女・子供にはわかるまい。潜水艦乗りの暗く、深い世界「STEEL DIVER(スティールダイバー)」

スティールダイバーなう

任天堂が放つ、渾身の問題作。それが潜水艦ゲーム「STEEL DIVER(スティールダイバー)」です。

スティールダイバー

何が問題かって、いやもう本当に色々と問題なんです。まず潜水艦というもの自体が

・一般市民にまったく馴染みのない乗り物!

乗ったことある人いますか? 飛行機のったことない人というのは、バブル時代を経て海外旅行が当たり前になった今日ではとても珍しく、私の周りには @KazMiuさんくらいしか知りません。しかし潜水艦にのったことのない人、というのは逆にほとんどで、乗ったことがある人の方がとても珍しいでしょう。自動車、船、飛行機と比べるとそれくらい馴染みのない乗り物なのです。

ですから「潜望鏡」といっても海からぽこんと突き出るアレね、と想像がついても見たことある人はいないわけです。見たことがないからどんな風に見えるかなんてサッパリ想像がつかない。そんな潜望鏡をリアルに体験しましょう、といってもポカーーーーンです。

ポカーンはまだまだ続きます。そもそもサイドビューの潜水艦、潜水艦をサイドから見て操作するというのも現実離れしています。実際には海の中でしかも深海です。海の中は濁っていたり、深海になれば光が届かず闇の世界。そんな闇の中でサイドビューがくっきりはっきり、っていうのもまた現実ではありえません。地上をいく自動車や飛行機がサイドビューでもなんとなく受け入れられるのは、空気が綺麗で透明で光あふれる世界だから。深く、暗い世界でサイドビューだなんて、これまた想像がつかないわけです。

よしんば、よし、これが潜水艦だ。沈んで浮かんで、進みましょうといってもそんなにお気楽極楽なものではありません。潜水艦乗りといえば一寸先は闇、死と隣り合わせの世界。たとえ死ななくても狭くて閉鎖された空間に何十日も押しこまれた日には肉体的にも精神的にもめりこみます。そうです、闇の世界とは心の闇をも含むのです。

ですから

さあ潜水艦のゲームをやっちゃうよ!

なんて、お気楽極楽な気分でできるはずなんて、あろうはずがないのです。マリオみたいにキノコや亀にやられちゃったよ、ピロピロリン、ペペッペペペッペペコペコペン、なんてファンタジーとは違います。無限1UPなんてカンタンに命を増やしますけど、潜水艦では失敗は死を意味し、復活なんてありはしないのです。

特に日本においてはそう。旧日本海軍と言えば、ある意味潜水艦の最先端をいき、その質、数ともに世界最大級。一方でその損耗率もひどいものです。それほど死のカオリが漂うのが潜水艦。

ですから走ったり、滑ったり、空飛んだりというファンタジー系ゲームとは一線を画すのも致し方なし。ゲームオーバーは死のカオリなんですから。

そんな潜水艦をなにをどう間違っちゃったのか、任天堂が3DSに投入してきたんですから驚きです。しかもあのマリオ、ゼルダの生みの親、世界の宮本茂氏まで投入。

サイトでは社長自らがインタビュアーとなって、スティールダイバーの魅力について語っています、が。

ニンテンドー3DS|社長が訊く『スティールダイバー』|Nintendo

宮本: あと、ジャグリングを教えてくれたのも彼で・・・。

岩田: ジャグリングですか?

宮本: はい。大道芸で複数のボールを投げる曲芸を、イギリスのプログラマーさんたちはみんなやっていたんです。

岩田: それは任天堂にやってきた3人全員がそうだったんですか?

ジャイルズ: はい(笑)。

宮本: ジャグリングをしていて、それからいきなりフロッピーディスクを投げたりしていました。

岩田: え?フロッピーを投げるんですか?

宮本: 当時は、ネットワークがなかったので。

岩田: ああ、あの当時はまだ コンピューター同士がつながっていなかったんですね。

ジャイルズ: それで、ファイル交換用のフロッピーディスクを投げて渡していたんです。

宮本: で、飛んできたフロッピーディスクをパシッと受けとって、コンピューターに入れると(笑)。それでまた時間が空くと、彼らは3個のボールでジャグリングをしていまして、僕も興味があったから教えてもらっていたんです。

さっぱり意味がわかりません。わかったのはイギリスから来たジャイルズがイケメンで、3Dゲームとして有名なスターフォックスを手掛けたことでしょうか。

謎が謎を呼ぶばかりのスティールダイバーですが、深く暗い潜水艦乗りのゲームとはちょっと違います。ゲームは潜水艦によるミッション、海戦を模したものなのですが、リアルに潜水艦をシミュレートしているわけではありません。このスティールダイバーは、

・古き懐かしい「潜水艦ゲーム」を3DSで蘇らせた

というものなんです。潜水艦のゲームじゃなくって、「潜水艦ゲーム」のゲーム化です。

そう考えるととても納得がいきます。1980年頃、あちこちでみかけた懐かしい潜水艦のゲーム。それは

・サイドビューによる、爆雷で潜水艦をやっつけるゲーム

・潜望鏡による魚雷発射ゲーム

・艦隊を相手に分からないよう配置して戦う海戦ゲーム

です。これをこのスティールダイバーでは3Dと最新技術、とくにジャイロセンサーを使うことでクルクルと回りながら潜望鏡を回すことができるようになったのは大きいです。

この最新技術を使ってリファインされた「古き懐かしい『潜水艦ゲーム』」を楽しめるのが、この「スティールダイバー」です。ですから潜水艦を知らない一般市民はもちろん、この「古き懐かしい『潜水艦ゲーム』」を知らない世代にとって馴染みのないものになっているかも知れません。が、しかし。

「古き懐かしい『潜水艦ゲーム』」を知っている世代にとっては、こりゃもうタマランわけですよ。ドットで構成された爆雷、それが放物線を描きながらクルクルと落ちて行く、潜望鏡をのぞき込みながら右に左にと索敵、手に汗握りながら魚雷を発射。どこにいるかわからない敵を探し、相手から隠れながら攻撃。あの懐かしい緊張感が3DSで蘇ったのです。

そんなわけで「潜水艦ゲーム」が大好きな人にはとてもオススメ。現代風にリファインされて、多少演出過剰な部分もありますけれども、エッセンスは当時そのもの。女、子供にはわからない、深淵な世界が広がりますよ。

ただこれが大ヒットになるかというと、、、まあないでしょうね。でもニッチでいいんです、潜水艦乗りは死と隣り合わせの孤高な世界なのですから。

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・・・まあ3DS自体がやらかした、という評判ですから、同じく潜水艦でもやらかしちゃったのかもしれませんが。