スピード追及と競争は人類の基本的欲求であり本能 #suzuka50th

ここ最近考えているテーマ。人はどうしてスピードを出したがるのか? そして追い越したがるのか。

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ここ鈴鹿サーキット50周年アニバーサリーデーで星野一義VS中嶋悟 最終決着をみて思ったこと。ああ、こりゃ本能だなあと。

日本が生んだ2人のスピードスター、しかし今は現役引退。そろそろ好々爺になってもおかしくない年齢ですが、ひとたびレーシングスーツに身を包み、コックピットに収まれば「レーシングドライバー」。現役を彷彿とさせるアクセルの全開っぷりに人々は酔いしれます。

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アレッサンドロ・ナニーニさんも同じくそう。引退後はカフェ経営の実業家として活躍してますが、ラテン系の血なのかこちらも全開全開。鈴木亜久里選手が3位入賞したマシンを高らかに奏でます。

歴史あるマシンだから大事にしなきゃいけないし、万が一のことがあっては大変...と分かっているんだけど、「F1はエンジンを回してナンボだろ!」といわんばかりに全開ですよ。まあもちろん当時のレーシングスピードなはずはないのですが、それでも十分に当時の雰囲気が伝わるほどの速さと音。

スピードを出したい、相手を抜きたいと思う気持ちが伝わってきます。

F1、自動車に限らず、人類の歴史は飛行機、電車、船でも同じで速度との戦いでした。とくに20世紀の発明の歴史は目覚ましく、馬車とどっこいだったモビリティが今では音速を超え、地球を脱出し宇宙にまで到達しています。もちろん必要があって開発していたこともありますが、その根底にあるものは、やはりスピードへの希求、渇望が見え隠れするのです。

これは国や人種を問いません。

ということは人類、いや生物の根本、DNAに刻まれた何かに起因するのではないでしょうか。

人は赤ん坊として生まれてきます。生まれた瞬間は歩くことはおろか、移動することもままなりません。そのうちに首が座り世界を認識し、両手両足を使ってハイハイを始めます。そしてつかまり立ちから、2足歩行へと移っていきます。

人はなぜ2足歩行するのか。それは視点が高く遠くまで見渡せ、しかもその方が効率よく移動できるからに他なりません。つまり早く走れるのです。これです、これがスピード追及の原点です。

そう考えると自動車を運転する、スピードを出す、レースをする。これは人類の歴史、成長の過程から考えると非常に自然なこと、と思えるのです。動物がスピードを出すのは、獲物を捕らえられるから、早く餌にありつけるから。スピードを出すのは自然であり、生存のために必要なことなのです。

そのDNAがまだ人類には刻まれています。

スピードを出すと危ないという人がいます。それはそうです。しかし赤ちゃんが2足歩行をはじめ、転んだり、テーブルにぶつかって危ないからといって歩かすのを止める人がいるでしょうか? ゆりかごに押し込め、移動はすべてダッコにオンブにするでしょうか。

実は最近のスピードを無視した移動体は、人をこのゆりかごに押し込めようとする愚かな行為に近いと思うのです。

常にダッコにオンブという依存性の高い幼児の出来上がり。自分の目で見て、足で走り、危険を察知して回避することをしない、できない子供です。これは人類のDNAの否定であり、そしてある意味ロボトミー化を行っているといってもいいほど。

たしかにダッコにオンブであれば安全です。しかしその安全は「親」に依存しています。自分が寝ていようが、スマホの操作をしていようが目的地についているんですから、そりゃ便利というものです。しかしひとたび「親」に何かあれば、もはやお手上げ。その時はじめて自分で歩こうとしてもそれまで歩いていないのですから、歩けるわけがありません。これを自立できない、といいます。

自立すること、歩くこと、スピードを出すこと、実は筋が通っています。だからスピードを出したがる、というのは自然な欲求であり、否定することはできない本質的なものなのです。

うちの子供はスピードスピードうるさく、クルマを見ればそのクルマが何キロ出せるのか聞き、余りものうるささにさすがの私も相手しきれず適当に「300km/hくらいなんじゃないの?」と答えるほどです。自転車にのれば全速力、人を追い越すことに夢中です。

思い起こしてみればハイハイを始めたときも、えらいスピードでハイハイをしていたし、歩ける、走れるようになってからはすぐに競争、一番速く走れることに腐心していました。別に何も教えてないですよ、生まれてきたら、もうそうだったんです。

きっと世の中、そういう子供たちがたくさんいて、その中で才能と機会に恵まれた人がレーシングドライバー、ライダーになり、世界の頂点を目指していって、モータースポーツの歴史が刻まれていったのでしょう。

200km/hオーバーの速度でウィリーしながらホームストレート全域を駆け抜けていく、という恐ろしいまでのバランス感覚をもったライダーがいました。自分では真似できないし、しようとも思いませんが、世の中才能と練習次第でそんなことまでできちゃうんだなーとつくづく感心。

スピードを出すこと、競争すること。これはやはり人の基本的欲求であり、本能。子供を伸び伸び育てるというのであれば、それも認めてあげないといかんでしょう、と改めて思った次第です。

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