Perfume「Spring of Life」PVに込められた深い意味 #prfm

Perfumeの新曲、「Spring of Life」が届いてワッショーイ! と喜びいさんでPV(フルバージョン)を見てみました。そしたら・・・


(ハイライトバージョン)

ラストみたらどんより・・・

歌詞が春が到来してときめく恋心を歌っているのと対照的、いや実際その恋心をうまく表現しているのですが、余りにも切なすぎてある意味ダーク。サイバーパンクの最高峰、ブレードランナーに匹敵するほど(いいすぎ?)。

(以下ネタバレあり)

PVの映像のあらすじ。

ロボットアームを使い、コンピュータに製造される3体のアンドロイド。
完成し電飾を光らせ踊りだすアンドロイド。
しかし動きはすべてプログラミングされ、自分で動くことはままならない。
以前ロボットアームによる指示、ボタン操作で動作する。
人間のような動作、食事をする動きもできるが、当然食べることはないし、食器の上に食物も置かれてない。
うごきのないかしゆか・アンドロイド。唯一人差し指が動く。と同時にモニターにハートのマークが現れる。
涙をながすのっち・アンドロイド。その目線の先にはハートのかけら。
口の中からハートが出てくるあ〜ちゃん・アンドロイド。不思議そうに眺める。
遠くをみつめるかしゆか・アンドロイド。その視線の先は何を?
コンピュータモニターが乱れ、ハート、LOVEの文字が乱舞する。
暗闇の中から3体のアンドロイドが立ち上がる。
しかしその動きはぎこちなく、糸の切れた操り人形のよう。2体は立ち上がり、残りの1体を補助して立ち上がらせる。
モニターでハートの文字が点滅する。
旧式の電話で話をするあ〜ちゃん・アンドロイド。
モニターを見ながらリップをつけるかしゆか・アンドロイド
やったのポーズをするあ〜ちゃん・アンドロイド
ロボットアームにマニュキュアをつけてもらうのっち・アンドロイド
3体のアンドロイドは電飾をきらめかせながら、表情豊かになる
そしてあ〜ちゃんアンドロイドの背中のプラグをのっち・アンドロイドが、はずす・・・
はずした途端にブラックアウト、かしゆか・アンドロイドの笑顔も含めてすべての動作を停止。
コンピュータモニタもすべてブラックアウト・・・暗黒の世界が訪れる

私の解釈はこんな感じ。

コンピュータで構成された世界で、生まれたアンドロイド。
その姿形は従来のロボットアームと異なり、より人間に近い形にされた。
動きも人間に近いようにプログラミング。
その結果人間と同じように感情が生まれた。それが恋心。
コンピュータとつながるケーブルとは異なる電話線で外界とコミュニケーション。
コンピュータの世界を抜け出そうとする。
ところが背中のプラグを抜いたとたん、機能を停止。
コンピュータで構成された世界も終焉を迎える。

テーマは生きること、そして死ぬこと。JPNの最初に作られた曲、GLITTERからの流れと共通する昨今のPerfumeのテーマです。

電源が入り踊っているアンドロイドは「生きている」といっていいでしょう。
しかしそれはプログラミングされたものであり、操られたもの。ある意味で

「死んでいる」

といってもいいもの。
そしてLOVEを発見、LOVEに生きることを決めたアンドロイドはその準備をして、殻を破っていこうとするのです。
ところがその結果迎えた結末は、死でした。
しかしその死に至る時の心、そう心が初めて宿り、死という永遠の時間を恋にときめいて生きるのです、、、って

きゃーーーこわいいいーーーー

いやもうなんていうか切ないですよ。生きるってなんなの、死ってなんなのという命題を突きつけられたわけですよ。Perfumeですよ、テクノポップアイドルですよ。映像はサイバーパンク、でもテーマは哲学って。

この夢の世界で死んでしまうってのはもうね、ミンキーモモの世界。

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いくら制作側の事情といっても、死んじゃうってのは余りにもしんどすぎです。ある意味トラウマといっても過言ではないです。そんなトラウマを思い出してしまうほど、重いんですよね、ラストが。

曲は最高なんだけど、PVはちょっと何度も見られないなあ。

そして3体のアンドロイドの同一性について。姿は多少異なるけど、どれも基本同じアンドロイドのバリエーション。そしてその心はひとつ、3体がそれぞれ別の行動をしていても、結局同じ方向に収斂していきます。

そもそもアンドロイドとは、人間の形に似せたロボットのこと。ロボットである以上製造物であり、それは基本同じ設計で量産されるのも自然なこと。そして独自性よりも同一性が重んじられるのも特徴。1体が殻を破り、外に出たいと考えたとき、3体すべてが同じ行動をすることからも分かります。

この1体がすべて、すべてが1体というのは火の鳥、ロビタを想起させます。

www.geocities.co.jp/NatureLand/4270/new/robita1.htm

ロビタは、人間の心を電子頭脳にもつ一台のロボットですが、時代が400年以上もくだりその秘密を知る人はいなくなりました。機械らしくない愛嬌のあるロボットということで、ロビタは記憶中枢も含めて複製され、どんどん数が増えてゆきました。同じ記憶を持つロビタは、同じ思い出と、同じ歌と、同じ遊びをおぼえていました。こうして便利なロビタが一日に520人ほど量産されるようになった時代のあるとき、ある富豪の家のロビタが子供を事故死させたという疑いをかけられ有罪となり、その家のロビタ全員が溶解処分されることが決定されました。

 そして刑が実行されて一部のロビタが溶かされた直後、全世界のロビタ数万人が集団で自殺するような事件が起きました。そして同時期に月にいた一台のロビタは自殺する環境がなく、しかし自分が人間であったという自我を取り戻したことを確認するために、主人を故意に殺すという、してはいけないと知られた行為をしてしまうのです。

「私たちは昔 たった一人のロビタから分かれて増えた兄弟です/ 私たちは全部が一人で 一人は全てです/ もし私たちの一人が死刑になれば/ ロビタは一人残らず死ぬでしょう」

「One for all, All for one」とは、ラグビー選手が一体となって全体と部分とが有機的に一つの目的のために動くときの合言葉だそうです。これは、カントによる有機体の説明「各部分は他の全ての部分のために、全体は各部分のために存在している」と共通した内容を持っています。共通の祖先をもつということが、その後の複製体の運命を共通の未来へと運ぶ要因になっているのです。

Perfumeは3人のメンバーによって構成されており、その誰一人も欠けることも、交代することも不可能な存在。一人が全体であり、全体が一人、まさに One for all, All for one です。

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ジャケットにもでてくる透明な殻、これが今いる世界の大きさを表しているとするとその殻を破り外界にでるのもひとつの道。海外進出というのがこれに相当するのかも知れません。

それが中に残された日本のファンにとって、今の Perfumeの死を意味するかもしれない、という警告でもあり、もう一つの可能性を指し示しています。

それは日本のファンも海外に出ようよと。

日本の社会システム、日本語に縛られた世界で一人一人が個性がありそうで、ない現実、成長が見込めない将来、社会不安は大きくなり閉塞感だけが増して行く日本。そんな日本でウジウジとインターネットに書き込みだけしていていいのか。それは生きているといえるのか。

生きるってそういうものじゃないでしょ、弾けるような恋をしようよ、サプライズを待っていても仕方ないよと。

行動を起こすか、それともスケジュールが埋まっていても思い出は空白のままになるのか、すべては自分次第です。

うーん、やっぱり Spring of Lifeは深いイイなあ。PV怖いけど。