Perfumeの最新ライブ、Perfume Anniversary 10days 2015。10日間に渡るツアー内容は PerfumeカルトQを勝ち抜いた「Perfume博士号」との限定ライブ、3人祭りという対バンライブ、ドキュメンタリー映画の先行上映、フリコピーのNo.1を決めるもの、そして3569ライブと盛りだくさん。いわば「やりたいことを、やりたいようにやる」というもので、その舞台は武道館10日間貸切、そして最後の2日間は故郷広島で締めくくるというものでした。
しかし。
この変則的なツアー、そして最後は広島というのは、どうにもキナくさい構成で、どうも事前によからぬ噂もあったようです。その噂とは。。。
Perfume解散説。
多忙でまったくそんな情報を知らずに武道館へいって、武道館の円形を生かした素晴らしいライブセットと内容に舌を巻いたわけですけど、確かにMCを聞いててアレ、なんかいつも勝手が違うなと。
そしてその不吉な予感はここ広島に来てはっきりとしました。ああ、この10daysツアーは2つのシナリオがあったのだろうと。
バッドエンディング
ファンにとってのバッドエンディングとは、Perfumeの活動が終了すること。そしてそのバッドエンディングを締めくくるにふさわしい10daysの3569ツアーの構成。インディーズデビュー15周年、メジャーデビュー10周年ということで、普段はやらないインディーズ時代の楽曲を含めて3569, サンゴウロクキュー、サンゴロクー、スゴロクー、スゴロク。そう双六でその場で6曲分のセットリストを決めるという前代未聞のライブ。
円形のライブセットはその双六のマス目でもあったのでした。
未来のミュージアムや微かなな香り、などはまだいいとして、彼氏募集中、スウィートドーナッツというのはどうみても26, 7歳の彼女たちがやるにはもはや罰ゲームに等しいもの。
しかしこれが運命的にも当たり、広島1日目ではなんと2回も。え?
そうです、ブロックで3曲続けてやるものが、
1)彼氏募集中(盛り上がらない、売れなかった風)
2)未来のミュージアム
3)彼氏募集中(めっちゃ盛り上がる、売れたあと風)
との構成。同じ曲を1曲はさんで2回やるという予想外の展開にファンも震えました。個人的には4回いって、彼氏募集中を5回きくという体験に、驚愕です。
ただもうサイコロの奇、としかいえません。呪われているともいえます。売れなかった時代の怨念がこもっているのでしょう。
こうしてインディーズ時代を振り返りつつ、節目の年に原点にかえり、地元に戻って衝撃的な宣言、
「わたしたち、普通の女の子に戻ります!」
といってもまったく不思議はありません、むしろ自然といってもいい流れでした。
Perfumeの活動を続けることに決めました
最後のライブの最後のMC、それは衝撃的でした。
「Perfumeの活動を続けることに決めました」
つまりこれは活動を続けるかどうか、決めなければならないほどの事態に陥っていたことの裏返しです。確かにPerfumeの活動が永遠に続くとは思ってませんでしたが、これほど早く、しかもこれだけノリノリの時期に突然の幕引きをするかもしれない、ということが衝撃だったのです。
実際にはこのMCにより、これからも「当面は」活動を続けることが安泰となったわけで、ファンとしてはハッピーエンディングとなりました。
燃え尽きたPerfume
確かに前兆がなかったわけではありません。
アルバムが出ないまま、ミニアルバムと過去の曲を掘り起こしての「ぐるんぐるんツアー」。
WORLD TOUR 3rdで念願のアメリカ上陸。
年齢的には26, 27歳となり、女性の幸せを再考する時期、体力的な変化時期であること。
振り返ればさまざまな要因が目に付きます。いやわかっているけど、知らないフリ、見てみないフリをしていたのでしょう。最近のライブ活動はフェスばかりで、単発的ともいえるもの。その中できたのが今回の10daysツアーというわけでした。
