レクサス暴走事故・アクセルが戻らない・ブレーキが利かないプリウス:トヨタのプリウス・リコールにみる皮算用

トヨタがついにプリウスをリコールします。

世界に向けて、英語でも謝罪 トヨタ社長リコール会見(1)(産経新聞) - Yahoo!ニュース

トヨタ自動車は9日午後3時半から、ハイブリッド車(HV)新型「プリウス」のリコール(回収・無償修理)について、豊田章男社長が東京本社で記者会見した。5日、おひざ元の名古屋で緊急会見を開いた豊田社長。国土交通省にリコールを届け出て臨んだ今回の会見は、東京都文京区の東京ドームにほど近い東京本社の地下1階大会議室。豊田社長は詰めかけた100人以上のメディアを前に、改めて頭を下げた。冒頭10分弱に及んだ謝罪は、海外メディアの批判を受けて、英語でも行われた。豊田社長は、午後3時半きっかりに、安全対策担当の佐々木真一・副社長を従えて会見場に登場。紺色スーツに濃紺のネクタイ。厳しい表情を崩さず、正面を見据えて深々と頭を下げた。

日本だけでなく、海外からも注目を集めているプリウスのブレーキ問題。これまでの対応、特にカスタマーやメディアに対する情報公開、説明責任において後手後手に回ったことで厳しい批判をあびてきましたが、今回の謝罪会見で汚名返上をしたいところでしょう。

実際問題、プリウスのリコール問題は降って沸いた不具合。条件も「低速かつ、グリップの悪い路面」でしか起きない不具合で、報告が多数上がっていますがいずれも重大事故につながっていません。

一方でレスサス暴走事故にまつわるフロアマットとアクセルペダルの形状の不具合、そしてアクセルが戻りにくくなるといった不具合を原因とした死亡事故は複数件報告されており、訴訟問題にも発展しています。ただこの死亡事故の発生が海外に(いまのところ)限られており、日本での報道も非常に少ないため、プリウスのブレーキ不具合に注目が集まりがちです。

これら一連の不具合について、色々な側面から語られます。トヨタの設計・生産技術の問題、品質管理の問題、情報公開の問題、メディアとの問題、そして顧客対応の問題。

そして行き過ぎと感じるのは上記いくつかの問題がいっしょくたになり、感情的に語られてしまう点。そうなるといわゆる「トヨタ・バッシング」、ひいては「ジャパン・バッシング」となり本来の問題から乖離しつつあります。

それぞれの問題はそれぞれでまずは語られるべきで、その上で対応していくのが筋かと思います。

今回プリウスのリコールとなりましたが、事故の大きさから考えるとアクセルペダル形状やフリクションレバーの不具合の方が大きいです。さらに余り語られない「フェールセーフ」機構の不備、不足といった点も指摘されてしかるべきです。

特に日本では最新、最先端のハイブリッドである「プリウス」のイメージにひっぱられてそこに集中しすぎているきらいがあるように感じます。フリクションレバーの不具合など、「安物つかった」もしくはそれこそ陰謀論となりますが「品質の悪いものをつかまされて」という話ですが、その影響は甚大で重大です。この不良の事実をつかみながら特に対応しなかったという体制、体質そのものが今回の一番の問題です。

ところが今回プリウスのリコールでプログラム修正という、パーツ代の不要なリコールに落ち着きました。ガジェットでいうならばファームウェアアップデートで済むはなしです。実はこれはトヨタにとっては非常に幸いな話で、修理代は最小限、しかも最新、最先端のハイブリッド車の信頼と安全性を回復できるという一石二鳥の策。イメージの失地回復にはまたとない対応です。

本来一連のことがなければ2009年度、トヨタは黒字回復するはずでした。しかしリコール費用の計上などで売り上げは回復したものの赤字を見込んでます。

これは2009年、満を持して豊田家直系である豊田社長就任とV字回復とを連動させるというトヨタのシナリオに反しており、まさに青天の霹靂。そればかりかここ数年蓄積した不満、不具合が一挙に噴出して今にいたっており、そういったことからも豊田社長にとって涙目でしょう。

レースが大好きな豊田社長で、撤退したとはいえF1の活動を行いドライバー育成プログラムをやっているなど、賛否はあれどレースシーンにも貢献をしているのは事実。その豊田社長が今責め苦を負わなければならないのは、この数年間蓄積したトヨタの歪みといっていいのではないでしょうか。

その歪みとは、急激な成長路線をとる余り、身の丈を超えてしまったことでしょう。つまり大きくなりすぎた。

悪い言葉でいうと、車作りすぎて頭がおかしくなった、といったところ。

車というのはドライバーが運転するものです。今存在する自動車でドライバーなしで走る車はありません。そのドライバーのことを忘れてしまってます。

そしてドライバーが預かるのは乗員の命。ドライバーは自分を含めて乗員の命を守らねばなりません。自動車とは命を乗せて走るものです。この絶対に忘れてはいけない大原則を、車をたくさんつくるが余り、忘れてしまったのではないでしょうか。

プリウスのブレーキももちろん問題ですが、レクサス暴走事故により乗員全員がなくなる事故、そしてフロアマットがトランクにあったにもかかわらず暴走事故を起こしたカムリの例。死者がでているという事実をもっと重く受け止めて、議論すべきだと感じます。