昨日はF1 US Grand Prix。今までに見たF1の中で最悪につまらなかったF1でした。
詳しくは他に譲りますがミシュランタイヤに問題が見つかり、ミシュランを採用しているチームは1台のこらずフォーメーションラップを終えた時点でピットイン、リタイヤ。ブリジストンタイヤ装着の3チーム6台のみ、そのうち2チームは下位チームが走行するという余りにもみすぼらしいものでした。観客からはブーイング、ペットボトルが数本投げ込まれるという状況。TVの前で唖然ですが、F1を楽しみにしてサーキットにやってきた観客の諦めと怒りは察します。もしもこれが鈴鹿であって、我が家3人で高いチケットを買い、遠路はるばる鈴鹿へいって宿までとっていたらそりゃ金返せともいいたくなるでしょう。それくらい酷いものでした。
今年はBARが苦心惨憺しているせいもあり、F1のエントリーはほとんどしていないのですが、一番の原因はレギュレーションの変更により面白くなくなったことにあります。US Grand Prixの騒動の原因ともなっているのですが、1レース1タイヤセット。つまり予選から本戦まで1セット、4本のタイヤで走行しなければならない点です。エンジンについても2レースで1エンジン。これはスプリントレースではなく、耐久レース以外の何者でもありません。マシンの限界まで攻めて追い抜きをするのがF1のエクスタシーだと思っていたのですが、タイヤをいたわり、エンジンをいたわる走りでは見所が減ってしまいます。ガソリンをどれくらい積んで予選アタックし、スタートポジションとピットインの回数戦略のみで行われる今のF1はよりコンピュータシミュレーション的であり、ドライバーの争いというヒューマンドラマの割合がずいぶんと減りました。
さらに1レース1タイヤセットの危険性は前々回の最終ラップにライコネンのタイヤがバースト・リタイヤするという事態まで引き起こしています。去年までならタイヤに異常があることを認識したなら交換できたのですが、交換が許されずリタイヤするしかない今のレギュレーションでは、riskを取ってゴールする可能性にかけたのですがこの結果でした。そして今回のフリー走行での2回のタイヤバースト。どちらもミシュランタイヤで、今回は構造的な問題点が明らかになったということで新しいタイヤに交換させて欲しいこと、もしくはコースにシケインを作って危険性を減らすことを提案したのですが合意に至りませんでした。ブリジストン陣営にとっては確かにメリットがないのですが、ここでひとつ敵に塩を送り、逆の立場になったときにはこの前例を引き合いに融通してもらうとか大人の解決方法を取って欲しかったです。
F1は motorsportsでありながら、entertainmentでありショービジネスです。例えば今回のUS、インディアナポリスはアメリカモータースポーツの聖地ですが、USモータースポーツでこのような事態が起きた場合はきっと特例を認めてレースを成立させていたことでしょう。アメリカにおいてはお客が最も優先されるべきことで、そのための特例であればいくらでも認めます。お客に喜んでもらうことがショービジネスの根幹であって、ショービジネスが成功することがbig successにつながる訳です。
一方今回のFIAの采配はレギュレーション原理主義ともいえるもので、ヨーロッパ的です。一度定めたルールを厳格に守り、例外は認めないというものでした。また全チームの合意が得られない限りは特例も施行できません。その結果がこのような近年もっともつまらないF1レースに至ってしまったわけです。
ミシュランタイヤの交換を認め、一方でブリジストン陣営には便宜を図ることでうまく両者の合意をとりつけられれば良かったのにと思います。結局一番ワリを食ったのは観客やファンであり、レギュレーションやFIAへの不信感はつのるばかりです。