トヨタ社長に直訴し復活!誰でも買えるスポーツカー「86」 (産経新聞) - Yahoo!ニュース --トヨタブランドとしては久々のスポーツカーだ「86以前のスポーツカーといえば、1999年発売の『MR-S』までさかのぼる。10年以上の間が空いた。実はスポーツカーの企画は、毎年提案されていたが、投資効率が悪いということで、見送られ続けてきた。しかし、若者の車離れが問題視され、会社でも危機感が高まってきた中で、2007年1月に全役員を集めた対策会議が開かれ、『もうかる、もうからないに関係なく、みんなが買えるスポーツカーをつくろう』ということが決まり、動き出した。自分は当時、ミニバンのチーフエンジニアとして企画を進めていたが、その年の3月、技術担当の役員に呼び出され、『スポーツカーのチーフをやれ』と命じられ、それから若い技術者2人とのチームが始動した」
FT-86、現トヨタ86/スバルBRZの開発は2007年1月の役員会で決定したとのこと。それから約5年です。
トヨタ社長に直訴し復活!誰でも買えるスポーツカー「86」 (産経新聞) - Yahoo!ニュース --富士重工業と共同開発のプロジェクトだが「いろんなスポーツカーを参考にし、勉強するなかで、『トヨタS800(通称・ヨタハチ)』の水平対向エンジンとFRの組み合わせが理想的だと考えるようになった。ちょうどそのころ、トヨタと富士重が資本提携して、『カムリ』の生産を富士重の米国工場に委託することの次の共同プロジェクトがいろいろ検討されていた。それがスポーツカープロジェクトに発展した」
さてこの水平対向エンジンとFRの組み合わせは本当に理想的なのでしょうか?
【みんカラ】 Yell! - Design:Diary(2011年03月)|ブログ|フィー. - 車・自動車SNS(ブログ・パーツ・整備・燃費)ファンの人は知ってる人が多いけど、もともとスバルの水平対向って、車体に対するエンジン重心がとっても高い。
車軸に対するエンジンのオーバーハングも、水平対向だからかろうじてOKってレベルで飛び出てる。
これは給排が上下に出て横幅が広いエンジンと、これをフロント搭載するパッケージングが喧嘩しちゃってるから。)
「水平対向エンジンは重心が低い」というのが通説ですが、実はエンジン単体ではそうであっても実際にエンジンをマウントする段になるとそうもいかないのが実情。
・サスペンションの取り付け部とエンジンマウントのトレードオフ
・トランスミッションとの位置関係
・排気系のとりまわし
などなど。すべての問題は「横幅が広く、排気が真下」ということに由来します。
GC8とかを下から見るとわかるんだけれど、スバル車のエンジン搭載高を決めてるのは、エンジン本体のオイルパンとか、エキマニ/ターボを含めた排気系じゃなくて、サスペンションのロア・アームのボディ側取り付け点だったりする。ロア・アームって足回りの動的キャンバー変化をつかさどる要素だから、普通は幅方向に長く設定したくなる部品。だから普通の車を下から見ると、そのボディ側取り付け点ってフロントサイドメンバーよりも内側にあることが多い。
#フロント・サイド・メンバーはエンジンルームの左右で、前後方向に伸びてる基本骨格ね。しかも取付点高さだって、1Gのロールセンターを考えたら上に持ってきたい。純正で上向きハの字は良くないから。だからこの取り付け点って、エンジンコンパートメントの中で、エンジンやミッションと喧嘩することが多い。
簡単にいうと横幅が大きな水平対向エンジンを理想的な位置に置こうとすると今度はサスペンションアームの取り付け位置に困る、という話です。これを避けるためにスバルの場合はあえてエンジンをフロントアクスルの前に追いやって空間を確保しているキライもないわけではありません。もちろん4WDのためのデフの長さもありますが。
さらに具体的な話になるとよりややこしく、エンジンマウント・サスペンションの位置、形状、方式に工夫が必要です。