Perfumeの活動が世の中に知られ、規模が拡大、世界へと広がっていくという流れはファンにとって、そしてビジネス的にはよいことです。しかしアイドルを夢見て子供の頃から活動してきた、妙齢の女性にとってはどうでしょう。おそらく達成感に満たされたに違いありません。
と同時に、年齢的に回りの友人知人が結婚していく状況。すべての時間、青春をPerfumeに捧げた彼女たちがハッと我にかえり、これからどうしていくのか、考えたに違いありません。
そう燃え尽きたんです。
Perfumeの活動継続を迷わせるもの
同時にファンの思うPerfume像と、自分たちとの乖離。特にライゾマティクスが関わりはじめ、Perfumeが仮想化、バーチャルとリアルをシームレスにいったりきたりする映像表現により、ある意味 Perfumeの中でも生身のポーションが限定的になったと、本人たちが感じても不思議はありません。ようは、これって本当に私たちなの?と。
特にハンドマイクからヘッドセットに変わってからがそれが顕著。
それまでは歌手として、リップシンクといってもマイクを持って歌う、が基本だったものから、ヘッドセット、両手を存分に使い全身で表現することになってから、Perfumeの仮想化が加速。
今回もSXSWのSTORYを再構成、規模を拡大しホログラムを利用した巨大なセットでの仮想現実空間は見事なものでした。カンヌに引き続き、SXSW STORYは賞も受賞したほどの出来栄えです。
だからこそ迷いが生じてきたのでしょう。いわば、自分とうりふたつのコピーロボット、クローンができたときに最初は嬉しいものの、コピーに自我が芽生え、やがてどっちが本物なのか、わからなくなるというアレです。
もしくは、26,7歳という妙齢となり、そろそろ女性の幸せ、結婚・出産したいと思ったのか。特に彼女たちの母は20代で結婚・出産していることから、早く結婚することへの憧れが強いかもしれません。
また、体力的な問題。加齢はどうしても避けられない問題、いくら若いといっても20代前半と後半では持続力が異なります。それにダンスはどんどんハード、複雑になっている中、己の限界を感じ始めてたのかもしれません。
これは全部憶測ですが、とにかく明確なのは、時間は刻一刻と経過しているということ。
迷いを振り切って再スタート
そんな様々な要因があっても不思議はないわけですが、それはともかく、Perfumeはここからまた「再スタートする」ことを宣言しました。
10daysツアーで活動終了宣言をして終わって伝説になる、というのも一つの手だったことでしょう。しかし「ファンがいて、求められる限りその期待に応える」とある意味、滅私奉公とも思える決断を彼女たちは下したのです。
思えば歳をとった
考えてみれば、ファンである私も歳をとりました。体力は衰え、贅肉は増え、視力は落ち、老眼で見えません。ライブでは双眼鏡がかかせず、ジャンプしていると次の日の朝がつらいです。
Perfumeを知ったときに幼稚園児だった子供は来年には中学生だし、その子供に知力、体力、ラジコンの操作に至るまですべて負けるようになりました。もうまさに老兵の気分。
若さっていいな、無限の可能性があるよね。体力も無尽蔵。一方加齢は重い、悪いことばかりだ。
と思いがち。気分も落ち込みがち。
それでも生きていかなきゃいけないし、実際僕らは生きている。若さはないけど、自由がある、経験がある、そしてなによりメンタルが安定してる。肉体的には衰えても、精神的には継続して成熟していくのです。それには限界はないはず。
そう考えると、明るく、楽しく、毎日を過ごせます。
正直いつ死んでもおかしくない年齢でもあるわけで、刹那的、享楽的になろうというわけではないですが、1日1日を大切にして、限りある人生を多いに楽しもうじゃないですか。
のっちも最後のMCで言っていました。
「あなたたちは毎日を楽しむ天才です」と。
永遠なんて言葉はないけど、ごはんの一粒一粒を噛み締めて味わうように、人生を味わいたいと思った次第。PerfumeがPerfumeであり続ける限り、私も追いかけ続けます。
さあ今日からも頑張ろう。
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