プロダクションI.G.代表取締役社長 石川光久さんの会社経営、組織運営の指南書です。
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プロダクションI.G.といえば「銀河英雄伝説」などの製作請負や、押井監督作品「映画版パトレイバー 」「攻殻機動隊、イノセンス)」、最近では「スカイ・クロラ」のアニメーション製作をしています。石川光久さんはアニメーション製作のプロデュースを手がけながら、自ら立ち上げたプロダクションI.G.を上場させ、会社経営をとりしきっています。この書籍はその会社経営手腕、「現場」に力を発揮させるために心がけていることについて紹介しています。
(タツノコからの独立)僕は現場の人間だから、「現場は腐っていない」という思いが強かったのですが、タツノコの経営が悪くなってくると、新人とか若いスタッフが簡単にクビにされて、良い人材がどんどん出て行ってしまいました。それなのに、会社の上だけはゆるがずにのうのうとしている。
「現場力革命」石川光久 p.76
プロダクションI.G.を立ち上げた時の状況です。反骨精神からタツノコ上層部を見返そう、会社を立ち上げようと決意したそうです。これだけ上層部に批判的であっても、最初はアイジー・タツノコとして、タツノコの看板を拝借できているわけですから、そのへんの折り合いのつけ方はさすが「プロデューサー」、素晴らしいです。
僕は、「現場」のモチベーションの高さにこそ、その作品の勝算があると思っています。だから製作する作品を選ぶときに大切にしているのは動機です。(中略)
ただし、動機やモチベーションが大事だからといって、ハードルを下げてまで、クリエーターにやりたいことをやらせるというのは間違いです。
「現場力革命」石川光久 p.116
もともと現場の人間であったということも作用していますが、作品を作るのは「現場」であり、現場を動かすものは「動機(モチベーション)」ということです。ただ自己満足につながることはいさめています。
「一大事業でも最後は人間関係」(攻殻機動隊の実写映画化権について)
でも、今回の交渉で一番に心がけたことは、自分の会社のことだけ、アニメーション業界のことだけを考えるのはやめようということです。
「現場力革命」石川光久 p.136
人間関係を大切にし、会社の経営者としての立場を越えて公人として振る舞っています。これはこの後にでてくる「半径5メートル」の話にもつながってきます。
今回のハイライトは会社社長として、心がけていること十か条。
「僕が社員にいつも言っていること」(1)夢は大きく、目標は小さく
自分があれをやりたい、これをやりたいではなく、目の前にある(小さな)目標に全力を尽くして取り組むこと。そうやってひとつひとつ小さな目標を繰り返し越えていくことで、やがて自分が目指すべき目標や夢が見えてくるのです。逆に小さな目標を疎かにしたり、妥協したりしていたら、そこですべてが終わってしまいます。
そして「夢は大きく」というのは、自分のための夢ではなく、誰かのため、まわりの人のためにこそ、大きな夢を描くべきだということです。
「現場力革命」石川光久 p.170
たまに夢が大きいばっかりに、達成不可能な目標設定をしてしまうケースがあります。身の丈にあった目標を設定する必要があるのはもちろん、「小さく」、クリア可能な目標設定にしましょうと。ただこの目標を繰り返しクリアしていくという点では「マイルストーン」といった方が近いかもしれません。
(3)自慢をするな (地位が高まってきたことに対して)自分では意識していなくても、上からの目線でまわりを見るようになったり、偉そうに振る舞ってしまったり、相手のことを考えずに一方的に押しつけたり・・・。
そんな姿をみていると見苦しく思います。それは人として間違っている。
「現場力革命」石川光久 p.172
謙虚さを常に忘れず、相手のことを考えることが大事です。
(6)半径五メートル以内の人に信頼される僕が、社員にもよく言っているのは、「半径五メートル以内の人に信頼される」ということです。自分のすぐ近くにいる人にすら信頼されず、見放されてしまったら、やりたいことなんてできません。ましてや、夢が叶うはずがないのです。
