マツダの自動ブレーキ衝突事故から考えるフェールセーフ

マツダCX-5の自動ブレーキ体験走行でフェンスに衝突し重軽傷を負った事故について、その後ようやく情報が落ち着いて真相が見えてきました。

まずマツダの自動ブレーキとは。

【MAZDA】i-ACTIVSENSE|安全性能|CX-5

約4~30km/hでの低速走行中、フロントガラスに設置したセンサーで前方の車両を検知し、衝突の危険性が高いと判断するとブレーキを自動制御します。このとき、ドライバーがブレーキペダルを踏むと、ブレーキは即座に強い制動力を発揮。ドライバーがブレーキ操作などを行わなかった場合には、自動的にブレーキをかけて衝突回避をサポート、もしくは衝突による被害の低減を図ります。

また、AT誤発進抑制制御も搭載。約10km/h以下の徐行中や停車時、前方に障害物があるにも関わらず、アクセルが一定以上に踏み込まれた場合には、警報音とメーター表示でドライバーに注意を促すと同時に、エンジン出力を抑えて急発進を抑制します。

センサーは「近赤外線レーザー」を利用しており、速度は30km/hまでしかサポートしていません。

スピード超過原因か 自動ブレーキ車衝突事故 - MSN産経ニュース

県警の調べでは、CX-5の自動ブレーキは主に市街地を想定。時速4~30キロで走行中に前方の障害物を検知すると作動する一方、アクセルが一定以上踏み込まれたり、時速30キロを超えたりすると作動しない仕組みになっている。事故当時は速度が30キロを超えていた可能性があり、県警は販売店側の男性客への事前説明や、自動ブレーキ機能への認識を裏付けるとともに、走行状況を詳しく捜査している。

自動ブレーキ事故、運転ミスか 速度超過で作動せず?:朝日新聞デジタル

埼玉県深谷市で10日、マツダ車が自動ブレーキ試乗会で衝突した事故で、車は当時、衝突の危険を察知すると自動ブレーキがかかる機能(SCBS)が作動しない時速37キロで走行していたことが捜査関係者らへの取材でわかった。県警は、事故は車の構造上の問題でなく、運転ミスによるものとの見方を強めている。

車両記録によると37km/hで走行していたことが判明したそうです。

前走車にみたてたマットは7m先、さらに衝突したフェンスはその奥6.6m先(13.6m)ということで、もうひとつの疑問は、

7mで37km/hまで加速したのか?

ということです。

加速G(A)は

y=1/2 * A * t^2
v = At
v = 37 [km/h] = 37000 / 60 / 60 = 10.3 [m/s]
t = v/A
y = 1/2 * A * (v/A)^2
y = 1/2 * A * v * v / A / A
y = 1/2 * v * v / A
A = 1/2 * v * v / y

から求めると A = 7.54 [m/s^2]、G=9.8 [m/s^2] とすると約0.77Gです・・・
0-100km/h加速を考えると 100km/h=27.78 [m/s]なので、
この加速Gが継続すると、約3.7秒で100km/hで達する計算です。
ちょっと早過ぎません?

ただ助走距離がもっと長かったり、その前から加速していたとしたら確かに実現可能なので、そうすると一体どういう操作をしたかが焦点となりそうです。特に急発進抑制機能がついているだけに、前方に障害物がない状態で意図的に加速したのではないか、という疑問があります。

事前の原理説明、操作がどうだったのか気になります。

もうひとつ、問題となりそうなのが

会場のセッティング

です。通常ウレタンマットには自動車と同じく反射板が取り付けられますが、それがあったかどうかや、近赤外線レーザーを反射しにくい材質だったのか、なども考えられます。

またフェンスまでの距離を十分とる、ウレタンマットがスポンジバリヤほどの厚みがあれば大事故は防げたのではないか、など、作動しなかった場合の二重のフェールセーフが必要です。

▼ボルボの自動ブレーキ実験、失敗

見事に失敗しましたが、被害者はなし。会場からは失笑がもれ、アナウンサーが必死にとりつくろうだけで済みました。


(追記)ボルボは自動ブレーキの設定をしてなかった、という人為ミスで、システム不良ではないとのこと。

また、最初は盛んに体験走行をしていたのですが、みんなスピードを出し過ぎるように頑張ってしまうので、最近は余りやらないそうです。

システムは完璧ではない、ということを前提にして最悪の事態をさけるようにしておかないといけませんね。今回の事故は本来人間のミスをシステムでサポートするはずが、人間のミス(操作やセッティング)により失敗したという実例です。過信は禁物


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