加速し、東北全域に対しての偏見と差別が公然と行われることになります。

これまで事実を積み重ねていけばきっといずれは気付いてくれるだろう、理解してくれるに違いないと思っていましたが今回の三陸ツアーでよく分かりました。これは無理です。ヒロシマ原爆の時と同じく、第二の「ピカドン差別」です。

偏見と差別は毅然と立ち向かわなければなりません。今までの姿勢を改め、今後はこのような偏見と差別には、戦っていこうと決意しました。そうでなくては、津波で失われた方に申し訳がたちません。

もうイジメを見て見ぬふりはできません。だから再度言います。「穢れ思想」とエンガチョに基づく偏見と差別には毅然と戦います。子供だって海に入れます。海の幸も食べます。死という点では海で流される溺れる方が、高速道路を軽自動車や超低価格バスツアーを使って事故にあう方がよっぽど危険というものです。

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同じ日本に住むものとして、日本人として、親子2代にわたって。心の復興支援、続けていきます。