ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第43話 電話ボックス #mini4wd



前回までのあらすじ

流しのミニヨン・レーサー北川は取調室で命を狙われた。しかし逆に殺人ミニ四駆が当たり、警部は死亡、北川は逃走した。

北川は警察から逃げ出し、夜の街を東京に向かって歩いていた。

北川「早く、早く、あいつらに知らせないと...」

北川は自動販売機の釣銭口に手をいれて歩いた。

北川「10円玉がいるんだ...」

繰り返すこと数十回、自動販売機の奥に落ちていた10円玉を数枚拾い上げた。そして回りを見渡した。

北川「ない...」

再びとぼとぼと歩き始めた。なにせ工場を出てからろくに食事もしていない、当然風呂にも入っていない。ひげは伸び、髪はボサボサ。長時間に渡り歩いているため疲労もピークであった。

北川「雨か...」

その北川を責め立てるように、雨が降り出した。しかし北川は傘も持たず、歩き続けるしかなかった。

幹線をさけて住宅地を歩く北川。すると目の前に街灯の明りに照らされた四角い構造物をみつけた。

北川「あった...」

それは電話ボックスであった。携帯電話全盛の現在は撤去が進み、ほとんど見つからなくなっている。蛍光灯で照らされた電話ボックスに入り、やっとの思いで見つけた10円玉を入れ、ダイアルを回した。

トゥルルルルー、トゥルルルルー、トゥルルルルー

呼び出し音が鳴る。しかし出ない。北川はしつこく鳴らし続けた。

北川「オレだ、北川だ...」

電話の相手はサラだった。

サラ「北川さん、あなた、どうしていたの? いまどこ? 本当に人を殺したの?」

北川「時間がない、俺のいうことを聞いてくれ。やつら、ダーク・ゴーストは国会議員に金を流して、さらに警察にも手を回している。もう警察はやつらの思い通りだ。俺は罠にはめられた。やつらはダーク・ゴーストを知る者全員を抹殺するつもりだ。あいつらも狙われている、助けてやってくれ...(ピーポーピーポー)、チッ、もうばれたか!」

プツッ、ツー、ツー、ツー

電話は切れた。

サラ「北川さん、北川さん!」

北川が電話ボックスから出ると、遠くから赤色灯を回したパトカーが猛スピードで近づいている。北川は雨の降りしきるなか闇に駆け出していった。

・・・

サラはしばらく切れた携帯電話を見つめていた。そしてふと顔をあげて誰もいないはずの背中に向けて叫んだ。

サラ「出てきなさい...、早く、今すぐ!」

捜査員「えっ、あっ!」

電信柱の裏に隠れていた捜査員がびっくりして声をあげた。

サラ「やっぱりあなた私のこと尾行していたのね。誰に言われたの。いいなさい。」

捜査員「いや、あの」

サラ「何、私に言えないっていうの!」

サラは若い捜査員に詰め寄った。長身のサラが首もとを掴み上げると、若い捜査員は背伸びをするしかない。

サラ「だいたいあなたが私を尾行とか、ちゃんちゃらおかしいのよ。ダーク・ゴーストの尾行もちゃんと出来なかったくせに、言いなさい!」

捜査員「は、はい、すみません! か、課長です。課長がサラさんをつけろって。」

サラ「やっぱり...そこまで手が回っているなんて、でもどうして。」

捜査員「サラさんには伝達禁止になってましたけど、うちの課が追っていた闇組織...あれを追うのが見送られたんです。理由は国会議員のお墨付きで財団法人化され表組織になるということで、さらに今日国会に法案が提出されるはずです。だから...」

サラは眉にシワをよせると捜査員に背を向け、歩きだした。

捜査員「どこへ行くんですか?」

サラ「どこって、決まっているでしょ、北川さんを助けるのよ」

捜査員「だって、連続殺人犯ですよ」

サラ「北川さんが人を殺すわけないじゃない、このバカ!」

サラは駐車場に止めてあった車に乗り込み、エンジンをかけた。

バゥウウウウン・・・・ブルブルブル・・・・

サラはクルマに取り付けてある警察無線で通信を傍受、北川を追いかけているパトカーの情報を得た。国道1号線を北上している。

サラ「今行くわ!」

ギアを1速に入れ、荒々しくクラッチをつないだ。

地下駐車場に響き渡るタイヤのスキール音、アスファルトにタイヤを切りつけながらクルマは飛び出していった。

(つづく)

この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。

賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。

ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。

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