宮崎駿「泥まみれの虎」のタイガー(ティーガー)戦車最強伝説

1944年3月17日から22日までの間、ドイツ・タイガー(ティーガー)戦車2両で38両のロシア戦車と17門の野戦砲を撃破した話。

宮崎駿「泥まみれの虎」

というとかなり勇猛果敢な武勇伝に聞こえますけど、タイトルのとおり「泥まみれ」でグダグダな防衛戦。

タイガー(ティーガー)戦車の戦車長、オットー・カリウスが後に書いた"TIGER IM SCHLAMM"という軍の教養書シリーズを元に、宮崎駿が激戦であったナルヴァ戦線を漫画化したものですが、「紅の豚」と同じく、登場する兵士たちは全員豚。豚だけに愛嬌はあるし、マッチョでも、インテリでもない風景が描かれています。

しかしながら戦争、しかも防衛線を守るという任務にあたっての歩兵の消耗っぷりはものすごく、とても素性のよい若い少尉が来てもその夜には戦死してしまうという無常さ。防衛線を作り、守るというのは機甲化部隊でできるものではなく、最終的には歩兵の役割になる現実がたんたんと描かれてます。

激戦なのですが、爽快感も高揚感もなく、ただ生き延びるためだけに冷静的確に判断して行動するドイツ兵、オットー・カリウスの姿だけが焼きつきました。

さてそんなカリウスですが存命で、宮崎駿と会っています。

宮崎駿「泥まみれの虎」

しかも両手にはタミヤのタイガー戦車のプラモデルが!?

さらにはそのタイガー戦車、オットー・カリウス本人モデルなんです。

宮崎駿「泥まみれの虎」

カリウス本人のサインが入った書籍に本人モデルのプラモデル・・・これは凄いプレゼントです。
それにしてもカリウス自身も、日本のプラモデルメーカーが自分の戦車のプラモデルを作り、そして世界になだたる宮崎監督が自分の体験記を漫画にして訪ねてくるなんて、どんなに日本人はタイガー戦車好きなんだ!と思ったことでしょう。

こういったところになんだか日本人とドイツ人の血統は違えど、相通じるメンタリティってのがあるんでしょうか。

いや、多分メンタリティが相通じてるんじゃなくって、オタク度というかマニア度というか。過剰なまでの技術信奉がもたらす共感なのかも知れませんね。共感。

1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ タイガーI オットーカリウス搭乗車
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ということで、漫画は興味深いですけど、面白いかというと、そうでもありません。同時収録の戦車漫画「ハンスの帰還」の方はフィクションでまだ面白みもありますけど、宮崎駿自身が「両方ともうまくいかなかった」というほど「戦車はどうしようもないモノ」みたいです。新谷かおるの戦場ロマンシリーズはどうなんでしょうか。

戦車に限らず、陸軍ってほんとどうにもならないくらい戦争を実感しなければいけない部隊なのできついですね。

泥まみれの虎―宮崎駿の妄想ノート
宮崎 駿
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