ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第18話 品川ファクトリー #mini4wd

前回までのあらすじ

流しのミニヨン・レーサー北川は昔、学生の父、神山と同じレーシング・チーム「レッド・ホイール」に所属していた。北川は神山にとってかわりリーダーとなったが、チームは活動休止した。

品川埠頭。人通りのないだだっ広い産業道路をトレーラーヘッドがひっきりなしに往復する。そんな倉庫街にサラを含め、捜査員が詰めていた。

サラ「準備はいいこと? 私が合図したら全員一斉突入よ。」

捜査員「了解!(ザッ)」

持ち場についた捜査員が無線で応答する。ファクトリーには選りすぐりのミニヨン・レーサーが捕われており、この摘発に成功すれば組織の全貌解明と組織の弱体化が可能と一挙両得だ。昨今成果の上がっていないサラの評価もぐんと上がる。サラは身の引き締まる思いで突入の合図を出した。

・・・

捜査員「警察だ、動くな!...うっ」

捜査員が突入した倉庫はすでにもぬけの殻であった。慌ただしく立ち去ったために、机の上にはミニ四駆のパーツが散乱したまま、灰皿にはシケモクが残っている。

サラ「なんてこと! 一足遅かったなんて。...付近を捜索して!」

しかしすでに手遅れであることは誰の目にも明らかだった。動揺を隠しきれないサラ。

・・・

高速道路を走行するマイクロバスと先導する黒塗りのセダン。セダンには幹部たちが乗っていた。

幹部A「品川ファクトリーを撤退するのは惜しいが、致し方ない」

幹部B「脱走者がでるとはな、一体保安部は何をしていたんだ」

幹部C「いずれにしてもファクトリーを移転することは計画済みだった。多少時期が早まっただけに過ぎない。皇帝の大いなる計画は少しもゆらいでおらん。」

幹部A「その通りだ。新ファクトリーは品川ファクトリーよりも設備も規模も2倍以上だ。より一層開発、量産体制が強化される。」

幹部B「ああ、新しいファクトリーの本格稼働が楽しみだな」

セダンとマイクロバスは高速道路を西に走り去っていった。

・・・

新宿のバー、サラは荒れていた。

サラ「...失策だわ。もっと早く乗り込めば良かったのよ、令状とるのにマゴマゴしているからこんなことに」

北川「...」

サラ「とにかく分かったのは、組織の名はダーク・ゴースト。中心人物は皇帝と呼ばれ、計画に沿って行動していること。だけど情報はそこまで。計画も分からなければ、組織の規模もわからない、まったく何も手掛かりらしいものはないわ。」

北川「ビッグバン・ゴースト...神山...ダーク・ゴースト...妙だな、神山はそこにいたのか?」

サラ「分かるわけないじゃない、もぬけの殻よ!」

元々女を面倒くさいと思っている北川からすると、早くも帰りたくなっていた。サラはこうなるともう手がつけられない、適当に上がった方が身のためだ。

(チリリリーン、チリリリーン)

北川のスマホが鳴った。クラッシックな黒電話の音である。

北川「...もしもし、北川だ...浜田か、なんだ? ...なに? ああ、ああ、わかった、いますぐそちらに行く」

サラ「誰? あの大男のハマー? 仲いいんだ、私とどっちが大事なのよ」

北川「...トラブルだ。また連絡する。」

北川はふてくされるサラをその場に残し、足早に立ち去った。


(づつく)

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