FRに未来はあるのか? トヨタ86とスバルBRZの行く末

まだ発売してないのに憂いています。

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スバルBRZは3月末、トヨタ86は4月頭に発売予定で絶賛予約受付中。評論家のインプレッションはどれも手放しでほめるものばかり。どこにも、一点の欠点もなく素晴らしいクルマのようです。ただこういうときこそ何かあるのが常で、用心深い私には逆にますます何か落とし穴があるんじゃないかとドキドキです。

そんな中、86とBRZの比較記事も多くでてきて、なんとなく傾向が見えてきました。まとめるとこんな感じ。

・スバルにとって初のFR
・4WD至上主義のスバルにとって、FRとは前後 0:100 配分の4輪駆動車
・絶対的な安定性と速さを追求する(グリップ重視)

一方トヨタ86は

・操るのが楽しいFR
・運転してうまくなるエントリーカー
・気分を高揚させるスポーツカー
・ドリフト、ドリフト、ドリフト
・リアが流れればハッピー

といった位置づけのようです。その結果足回りのセッティングが異なるとのこと。どちらのクルマもスバルの群馬工場で生産するので、グレード違いといった感じで内装や外装、足回りの部品をかえてつけるといったところでしょうか。ちなみにトヨタは1000台、スバルは450台の月間販売数を予定しています。合計で1450台ですか、、、

どうしてもトヨタが目立つので「えー、86という名前なのにハチロクに似てないじゃない」と思っていたのですが、スバルが放つ初めてのFRスポーツカーと考えると「BRZなかなかいいんじゃないの?」という気持ちになれます。

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ボディカラーがWRCをイメージしたWRブルーだとなおさら。ライトまわりにリアフェンダーの盛り上がり方はインプレッサWRCを彷彿とさせ、スバルの系譜を感じます。その上で前後 0:100 の4WDとしてのセッティングを施したとなると、それも一つアリかもしれません。

今回すごいなと思ったのは、プロポーションがよくまとまっていること。低いボンネット高は今時の背高ミニバン、コンパクトカーにはないシルエットですし、これに水平対向エンジンが貢献したことは間違いありません。昨今のクルマは歩行者保護を求められており、ボンネットフードとエンジンの間のクリアランスが必要となっています。そうなるとどうしてもボンネットの高さが上がってしまいます。実際CR-Zが結構いいデザインにもかかわらずぼってりしたイメージを持つのはこのボンネットの厚さが野暮ったさにつながっています。

エンジンヘッドが左右に振り分けられたために成し得られたシルエットです。

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これを守るためにフロントアッパーマウントも低い位置におかれ、タワーバーも左右につなげるのではなく低い位置でバルクヘッドへとつなげています。この意味で水平対向エンジンを採用したのは価値がありますね。

さてこのFRレイアウトですが、何が困るって時代はもうハイブリッドにEVがまったなしという点です。

トヨタのプリウスはもちろん、アクアを投入、ホンダもインサイトにフィットハイブリッドとハイブリッド攻勢。日産はハイブリッドよりも一足飛びにリーフでEVを加速しています。

そういったさなかにレシプロエンジンの行く末は厳しいことこの上なし。特にFRレイアウトをとるのは必然性が非常に少ないのです。

FRレイアウトでハイブリッドもあるにはありますが、高級車、大型車がメイン。悪い燃費を向上させるのに貢献するデバイスとしての位置づけで「軽量スポーツカー」にはその重さと大きさがネックに。モーターやジェネレーターを内蔵するミッションは肥大化するし、重いバッテリーをリアに積まなきゃいけないしで、86/BRZクラスのFRがハイブリッド化する余地はなさそう。

となると気が早いですけど、次世代の86/BRZはどうなるのでしょう、ということです。

モデルチェンジは早くて5年、長くても6年〜8年と考えるとこのハイブリッド、EV化の勢いはとどまりません。モデルチェンジできなければできないほど状況は悪化、内燃機関のFRスポーツが出現する可能性はますます狭まります。

たとえ後継がハイブリッドで出たとしてもそれは軽量スポーツではないし、EVとして出すのであればモーターは前に載せません。後輪駆動なら後輪の側にモーターがつくべきだし、実際にそう設計することでしょう。

となると水平対向エンジン+FRというレイアウトはこのモデルが最初で最後になるかもしれないのです。

にこやかに86を宣伝するトヨタ社長ですが、そのトヨタはハイブリッド化の急先鋒。果たして6年後にトヨタ86をモデルチェンジするのか、ただ一過性のブームに過ぎないのか、その結論は6年後にわかることでしょう。

ただスバルはちょっと趣が違います。

なにせ前後駆動配分 0:100の4WDですし、水平対向エンジンですからね。メーカーの沽券にかけても出してくる可能性はあります。

新型NSXのようなフロントモーター駆動のハイブリッド4WDにする可能性だってあり、その場合はフロントモーター付きがインプレッサ、モーターなしがBRZとすることもできます。BMW i8も同様のシステムをとることを考えると、そういう方向性は自然です。

となるとスバルBRZは売れ行きいかんでは、次世代につながる未来のFRスポーツとして生き残る可能性があるのです。まあ、内燃機関ですけどね。

同じクルマのようにみえて、メーカーの立ち位置や未来像を考えると随分と異なるクルマなのかも知れませんよ。その上で86を買うのか、BRZを買うのかを考えてみるのもいいのではないでしょうか。