進化の袋小路にはまったロータリーエンジン

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ダートラ仕様FD3S RX-7をはじめて長距離移動でのってみました。そこでのロータリーターボエンジン搭載のFD3Sについて感じたことをつらつらと。

ロータリーエンジンはご存知のように世界でマツダだけが製造している特殊なエンジンです。ローターと呼ばれるオムスビ型の回転部品が吸気・圧縮と爆発・排気を行い直接回転力を作る2サイクルエンジン。吸気・排気バルブはなく、サイドポートやペリフェラルポートと呼ばれるポートから直接吸気・排気します。

ロータリーエンジン - Wikipedia

FD3Sではこのロータリーエンジンに2つのタービンを装着。シーケンシャルツインターボとしています。

ツインターボ - Wikipedia

エンジンの回転数に応じ大小2つのターボチャージャーを使い分けることでターボラグの低減、低回転からの過給効果を目的としたシステムである。低回転では小容量のターボチャージャーを使用し低回転域のトルクの確保、ターボラグの回避、中高回転では大容量のターボチャージャーを用いて高出力を狙う。2機のターボを「順次駆動」するさまからシーケンシャルの名がある。シーケンシャル・ターボは自動車の様な負荷変動の多いエンジンに向いているが、2つのターボの制御は難しく上手に制御しなければ有効性は発揮されない。その為、排気ガスの量やエンジンの回転数、エンジンの状態等をモニタした上で2つのターボの動作を制御する必要からエンジン及びターボの電子制御が不可欠となる。

最初のターボはプライマリータービン、2つめのはセカンダリータービンと呼び、イニシャルDでの名セリフ「セカンダリータービン止まってんじゃねえのか!」となるわけです。

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まあそんな特徴のあるFD3S、まずエンジンの最初の印象としては至って普通。特殊な運転技量は必要としません。低速トルクが細い、とかいわれますけど、1500~2000回転位で普通に走行できるし、特に困りません。

パワー感は3000回転以上から、4000回転からは特にパワフルな印象。気になるアクセルオン時のターボラグも余り感じません。

エンジン自体はパワフルなんだけど、くたびれているということもありむちゃくちゃパワーがあるという印象でもなく。カタログ値255psはS2000の250ps(NA)と比べると、体感的には妥当です。

8000回転のトップエンドまでしゅーーーっと吹けあがるのはまさにスムース。ただそのままオーバーレブしてっちゃうのが玉に瑕で、オーバーレブ防止にピーーーというブザーがなるのですけどガラガラうるさいクルマなので余り聞こえないんですね。これはダートラ仕様という個体の問題ですが。

ここまではネガは感じないわけですが、やっぱり一番の問題は燃費が悪いこと。高速道路で80~90km/h巡航での燃費が

6.9km/L

これはしびれますね。街中はもちろんそれよりも悪いので4~5km/Lというウワサは本当っぽいです。

そして一番違和感を感じたのはアクセルオフ時のエンジンブレーキの効き方。ロータリーはエンジンブレーキが効かないと聞いていたのですが、なかなかどうして。ガクンときいてものすごく乗りにくいんです。特に首都高の渋滞時。1-2速でシフトチェンジするときや半クラ時にアクセルオフすると顕著。なのでここは結構疲れました。

まあ20年前のクルマなので致し方ないといえばないのですが、問題はその後このロータリーエンジンを超えるロータリーがないこと。RX-8があるにはあるのですがNAでパワーがRX-7に及ばないところが残念。

一方のレシプロエンジン。こちらの技術革新は目覚ましいものがあります。

・バルブ制御技術の進化
 バルブタイミング、バルブリフト量の自在な制御による理想的な燃焼

・インジェクター技術の進化
 直噴技術の導入、スロットルバルブの撤廃による吸気効率の向上

・バランサー、エンジンマウント技術の進化
 液体封入エンジンマウント、2次バランサーの導入によるエンジン振動の抑制

そしてこれらを制御するコンピュータの進化。8bitから16bit、そして32bitへと移り変わったことも大きいでしょう。

さらにいえばツインスクロールターボによる燃費とパワーの両立。レシプロであることを逆に利用したツインスクロールは効率がよく、VWに至っては全車ターボをつけようという勢いです。

ロータリーは基本構造は変わらず、マツダだけが頑張ってロータリーの技術開発をしているものの、抜本的で革新的な進化はありません。その孤独感だけが伝わってきます。

よく「孤高のロータリー」と称されますが、技術開発においては孤独であることのデメリットの方が目立ちます。ロータリーは1970年代の最先端技術ですが、その後は進化の袋小路に。そうこうしている間に環境問題の勃発により排ガス規制は強化され燃費性能の要求が高まり、時代は一気にEVへシフトです。なんということだ!

ロータリーエンジンは爆発力を直接回転力に変えるので「モーターのような」という形容で称賛されますけど、もはや時代はモーターそのものを希求していますからね。開発しようにもにっちもさっちもいかんというのがロータリーの実情ではないでしょうか。

ロータリーを乗り続けるのは、単なるクルマ好きだけでなく、まさに「ロータリーエンジン」自体が好きな「ロータリー野郎」でないとムリ。ハンパな気持ちじゃロータリー乗りになれません。オイル管理もプラグ管理もとても大切で、ズボラなメンテナンスでは即エンジンブローの危機。正直RX-7を(共同)所有して改めて、RX-7乗りを尊敬するようになりました。よくぞロータリーエンジンを維持して乗り回せるなあと。

おそらく次の画期的なロータリーエンジンが出るというのは時代的にも時期的にも現実的ではないので、今あるロータリーエンジンを大切にしていきたいですね。

(続く)

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