廃人育成ゲーム「ラブプラス」の衝撃は「ときメモ」世代であるアラフォーも直撃。廃人が続出です。それほどの「ラブプラス」ですが、危険はそれだけではなかったのです。
「ときメモ」から15年。恋愛のツールは変わりました。当時は携帯電話もメールもありません。あるのは「いえでん」と呼ばれる、固定電話のみ。家電は当然相手が確実に出る保証もありませんし、それ以上に「家人が出る」というリスクや、「今何時だと思ってるんだ!」と怒鳴られるリスク、さらに本人が出たとおもったら、声が似ている親や兄弟だったなんてことが多発しました。
「ラブプラス」の恋愛ツールは主に携帯メールです。携帯メールは確実に本人に届き、上記のようなリスクはありません。
ただこのメールが曲者で、返信しなければいけない、さらには返信は3秒以内といったような「即返信」が基本のようです。せっかく非同期性が特徴だったメールなのに、同期性が求められるという結果に。ならなぜキータイプしなきゃいけないのか、という問題に立ち返るはずなのですけど、まあとにかくそういう世相を反映しているのでしょう。
さらに恋愛成就までのプロセスがスピーディです。「ときメモ」では高校生活の3年間をかけて彼女に告白されることをゴールとしていましたが、「ラブプラス」ではなんと100日以内。まさに1/10にスケールダウン、即効で盛り上げていかなければいけません。ですから年間イベント、入学式、始業式、夏休み、クリスマス、バレンタインなどの年中行事が「ラブプラス」にはないのです。このスピーディさ加減も世相を反映しているのでしょうね。
さらにデートの様式も違います。そもそも「ときメモ」は告白されるのがゴールで、彼氏・彼女になった以降の話はありません。「ラブプラス」は告白されるのは通過点で、彼女ができてから以降が本番です。
デートはつきあう前に何度かあるのですが、つきあった後のデートでの基本コミュニケーションは「キス」です。「チュッチュ」と呼ばれ、世の中の男性を興奮のるつぼに陥れたこの「チュッチュ」はとにかく危険です。
なにせタッチペンで女性のボディをタッチ、相手を盛り上げたところで今度は顔を中心にタッチ。そして相手の気分がもりあがると、ハートがたまり、その数だけキスができるという仕組み。
このキスをするために、人目の隙をついて相手をタッチするのです。
問題はこの「隙をついて」が、公衆の面前であってもなんですね。たとえば駅前や公園、遊園地など公衆の中であっても上記の「チュッチュ」が行われる仕組み。最近の高校生カップルが人前をはばからずイチャイチャする世相を反映してなのかもしれませんが、さすがにこれはちょっと問題。
何が問題ってまず、
・最近の若者の恋愛はこういうもんなんだ
とアラフォー世代が勘違いする点。
そして世の中の恋愛ノービスたちが、
・デートってこうやるものだ
と誤解する点。
たとえば軍隊に入り、ブートキャンプで実際の戦闘を模して練習するはずなのが、そもそもその練習が実戦からかけはなれているのではないかという危惧です。
よしんばこの恋愛様式が昨今の世相をきちんと反映されており、この通りだとすると罠があります。
それはこの恋愛の果てに何が待っているのかということ。
「一緒に暮らせたらいいのにね」
とかもう罠もいいところです。
恋愛の果ての結婚生活までしているアラフォー世代ならその理由はよく分かると思いますが、結婚についてたくさんの諺があるように、この世の中でもっとも恐ろしいことが待っています。それをこの「ラブプラス」は目前の「チュッチュ」で惑わしているのです。
まだ「ラブプラス」ははじまったばかりです。リアルタイムモードでやると実時間と連動してお話が進みます。日曜日にデートを予約していたら、日曜日に必ずDSを起動してデートしなくてはならず、DSを起動しないとデートをすっぽかしたことになります。
これはもはやバーチャルを通り越して、リアルといっていいでしょう。
恋愛ノービスたちが、練習だと思っていた恋愛デートが実戦になる可能性だってあるのです。
もしかしたらこのまま「ラブプラス」と共に生きていけたら、それはそれで幸せかもしれません。しかし「ラブプラス」を卒業し、リアル女性とのラブにイントゥした場合にはどうなるのでしょうか。
答えはまだ出ませんが、確実にいえるのは1980年代にSF映画やアニメで予言された未来を今の世代が生きているということです。そういう意味で考えると、まさに未来を生きる我々です。
ブレードランナー、メガゾーン23、マクロスプラス、マトリックスの世界はもう来てしまいました。人が肉体を捨てる日が近いのかも知れませんね。