インターネットの暮らし方(a.k.a. JUNETの暮らし方)

メール(email)の起源について調べていたら、昔懐かしいJUNET利用の手引きにめぐり合いました。JUNETは日本におけるインターネットの前身といっていいもので、私がJUNETに触れた1990年頃、この手引きを読んだ記憶があります。

今回再び目を通したのですが、現在に通じるネット上での良い行動指針があったので、ご紹介。JUNETでのニュースグループへの投稿メッセージに関するものですが、掲示板やブログ、コメント、メーリングリストのメッセージなどに通じることだと感じます。

◆5.1 JUNETの暮らし方 62


<1,4,0> メッセージの内容について

肝心なことは、読む人がいることを頭において書くことだと思います。特に、ニュー
スを投稿する場合には、あなたをあまり知らない人が、あなたの投稿を読むことを忘
れないで下さい。

顔を付き合わせるコミュニケーションというのは、相手の表情や態度が判り、過激な
行動を抑制する効果があります。しかも、実物を見たことのある相手には、相手のト
ーンとかノリとか、表情が思い浮んでくるため、これも馬鹿げた行動の抑制になりま
す。

しかし、ネットワークでは、相手の情報はメッセージだけですし、その上、相手のネ
ットワーク上での反応は、相手の反応すべてではないのです。温厚な反応のように見
えても、実はものすごく怒っていることもありますし、返事がないことは納得したの
ではなく、委縮していることもあるのです。また、反応が帰って来るまでに時間がか
かります。

このため、 JUNETでの議論は、時として、顔と顔とを付き合わせての議論よりひどい
ものになってしまうことがあります。その結果として、誤解が誤解を生み、そして、
誰かが傷ついて、ついには、投稿するのをやめたりしてしまうこともありました。こ
うした悲劇はもうたくさんです。

議論の技術として、相手の様子によって表情や言葉使いを変えるというものがありま
すが、あまり技巧を凝らした議論は、かえって誤解される元となります。むしろ、素
直な方法がよろしいと思われますがいかがでしょうか? そして、それが議論の技術
であったとしても、相手をからかったり軽蔑したり罵倒したりするようなことは、ネ
ットワークでは好ましくないと思います。

また、カッとした時の言動は、ともすると舌足らずになり、取り返しのつかない事態
になることがあります。特にメールは、ニュースと違って、基本的にキャンセルする
ことができません。このため相手があらぬ誤解をしてしまいかねません。

カッとなっている時はともすると、ネットの向うにいるのが人間であることを忘れて
しまいがちになってしまいます。悪口の相手の表情が見えないとか、会ったことのな
い相手とか、知っているのは相手のアドレスの文字列だけという状況がこの原因かも
しれません。

カッとしている時は、冷静になるまで待った方がよいでしょう。一日またはたったの
二、三時間、あるいは、一杯のコーヒーを飲む時間だけでも、冷静になるまで待つべ
きだと思います。

とにかく、感情的な反論ではなく良い議論をしましょう。早計な意見は問題をよりや
やこしくするだけです。そして、相手に会って面と向かって言えないような事は書か
ないようにしましょう。強い調子でいっても、相手を納得することはできず、むしろ
、硬化させてしまうのです。そして、反撃のできないくらい弱い人もいるのです。強
い調子は、こういう人を委縮させたり傷付けたりします。優しさと礼儀正しさを失わ
ないようにしましょう。

そうです、あなたの言葉は、ネットワークの上ではあなたを守る強力な武器になるの
です。しかし、その武器が、相手をいたずらに傷付けないように注意すべきでしょう

また、私達がすべて同じならば、世界は退屈になってしまうことでしょう。だから、
あなたと意見の異なる人を、強い調子で攻撃しないようにしたいものです。

とにかく、読む人のことを考えましょう。読む人があなたを誤解してしまうような表
現にならないように、十分注意しましょう。

ブログのエントリーももちろん同じで、不特定多数に読まれることを意識して書き込む必要があります。なるべくそれを心がけているのですが、まだまだ至らないようです、反省。

それにしてもJUNETはメールのやりとり、メーリングリスト・ニュースグループの運営と今で考えると本当に限られたサービスしかやっていないのですが、すでにいろいろなイザコザがおきていて、それを技術面、精神面で乗り越えようとした偉大なる先輩たちが多くいたことを痛感させられました。

(追記)こちら、「The Risks of Electronic Communication:メールや投稿をするその前に ([の] のまのしわざ)」も合わせてどうぞ。

教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書
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