日本的会社構造の変革

『富士通「成果主義」の崩壊』を読み終わりました。
これはすべての会社員、そして企業経営者にオススメできる内容です。

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊
城 繁幸

おすすめ平均 
「ほとんど文化大革命!」
新卒学生にも敬遠されている会社。
壮大なケーススタディ
中高年層の若者層搾取システム
成果主義を取り入れている/取り入れようとしている企業の労使・技術職の人には参考になる

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この本のいいところはいくつかありますが、もっとも良い点は富士通のみならず、日本的会社および社会構造にも言及している点です。

例えば電機メーカーでは当たり前なのですが、大学と会社人事との癒着、馴れ合いになっている「学校推薦」制度。会社人事から大学側に何名という定員を割り当て、大学側はその定員に学生を絞り込むという寸法。実質会社が選考するのではなく、大学が選考しているという実際。

これは富士通に限らず、どの電気系企業、理系全体がほぼそういった制度の中で就職活動をしています。企業側は各出身OBの若手社員を集め、リクルーターとして会社説明会をさせるということになってます。リクルーターのガイダンスで各大学ごとのリクルーターの数をみれば、大学の勢力分布が一目瞭然です。ここで分かるのはすでに人をみてなく、学歴(大学のブランド)と数でしか考えられてないわけです。大学名不問が聞いて呆れます。面接も笑えて、確かに履歴書からは大学名が消えているのですが学部名、学科名は残ってます。

「総合政策」「環境情報」

・・・慶應でしょ? ってカンジですぐにばれます。

まあそれはともく、この本では企業のニーズ、「仕事のやりかたは叩きこむから、従順で体力のある人」を求めているのに対して、大学院卒の「成果主義」に希望をもってチャレンジに来る優秀な学生とのギャップがあることを指摘してます。オレは成果だすぜーって意気込んでくる学生に対して、「とりあえず、雑用やっといて」みたいな仕事のアサインは成果主義とはかけ離れたものです。しかし今の理系の現状、大学院の進学率が50%を軽く越えている現状では逆に学卒や専門学校卒だけでは数をまかない切れないのも現実のようです。

成果主義の導入というと聞こえがいいのですが、マネージャークラス以上は年功序列が色濃く残り、学生時代は適当にこなす実力主義からは程遠いキャンパスライフを送って即戦力にはならない新入社員と一貫性がないことが最大の問題のようです。

よくよく考えてみれば日本社会は競争だとかいいながら入学試験(受験)でしか競争はしてないのです。みな横並び、運動会も手をとりあってゴールなーんてことを指導する大人がいる中では成果主義は浸透しないでしょう。

どんなシステムであっても100%機能することはありません。どんなに上手くいったとしても必ず不満を持つ人は少なからずいます。ただ誰一人満足できないシステムはやはり、システムに問題があるといわざるを得ないでしょう。この問題は一朝一夕には解決できないですが、じっくりと試行錯誤しながら改良していくべきと思いました。それは一企業だけではなく、変革を迫られている日本社会もそうです。官僚制や政治の世界にも共通するテーマでしょう。

最後に、面白かったのは富士通から転職したエンジニアが給料下がっても今の仕事の方が面白くてやりがいがある、生き生きしていたという点です。エンジニアは給料のために働いているのではないです。給料はあくまでも副産物。いいに越したことはありませんが、そこそこであればあとは仕事内容や仕事環境などにプライオリティが置かれる生物なのです。