「現場力革命」石川光久 p.172
もうこの「半径五メートル以内の人に信頼される」に尽きると思います。半径五メートルといえば、通常はオフィスの中。社長ならば社員に、社員なら同僚や上司に。家族であっても同じで奥様、旦那様、子供に祖父母。オンラインな友人も大切ですが、物理的に近くにいる人に信頼されることが肝要です。
(7)ひとりひとりと向き合う誰かを輝かせようと思ったら、まずその人のことをよく知らなければなりません。そして、その人の才能やいい部分に惚れ込まなければならないのです。この姿勢は、相手がベテラン監督だろうが、新入社員だろうが変わりません。
「現場力革命」石川光久 p.178
(8)長所は一瞬で作れる年に一回、プロダクションI.G.では社員の個別面談をやっています。
そのときに、僕がよく社員に言うのは、「お前に一番期待しているから頑張れ」ということです。でも終わってみると、全員に言っていたりするのです。(中略)
僕が社員に「期待している」と声をかけるのは、長所を伸ばしていきたいからです。短所を矯正して伸ばしていくには十年かかるけれど、長所は一瞬で作れます。人間というのは、そういうものだと思いますから、できるだけ長所を伸ばせるように接しています。
「現場力革命」石川光久 p.178
この姿勢が現場を活かす力なのかなと感じます。「オレが、私が」といったオレオレ社長ではなく、現場を担う社員のモチベーションをあげ、能力を100%以上発揮できる環境を作ることで、成果を出せているのではないでしょうか。
そういえば社員のモチベーションと会社の業績に関連性がある、という調査結果もでています。
時事ドットコム:やる気と業績、深い関係=中小企業の実態調査−法政大など社員のモチベーションが高い企業は業績も高い−。法政大(東京都千代田区)とアイエヌジー生命保険(同)の中小企業に対する合同調査で、従業員の意欲が業績とも密接に関係していることが分かった。
そして締めくくりは対人コミュニケーションについて。
(10)「思い」は口に出してはならない何かをやりとげるとき、「思い」というのがとても大事です。
(中略)
ただ「思い」というのは、なかなか言葉にはできないものです。自分でもよくわかっていないところがあります。これは恋愛と同じです。あの子が好きだというのは、理屈で考えて好きになるわけではありません。「好きだ」と思った自分に素直になれるかどうかです。
「思い」というのは口に出してはいけません。
口に出してしまったことで、達成感というか、安心感が生まれてしまいます。「思い」を伝えようと言葉にしても、「思い」は伝わりません。
それは頭で考えて整理されたものだから、本当の「思い」ではないのです。(中略)
他人の一方的な「思い」を聞かされるということは、相手にとっては辛いことです。自分の「思い」だけを伝えようと思っている人には、そのことが分っていません。
「現場力革命」石川光久 p.183
私の「思い」が伝わらない、なんで!と思うことはしばしばですが、それは自分のことだけを考えていることが多いです。恋愛でもそうですが、「あなたが好き」という「思い」を伝えるのが目的化して、相手の迷惑を顧みず特攻して玉砕する、彼女いない歴=年齢なガラスの十代と一緒ですね。
しかしたとえ言葉として整理されていなくとも、必ず分かるひとには伝わります。それが本当の「思い」、いや「想い」といった方が適切かもしれませんね。「想い」は秘めていても、伝わる人には必ず伝わります。会社経営者はロマンティストでなければいけません。
そうでないと、、、
出川哲朗オフィシャルブログbyダイヤモンドブログ » KISS女性を口説くときに駆け引きなんかいらいない
KISSしたければ はっきりと「KISSしたい!」と言う
そして、もしことわられたら
「お前のキスしたくない気持ちより、俺のキスしたい気持ちのほうが絶対に勝っている!」
と言って唇をうばってやる
俺は、そうしてきた
出川哲朗になります。やばいよ、やばいよーー
【wikipedia】
●Production I.G - Wikipedia