スペースコロニー・サイド7へのジオン軍の奇襲攻撃により、住民は止む無くホワイトベースへと非難した。そしてルナツー、大気圏突入と逃亡を繰り返して地球へ入ったもののジオンの勢力圏へ導かれ、圧倒的なジオン優勢の前に孤立するホワイトベース。避難民はこのまま地球の地を踏めずに殺されてしまうという危機感を持っていた。
避難民「無理やり宇宙移民をさせられた我々が二度と帰る事のないと思っとった地球へ帰れたのじゃ、着陸もできずに終わったら死に切れんというものじゃ。そうは思わんか?皆さん」
(機動戦士ガンダム 第7話「コアファイター脱出せよ」より)
そしてもうひとつ、特徴的なのが毎回サブタイトルの前に入る永井一郎によるナレーション。
「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。(以下略)」
この2つの内容から分かるのが
- 宇宙移民は希望制ではなく、強制的なものだった
- 宇宙移民は二度と地球に戻ることが出来なかった
という点。ガンダム・ジ・オリジンではジオン・ズム・ダイクンによる独立運動の根幹には、地球に住む少数の支配階級が宇宙移民(スペースノイド)を不当に搾取、植民地政策をとっていたことを糾弾、さらに宇宙に適応した優れた人種「人の革新(ニュータイプ)」の発生を予見した。そしてこの「ニュータイプ」の存在が現実のものとなると逆に宇宙移民が優れた人種であることを証明し、限られた優良人種が逆に地球をも支配すべきというギレンの野望を助長する材料と後になる。
宇宙移民は元々地球に住む地球人であったものの、人口爆発により地球がその人口を収容できなくなっていった。限られた資源と環境を利用するのは上流階級のみ許された権利で、下流階級は地球に住むべきではない。その考えの下スペースコロニーを開発し、下流階級の人を宇宙へと上げ、労働者として利用し小惑星からの鉱物資源の発掘作業や、木星からのエネルギー抽出などを行わせていた。そのため宇宙移民は二度と地球の土を踏むことなく、宇宙でその生涯を終えることとなる。
ガンダムは地球連邦対ジオン軍という図式をとっているが、一方で支配階級に対する下流階級の反逆、民主化運動でもある。ジオン公国のザビ家はジオン・ズム・ダイクンの民主化運動の名を借りながら、最終的にはザビ家による地球支配を目指しているところでジオンの思想とは大きく異なる。
今日本において中流階級が上流階級と下流階級へ二分される流れとなっている。多くは下流へと落ちている。
「下流とは単に所得が少ないということだけではない。コミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲、つまり総じて人生への意欲が低いのである。その結果として所得が上がらず、未婚のままである確率も高い。そして彼らの中には、だらだら歩き、だらだら生きている者も少なくない。その方が楽だからだ。」「社会全体が上昇気流に乗っているときは、個人に上昇意欲がなくても、知らぬ間に上昇できた。社会全体が上昇をやめたら、上昇する意欲と能力を持つ者だけが上昇し、それが無い者は下降していく」
(「下流社会」三浦展著より)
この下流は生活する場所や、親の階級、収入による影響が大きいと主張している。つまり下流の子女は下流となりやすい傾向にある。スペースコロニーで生まれた子供たちが下流であるように、平均所得の低い地域で生まれた子供は下流のままとなる傾向が強い。また下流は自分の生まれ育った地域から流動することがなく、特定の地域、限られた友人関係の中で生活するのを好む。これはマクルーハンのいうグローバル・ヴィレッジというよりも、昔ながらの村社会、昔ながらの農民と変わらない。「新しい農民」といっても良いかも知れない。
最近週刊誌などで「下流」の文字を見ることが多くなった。下流階級であることの何が悪い?下流の暮らしぶりを楽しもう、年収300万円で豊かに暮らす方法など氾濫している。しかし下流化の流れにより経済は停滞し、消費は落ち込み、国の経済力、国力は見る見る低下していく。一方で隣の国である中国の経済成長は目覚しく、国力は益々強くなってくる。国際競争力の低下は国自体の下流化を招き、多くの下流国民は下流の暮らしから抜け出すことが出来なくなってしまう。これは先に指摘した、「下流の子女は下流になりやすい傾向」の延長にあるため。
「少数のエリートが国富を稼ぎ出し、多くの大衆はその国富を消費し、そこそこ楽しく『歌ったり踊ったり』して暮らすことで、内需を拡大してくれれば良い、というのが小泉-竹中の経済政策だ。つまり、格差拡大が前提とされているのだ」 (「下流社会」三浦展著より)
景気は停滞、デフレ傾向にあるのに、高級品が売れている、高級車が売れている、高級マンションが売れているというのはこういった政策の表れである。つまり小泉政権は地球連邦と同じである。少数の支配者階級が下流をそこそこ楽しく暮らさせる代わりに富を独占するのだ。下流化したサラリーマンは23区内の高級マンションや一戸建て住宅に住むことは夢のまた夢であり、今日も1時間半の満員電車に押し込まれて仕事場へ向かい、残業をするだけし、控除もなく、高い税金を支払わされることになる。そしてそこそこ楽しい暮らしをするために消費活動を行い、支配者階級に富を貢ぐのだ。
今日本では本当の民主化運動が必要なのかも知れない。ジーク・ジオン。
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