鈴木健著「究極の会議」を読みました。この本はその名のとおり、「究極会議」=extreme meetingのメソッドを提案しています。エクストリームといわれると、XPとか、Xgamesを思い出してしまうのは年ですかね。
この書籍では
「議事録を作るために会議はある」
という仮説を元に、それを実際に遂行するための手法が紹介されています。とても分かりやすく、読みやすいので「小田原評定」とか、「宮中御前会議」のような状態でお悩みの方は参考になると思います。
さて・・・
会議とは
さてそもそも「会議」ってなんでしょう。漢字を見る限り、「会う」+「議」の合体です。
「会議」にまつわる「議」の熟語をみると、
議論
議案
議事(進行)
議決
議場
議席
議長
さらに政治に特有なものとしては
議員
議院
議会
といった言葉が出てきます。
「議」は訓読みはあるんでしょうか。あっても余りなじみがないところをみると、「議」の概念は輸入されたもので、日本古来の文化にはなかったことが伺えます。
つまり日本人が会議ベタなのはDNAと日本文化がそうさせているんです。国会が迷走するのも同じで、やる方も、見る方も実は慣れてないのではないかと推測します。ほら、なにせ「大和の国」ですから、和をもって尊しとするわけで、和と議論は相反します。
さて一方の英語はというと、
meeting: 「会う」だけです。
conference: 会議、協議、相談といった意味合いになります。
consultation: 相談、診察、協議、談合。みてもらう意味合いが強いです。
council: 評議会、審議会、委員会、理事会。枢密院といったようにオフィシャル感が漂います。
と色々あります。
さらにはtable, talk(s)も会議という意味があります。
明治以前の日本の「会議」といえば、政治的・軍事的な役割が強いです。一方いわゆる庶民での会議は「寄り合い」という呼び方をしていて、これはまさに英語で meetingに相当するのでしょう。
ビジネスシーンにおける「会議」というのは、実は明治以降の近代化に伴って欧米から輸入されたものです。鎖国体制崩壊後、経済発展のために諸外国のビジネス慣習に合わせ、必要不可欠なものとして「会議」が位置づけられました。
会社の会議がなってない!と嘆く場合、「ああ、これは寄り合いなんだ」と思えば気が少しは楽になります。とはいえ前には進みませんけど。
社内ミーティングを効率的にするには
よく「productiveな会議」という言い方をしますけどこれはアウトプットを重視したものです。productiveとは生産するという意味ですから、会議で何かを作り上げないといけません。しかし普通会議では作業をしませんから、生産はできません。それではどうやってproductiveにするか。それは作業=タスクを決めることによって、生産につなげることが会議での生産性ということになります。これをよく「タスクに落とす」と言います。タスクに一旦落ちれば、あとはそれをやるだけになるので簡単です。タスクでは作業内容と担当者を決めます。決まらない場合はリーダーが一旦引き受けます。
次にそのタスクの進捗を確認する、「進捗確認会議」というものもあります。これはその名のとおりでタスクの進み具合をみんなで確認しあうということです。タスクが進んでいない場合はその理由を探りましょう。例えば一人の人にタスクが集中している場合であれば、他の人にタスクをアサインしなおすなど。またどうしてもスケジュールに影響するようであれば、「全体のスケジュールを見直す」というタスクを作って、リーダーにアサインします。
以上でなんとなくヒントが見えてきました。次に社内ミーティングを効率化する会議手法を提案してみます。
stand up meeting
これは「寄り合い」的なミーティングです。朝、10分程度、数名のチームが寄り集まって各自、昨日やったこと、今日のやることを報告しあう会議です。ダラダラやるのを避けるためにあえて椅子は使わず、立って行います。これが有効なのはせいぜい10人まで。というのも報告は各自1分しかなくとも20名とかになると20分たっていて疲れちゃうからです。議事録はとった方がいいですけど、なくても別に構いません。
ここでの狙いは頭の活性化。睡眠で忘れたことを朝一番に掘り起こすことで、今日のタスクを確認します。またそれをチーム全体で共有することで、ブレを早期に修正したり、またコミュニケーションのきっかけとします。
ランチミーティング
これはミーティングという名前ですけど、お昼ご飯を一緒に食べるだけです。しかし普通同じ会社で同じチームであれば話す内容といえば仕事の話題が多くなりがちですよね。ですからこれも立派なミーティング。
最近は会社でも個食化が進んでますが、本来、会社では食事は絶対に社員と一緒にとるべきです。というのも、会社=companyという名前はラテン語で「食事を一緒に食べる」という意味(com: 一緒、pan: パン)に由来するからです。日本語でいえば「同じ釜の飯を食う」でしょう。
食事の前後も相手の仕事をインタラプトできるチャンスです。このチャンスを生かして聞きたいことを聞いたり、ちょっとした相談をすることができるというのもメリットです。
時間制限型、報告会議
これは各課からの報告といったような、報告会議に使うもの。予め発表する内容のプレゼン資料を用意し、それをプロジェクタで投影。以下のように時間制限を設けて、進行させます。