だから、これ以上にエンジン高を下げようと思うと、 ・トレッドを広げて、サスブッシュマウントを外に出して、形状を楽にするか(GD系インプがそんな感じ) ・メンバーの構成や断面形状変更で高さを削減するか(BL型レガシイがそんな感じ) ・エンジンのマウント点を下から横にして、横から抱えることで、マウント高さを上げる(今のレガシイね) とかしないとだめなのだ。
最後の要件、排気系の取り回しについて。
エンジン高にさらに有利なのが、ビームが前に行ったことで、排気管とオイルパンの取り回しが変わってること。リア置きのときは、エンジンの真後ろにメンバーがあったから、地上高が厳しいエキパイはその下が通れなかった。だから一旦前を回って4-2-1集合したあと、右側のエンジン後ろとメンバーの間から、メンバーの上に抜けてる。このエキパイを抜くスペースを作るために、少しエンジンの搭載高が高くなってたのだ。これがリア置きになったから、エキパイは真後ろに抜ければよくて、メンバーの高さに影響しないのだ。左右バンクの集合はミッション周りの高さ見てると、日産のFRみたいにミッション後ろでやってるようには見えないからオイルパンとミッションのあわせ面直前で、右か左の片側に抜けてるみたい。
エンジン支持方法が変わることで、排気系のとりまわしも自然になったようです。
(BRZフロント下回り。ほとんどカバーされていて、空力がよさそう)
マツダのロータリーと同じく、水平対向エンジンをフロントに縦置きし、4輪を駆動するというのはスバル唯一。ということはやはりここでもガラパゴス化していたに違いありません。
ということで、フロントメンバーを中心に見てみたのだけれど、正直、けっこう驚いたかな。 というのも、思ったより全部の構成要素が刷新されてて、やりたいことをやってる感じがしたから。 決して、インプのドラシャ抜いただけ、の車になってないところが、けっこういい感じ。でもね、やっぱいろいろ考えてて思ったのが、やっぱり水平対向のフロント置きって厳しいんだな、って。
いくらオーバーハングが短いと言っても、今回のプラットフォーム、決してフロントミッドってわけじゃない。
平面図で見てる限りだと、S2000とそんな変わらないぐらいだよね。
それでもって水平対向って幅を要求するパッケージだから、足回りはやっぱり窮屈気味だし。
決して、最高の素性を持つプラットフォームって感じには見えない。ましてや、普通のスバルのプラットフォームに関しては
そこに4駆なんてアイデンティティまで入ってきちゃってるせいで、なおさら素性が悪いレイアウトになっちゃってる。
これまで水平対向+4輪駆動「脳」で考えてきたスバルにしてみれば、トヨタからやってきたFRスポーツカー開発陣から
・4輪駆動
・ターボ
・ハイグリップタイヤ
がスポーツカーを殺したまで言われて全否定、プライドを粉々に打ち砕かれたはずです。
しかし逆にこの刺激がそれまでの既成概念を破り、本当の意味での低重心化がはかれたと考えると興味深いですね。
さてエンジンは普通の4気筒エンジンじゃダメだったんでしょうかね。直噴ツインスクロールターボ化して燃費とパワーの両立を計ることもできただろうし、低重心化も大事ですがエンジンの重量がそもそも軽いというのも大切です。
マツダ・ロードスターやホンダS2000のハンドリングに定評がある理由のひとつとして、コンパクトな直列4気筒エンジンをアクスルの内側に配置したフロントミッドシップにしていること、左右幅がコンパクトなのでサスペンション設計の自由度がありダブルウィッシュボーンを使っていることなどあります。
と考えると水平対向FRが理想のスポーツカーというのは「富士重工との共同開発」が最初にありきで、あとづけ理由にも思えるんですけどね。ただヨタハチとの関連性・系譜という点では良いですし、頑張ったのは伝わってきました。