押井守「今のアニメはコピーのコピーのコピー」 ガンダムAGEに見る劣化コピーの深刻さ

asahi.com(朝日新聞社):「若者は夢を持つな」と監督が言った - 小原篤のアニマゲ丼 - 映画・音楽・芸能

押井監督は、日本人が科学技術の表面的な受容と円滑な運用のみにかまけ、その技術の核たる思想、技術をゼロから立ち上げる思想を持たなかったことが今回の原発事故を生んだと指摘。様々な当事者の認識を改めるために今回の事態をヒロシマ・ナガサキに続く「第3の原爆」と呼ぶべきだと訴えました。

「技術の思想」の欠如は、ロボットに「かっこよさ」のみを求めるアニメ製作者の思考にもあてはまる、と自作「機動警察パトレイバー」をもとに批判を展開し、そして訴えかける核を持たない日本アニメは、その表層を細緻(さいち)に描き込み磨きあげることで「極東の島国の珍なる文化」として世界に地位を獲得したと分析。

工芸品的に細部を作り込みたがるその日本人的な意識が、細緻(さいち)な映像表現に好適なロボット・アンドロイド・サイボーグなどへと向けられた結果、肉体や自意識をめぐるテーマへと結びつき、つまりはアニメという表現形式が発展過程でテーマをはらんでしまったのだと説き明かしました。

そして現実の劣化コピーに過ぎない実写と違い、「現実に根拠を持たない」アニメは珠玉の工芸品となり得、アニメはその根本から細部までコントロール可能であるがゆえにその力を使ってアニメ監督は、全世界・全歴史に向けて自分の言いたいことを完全な形で言えてしまうという誇大妄想の極限を味わうことができる

これは悪のにおい、危険なにおいがする。ゆえに若い人をひきつける。

しかし僕の見る限り現在のアニメのほとんどはオタクの消費財と化し、コピーのコピーのコピーで「表現」の体をなしていない

あと、ユニコーンガンダムのツノはアイデアとして面白いけど、だからどうなの?

押井さん、さすがの切れ味でガンダムにまでその刃を向けています。残念ながらユニコーンにしか触れられていませんが、AGEはどう映ったでしょうか。

さて面白いことにこの「コピーのコピー」はガンダムAGEにもよくあてはまります。ガンダムシリーズという枠組み、伝統、風習、慣習、いや呪縛といった方がいいでしょうか、その中でクリエイティブを発揮するのは至難の業。どうしても偉大なファーストガンダムをはじめ、各種アニメのいいとこどりをしようとして結果残念な状況に陥っているのはAGEを見ているオールドファンならよく分かるでしょう。

結果「実況」と呼ばれるソーシャル視聴で「ツッコミ」ながら見るスタイルがもっともAGEを楽しめる、ということになっています。ビデオ視聴だとこの楽しみができないので、さらに残念感が増します。

AGEがいかに残念か、もうそれは筆舌に尽くしがたく、貴重な睡眠時間、ひいては人生を削り取られてしまうので多くは語りません。いや語りたくない、という心境です。まあいってしまうと、本放送時「いつまでたっても本編はじまらないなあ」と思っていた00(ダブルオー)の最終回で「映画に続く」となってTVシリーズ1年分が映画の予告編かよ!とガックリして、しかも映画では「今度の敵は異星人!」なんてガンダムシリーズは人間対人間の戦争ドラマだからよかったんじゃないか、そのタブーを犯すのかよとダブルガックリしたダブルオーが名作に思えてくるくらい、です。

それでもなんで見ているのか? それは面白いとかじゃなくって、

おれたちは見ることを強いられているんだ!!!(集中線)

押井監督の発言の「アニメ」を「ガンダム」に置き換えたい気持ちです。

しかし僕の見る限り現在のガンダムは、コピーのコピーのコピーで「表現」の体をなしていない。

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SEEDの映画はまだでしょうか・・・