オンラインゲーム、ネットワークコミュニケーションのビジネス構造(第3回)

のまのしわざ: オンラインゲーム、ネットワークコミュニケーションのビジネス構造(第2回)

しばらく間が空きましたが上記に引き続き、第3回をお送りします。

実はこの間、ずっと書き直してました。なので予告していた内容とは異なる内容になってます。しかももしかしたら4回では終われないかも・・・(一応4回分書いてから連載はじめたのですけど)

今回はBEP設定についてです。

【第三回】

・BEP(break even point, 損益分岐点)設定

前回、誰のビジネスになるのかと問い、その結果ホスティング会社やサーバーメーカーのビジネスにはなると結論付けた。それはBEPの設定が異なるからだ。以降、サービス提供者を2つに分けてとらえることとする。サービスを開発するサービス開発者と(ホスティング環境やサーバーハードウェアを提供するインフラ提供者の2つだ。

インフラ提供者にとってのBEPのファクターはユーザー数ではなく、サーバーの台数である。そしてサーバーはハードウェアでも、ホスティングでも1台でBEPを達成できるよう、価格設定されているためだ。つまり1台でも利益がでるし、100台だとその100倍利益がでるのが基本だ。当然volume discount(まとめ買い)があった場合でも、利益が圧縮されるだけであり、決して赤字に転じることはない。

一方サービス開発者はユーザー数でBEPを設定している。そのため、BEPに必要なユーザー数を確保する必要がある。しかしここに大きな誤算が潜んでいる。

・サービスの永続性

サービスは永遠ではない。同じコンテンツで、内容がまったく変わらないとだんだん新鮮味が無くなり最後には飽きてしまう。新鮮味がなくなるとユーザーのカスタマーサティスファクションは落ちていき、お金を払い続けることに疑問を感じはじめる。そして最後は離れてしまう。

その期間はユーザー行動から類推するに数ヶ月から半年で始まる。これを打開するためには色々なイベントやユーザー行動の支援(BBSや情報のリークなど)をすることで延ばすことが可能であるが、新規コンテンツ投入が一番効果的である(新規コンテンツ投入とは、拡張パックなど、従来にはなかった世界・場所を提供することをを指す)。上記をまとめて今回、リフレッシュプランと呼ぶことにする。

実際にアクセスしているユーザー、アクティブユーザー数を簡単に捉えると

アクティブユーザー数=新規ユーザー数+継続ユーザー数 - 脱落ユーザー数

である。サービス開発者はアクティブユーザー数を増やしてBEPに必要なユーザー数を確保したいと考える。

新規ユーザー数と脱落ユーザー数が等しくなるとアクティブユーザー数は増えない。そうならないためにも必ずリフレッシュプランが必要となる。そしてリフレッシュプランのうちで最も効果的なのが、新規コンテンツなのである。当然この新規コンテンツを開発するには高価な開発費が必要である。

誤算とは2つ。

1) リフレッシュプランはBEPの達成、未達成に関わらず必ず発生する

リフレッシュプランの遂行はBEPを達成した・しないに関わらず、サービスを開始してアクティブユーザー数が伸び悩む時期(半年から1年後の間)に必ず発生する。

2) 開発費用はBEPを上に押し上げる

この開発費用は、サービス提供者のうち、サービス開発者のみが負担する。

アクティブユーザー数がBEPを達成できる数字まで伸びていないのに、高価な新規コンテンツ開発をしないわけにはいかないのは、最悪の場合アクティブユーザー数が減少する可能性があるからだ。

本来、リフレッシュプランの費用は運用費に見込まれているべきものである。しかしBEPが達成出来ないと見込み以上の高価な開発費を投入する必要が発生する。これがさらにBEPを上に押し上げる結果となり、やはりBEPを達成できない。まるで蜃気楼のようである。この悪循環がこのビジネスの大きな落とし穴である。

将来への投資といえば聞こえがいいが、これはBEPの初期設定を見誤っただけの話である。だからといって責めることはできない。なぜならビジネスはまだまだ手探りの状態で、正確にBEPを設定できる方が不思議というものである。

(→第4回へ続く)