資料読み下し:1分(プレゼン資料を各自読み、理解します)
説明:4分(説明者が説明)
質疑応答:5分
施策:2分(質疑をうけて修正したタスク内容の発表)
1セッション12分。5部署あっても60分で終了します。時間管理はキッチンタイマーを使い、タイムキーパーが時間を知らせます。慣れてくるとダラダラと説明せず、要点を先に説明できるようになるし、いつ終わるとも分からない議論を切り上げることができます。
部課会議
一般的な会議のタイプです。議事録はwikiを使い、wikiページをプロジェクタで投影しながら進行させます。
予めagendaはテンプレート化しておき、それをまず新規ページ作成をして、テンプレートをコピペ。議事を書き込めば終了したときには、立派な議事録がwikiページとして出来上がります。mediawikiであればユーザー管理ができ、また章ごとに編集できるので、複数人数が同時に別の章に報告内容を書くという芸当も簡単にできます。するとページをリロードするとあっという間に立派な議事録の出来上がりです。なおこれを実現するには参加者全員がPCを利用していることが望ましいです。
さらにタスクに落とす場合はwikiと平行してイシュートラッキングシステム、tracを使います。
tracはbugzilla, fogbugs, RTといったバグトラッキングシステムやタスク進捗管理システムの一種ですが、「チケット」と呼ばれるところに作業内容、担当者を書くことでタスクの進捗管理を行うことができます。
wikiもtracもウェブなので当然ですが、URIができます。実はそこがもっとも重要なポイントです。
ワードやテキストファイルをファイルサーバー上で共有したものや、メールは議事録には適しません。というのも、内容を一意で特定するのがとても面倒だからです。例えばタスク化されたチケット内容で、「なんとか会議の決定により」とした場合、議事録にURIがあれば詳細はかかずともリンクを貼付けるだけで事が足ります。同じく、議事録上でタスクの進捗を書く場合も、チケットのURIを貼付けるだけで終了。これがメールだとサブジェクトやMLの通し番号などで特定しなければいけなかったり、ファイルサーバー上へのリンクもwindowsとMacで扱いが異なる上、社外から見る事が通常できません。そういう意味で、URIがあることが最も重要なのです。
また重要なのが「改変履歴」を保つことです。テキストファイルは改変履歴はもてません。ワードはそれ自体で改変履歴を持つ事は可能ですが、扱いやすいとはいえません。一方wikiもtracも改変履歴を自動で保ってくれ、誰がいつ、何を修正したのかが一目瞭然。世代をさかのぼることも、diffをとることも簡単です。tracはソースコードを管理するsubversion(svn)と連携するので、ソースコードの修正内容も簡単に分かります。
つまり、会議で決まった事が、wikiとtracとsvnが連携したことでソースコードの改変箇所まで直接的に作用するようになります。まさに「productiveな会議」となるわけです。
進捗確認会議
別名チケットスクラブ。tracに登録されているチケットを「すべて」「みんなで」見ます。いわゆる「店卸し」。これを定期的にやることで、「店晒し」にされているチケットを掘り起こし、タスクが忘れ去られないよう、解決できるように処方します。すべてをみんなで見るのがポイントで、これにより誰に負荷が集中しているかなどの情報の共有ができ、協力しあう心が生まれます。
これは定期的、1週間に一度くらいやると良いです。
至高の会議用ツールまとめ
ということで一旦ここで「至高の会議」を実現するためのツールをまとめます。
wiki: 議事録、備忘録など、チケット以外のドキュメントを保存する場所です。wikipediaで利用しているmediawikiがユーザー管理ができてベターです
trac: チケットトラッキングシステム。svnとの親和性が高いです。デメリットはmediawikiとwiki記法が異なり、両方覚える必要があること
subversion(svn): バージョン管理。ソースコード管理のほか、サーバーの設定情報、ドキュメント管理にも使えます。
ノートPC: メンバー全員が持っているといいです
無線LAN: ノートPCでデスクと会議室を自由に行き来するために必須です
プロジェクタ: ノートPCに接続して投影します
以上があると、会議が迷走せず、ToDoに落とし込めて、ToDoの進捗管理が可視化されて、アウトプットにダイレクトに繋がるようになります。
会議の作り方
今回言及していませんが、会議を催す場合には以下に注意しなければいけないのは言うまでもありません。
・メンバーの選定
よくおしゃべりな人が自分の感想や意見をとうとうと喋って時間を浪費するケースが見受けられます。そんな人は最初から呼ばなければ起きないので、メンバーの選定は慎重に。必要不可欠な人だけを選定し、決定権を持つ人を必ず入れておかないといけません。
あとはアジェンダの設定なども必要ですが、今回はスルーします。
以上社内ミーティングの効率化についてまとめてみました。会議の種類として他に社外ミーティングなどもありますので、それはそれでまた別のコツが必要になってきます。それはまた機会があれば。