小田原城と小田原評定にみる日本的戦争の美学

全国1000万人の石垣ファンの皆様、お待たせしました。小田原城です。

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人生の中で一番長く住んだのは神奈川県。20年ほど川崎に藤沢(2か所)と住み、箱根に通っていたにも関わらず小田原城に立ち寄ったことがありませんでした。なんたる不覚! 今回改めて目的地を小田原城に設定し、小田原城を見学してきました。

子供には、ミニ遊園地があるよ、と餌をちらつかせて。

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なぜ場内にミニ遊園地があるのか理解不可能ですが、遊園地だけでなくミニ動物園も。

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ニホンザル、さらには

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昔ゾウがいたと思われる跡まで。なぜ動物園が本丸にある・・・

動物園・遊園地

城址公園内には、天守閣などの史跡のほか動物園と遊園地があります。
 動物園にはニホンザルがいます(ゾウのウメ子は平成21年9月17日に亡くなりました)。
 また、遊園地には豆汽車や豆自動車、メリーカップなどの遊具があり、小さいお子さまに大変喜ばれています。

確かにね、小さなお子様は大変喜んでいました。しかも嬉しいのはそのお値段。

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乗り物80円、自動遊器具とはよくデパートの上にある揺れるだけの乗り物で30円。なんともお財布にやさしく、親も大喜びの良心的価格設定。

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ここで子供のご機嫌をとり、メインは天守内の展示です。残念ながら天守内は撮影禁止のため資料は一切ありませんが小田原の歴史を示す展示物が一杯。北条支配時代、江戸時代・宿場町、そして寄木細工に代表される工芸品。ういろう(薬)もあり、地理的にも文化的にも豊かな土地柄だったようです。

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伊豆半島、箱根をのぞむ海、相模湾、三浦半島をのぞみ、裏手は丹沢と山岳地帯。平山城でありつつ、水路を巡らせることにより水城としての機能もあったのではないでしょうか。

縄張りの妙と規模の大きさで上杉謙信に武田信玄の攻撃をも退けた小田原城。当時としては最強の実績を誇る城といっていいでしょう。しかもその強さの秘訣は縄張りだけではありません。

それが支城ネットワーク。

TMネットワークでも、吐息でネットでもありません。支城です。

支城 - Wikipedia

支城(しじょう)とは、本城を守るように配置された補助的役割を持つ出城・砦・陣屋などのことを指す。本城を指す根城に比して枝城などとも呼ばれた。役割によって様々な種類があり、規模も大小様々である。戦国時代には、本城・支城間に支城網(しじょうもう)と呼ばれる多彩なネットワークが形成されるようになった。

小田原城は関東一円に支城をもち、八王子城や滝山城はもちろん、川越城や江戸城もそのうちのひとつ。つまり関東平野一円は北条氏の支配下だったことが容易に想像がつきます。しかもこの支城ネットワークを支えたのが関東平野の視界のよさ。

八王子城からは小田原が見え、はては筑波山までみることができます。現在はスモッグや高層ビルでなかなか見えにくいですが、当時はノロシをあげるとすぐに分かったことでしょう。つまり光学通信、

光の道

です。このノロシによる通信でどこが落城したかもすぐにわかり、小田原評定もさらに混迷を極めたに違いありません。

1590年、豊臣秀吉による小田原合戦は一夜城が有名ですがあくまでもこれは最後の威嚇。22万もの軍勢をひきつれて行った実際の戦闘は各支城で行われ、3ヶ月をかけてひとつひとつ支城を潰すことで小田原城を孤立させ、最後には戦わずして開城させることに成功します。ここです、ここがポイント。

つまり戦争とは大勢で無勢を叩くものなのです。

1/10の軍勢で大暴れ、といった武勇伝は確かにストーリーとしては素晴らしいのですが現実の戦争は数。数で相手を凌駕、圧倒することが勝利への近道なのです。

ところがどうも日本人気質としてはこれをよしとせず、気合や士気、技術者の努力と工夫、はては秘密兵器による一発逆転といったものを夢想しがちです。確かに映画はそれでいいのですが、実際の戦いはそうじゃないのは歴史が証明していますし、宇宙世紀でもGMとボールの大量生産によりソロモン、ア・バオア・クーは陥落してます。大和や富嶽、ビグ・ザムじゃ大局は動かんのですよ。

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さて石垣です。小田原城はその成立が1500年代、石垣作りがまだ普及していないころのをベースにして、その後江戸時代による改修で石垣を多用したものにアップデートされています。打ち込みハギをベースに一部切り込みハギといった現代的な技術が導入されたのがみてとれます。

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そして見逃せないのが地震。静岡の駿府城もそうですが、ここ小田原城も地震による倒壊、復元が多くなされています。

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しかし一部は崩れたままと思われ、このとおり石だらけ。もしや何百年も放置ですか?

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昨今復元がなされた銅門、常磐木門が見応えがあって素晴らしいです。

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現在では二の丸までしか小田原城の痕跡は残っていませんが、小田原の街は城下町をベースに発展していることは間違いありません。まあ一番の破壊は小田原駅と東海道線ですね。城内を完全に横切ってます。

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日本の城郭 鑑賞のコツ65 (コツがわかる本) [単行本]

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今回天守で買ったのはこちらの「日本の城郭 鑑賞のコツ65 (コツがわかる本)」。かなりマニアックでまさに城の見どころを教えてくれる指南本。最近子供も石垣や天守の美しさがわかるようになってきたのか、「この石垣はいいね!」とか言ってくれるので一緒にお城めぐりしていて楽しいです。この本でさらなる深みを発掘していきたいと思います。