まだ見てない同世代のオッサンたちがいるようなので、何度でもいう。ガンダムビルドファイターズはいいものだ!
[『ガンダムビルドファイターズ』21話感想 ビルドストライク VS キュベレイパピヨン!いい痴話喧嘩だった!:萌えオタニュース速報]
何が素晴らしいって、前回。アイラ・なんとかネンちゃんとレイジが戦う回です。簡単にいっちゃうとアイラってのはララァみたいな特殊能力をもっていて、その才能を見いだされたマネージャーに拾われて今のチームに所属しているという孤児。
しかも強化スーツみたいなのを着ていて、その点でいえばナチュラルなニュータイプというよりも、強化人間といった状態。つまり今までの真正ニュータイプであるララァにはじまり、フォウ・ムラサメやプル、プルII、マリーダ・クルスといった強化人間の不幸を一身に背負ったキャラなのです。
なので明るく、楽しいガンプラバトル、というわけにいかず、この2回はその悲劇性と抗いがたい運命に悩まされて、見ているこっちとしても重いわけです。こんなんでハッピーエンドにはならないぞ、と。
アイラは特殊能力と引き換えに衣食住を機関に保証されたわけで、だから好きでもないガンプラバトルをやっているわけです。ここからが脚本の見せどころ。
正体を隠してガンプラバトルに参戦している一方、街中でレイジと出会うわけですよ。
その出会いはショッピングモールにある名店街にある、旨いものリスト、名物を買い占め、食いまくるというもの。レイジももともと食い意地が張っていて、イオリ家の食糧を食べつくす大食漢なのですが、そのレイジと肉まんを争うというもの。
そもそもレイジが主人公イオリ・セイと出会うのも、商店街の店頭にあった食べ物を捨ててあるとおもって食べたというのがキッカケで、この「食い意地がはっている」というのはとても重要なキーワード。
アイラは暇さえあればショッピングモールにいき、食べ物を買っては食べているシーンばかりで、その理由が当初は分からなかったわけですが、おそらくは孤児で食べ物に困っていたときの反動です。そしてこの生活を手放したくない、居場所が欲しいという飢餓感が常にあり、ガンプラバトルを仕方なくやっているわけです。
ところが出会ったレイジはガンプラバトルが楽しい、イオリ・セイはガンプラを作るのが楽しい、と心から思っているわけで、それに馴染めないわけですね。しかしここでイオリパパが出てきて多少状況が変わります。
イオリパパはいきなりレイジとアイラにガンプラを作らせます。この回もガンプラ製作講座としても素晴らしいのですが、一緒に戦うことでガンプラ作りやガンプラバトルの楽しさ、そして友人が出来る喜びをアイラが知っていくのです。
もうね、アイラがカワイイ、可哀そう、という両方の天秤がぐるんぐるんするのがこのガンダムビルドファイターズ。
結局トーナメント制で勝ち上がれば当然のことながら、レイジ組と当たることになり、そこでアイラは心の迷いが生じます。
戦いたくない。
(戦うと自分が勝っちゃって、レイジが可哀そう、という高飛車なところもgood)
職業軍人なのですから、そこは戦わなきゃ話にならないわけで、戦いを拒否するのは敵前逃亡と同じ。まあそこで強化スーツの出番です、なんとかって数値を上げることで、本人の意識とは関係なく特殊能力を最高レベルまであげて、相手を圧倒するわけです。
この犠牲となったのが、フェニーチェを操るフェリーニ、イタリアの伊達男です。
このフェリニーニの立て込みも素晴らしく、表向きは単なる優男で、カワイイ子は全部口説く、彼女をとられたガンプラファイターは片手では足りないという設定。団体戦ではそんな相手に囲まれてしまうということもありました。
でもガンプラ、いやフェニーチェに対する愛情と歴史は誰よりも負けておらず、左右不対象のデザインは歴戦のダメージの痕で、このフェニーチェでなければならない、という男泣かせな面があるのです。
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その伊達男が見込んで戦ったのがレイジ。
もともとレイジはガンプラバトルを子供の遊びと思っていたものの、やるうちに本気になって練習を積むのですが、その相手をしてくれたのがフェリーニ。
そのフェリーニのフェニーチェが暴走したアイラによって無残にも壊されていくわけですから、そりゃ怒りもしますって。で、そこで意識を失ったアイラが倒れ、ヘルメットが割れて正体がばれるわけです。いやー、うまいですねえ。
愛憎裏返し、レイジはアイラに憎しみを向けるわけですが、まあそこは単純ではありません。
そこでもう一つのテーマ、「戦う理由」です。
レイジはフェリーニを無残にやっつけたアイラを「憎む」ことで、戦う理由をつけようとするのですが、それをフェリーニが見抜きます。フェリーニしてみれば、自分を理由にして「かたき討ち」をしてやると、戦う理由をつけるレイジが気に入らなかったのでしょう。ガンプラバトルだけではなく、人生の先輩、兄貴としてまたフェリーニがカッコイイわけですよ、そりゃフェニーチェのガンプラが売り切れるわけです。
マジでフェニーチェがない、売り切れ。 #frontback https://t.co/tVOJbzVmfQ pic.twitter.com/L0SNIQogS0
— のまのしわざ (@noma) March 5, 2014
ガンプラバトルは戦争ではありません。
戦争は戦う理由を見つけて戦わなければならないのですが、それで憎しみや怒り、悲しみといったまるでソーラレイで消えていった命のような重さがでてきます。しかしそうじゃないだろうと、フェリーニは見抜いているわけです。
自分を口実にして、本当は憎みたくないアイラに怒りをぶつけることをフェリーニはよしとしませんでした。そのおかげでレイジは本来のぼんやりとした、よくわかんなけど、楽しい、よくわかんないけど、こんなんでいいじゃない、みたいな緩さを取り戻すわけです。
ガンプラバトルは楽しむもの。戦争ではない。
アイラの「戦う理由」が、自分の衣食住のため、基本的人権のためだったわけですが、それをレイジはとてもシンプルな言葉で溶かします。
じゃあセイのところにこいよ、と。
自分が異世界からやってきた居候のくせして、もう一人勝手に増やすということをやる無責任さ、適当さ、緩さがレイジのいいところ。
かくして、二人は戦争ではなく、純粋なガンプラバトルを楽しむことになるわけです。その演出がまた素敵で、痴話げんかの延長。真剣勝負だったガンダムの戦争が、一気に小学生のばかにしあいまで落ちたことで、エンターテイメントとしてのガンプラ、ガンプラバトルを決定付けました。
そしてアイラはこれまでの不満だったマネージャーやスポンサーにキレて、衣食住の保証を捨て、自由を取り戻すわけです。ニュータイプと強化人間の末路を考えると、アイラが良かったね、というよりもこれまでララァからはじまって35年もの呪縛が解き放たれた瞬間といっていいでしょう。
もちろんこれが例えばアイラがマネージャーに恋をしていたとかあると、もっとややこしくなるわけですけど、それがなくて幸い。むしろマネージャーは「女は御しがたい」と名セリフを言うなど、それはそれでいい味出していました。
つまり、単純にガンダムビルドファイターズという作品だけではなく、ガンダム・シリーズのいわば総括であり、アナザーストリーであると捉えられるのですよ。これを見なくてどうするの、とオールドタイプな同世代のオッサンたちに伝えたいのです。