今回のヨセミテで行きたいところがひとつ。それがヨセミテ最大の見所のハーフドームと呼ばれる岩山である。
ここは以前友人が日帰りかなにかで訪れて、無理やり登頂に成功したという場所で、その光景をDVカムで見せてもらったことがある。そのただならぬ光景にすっかり洗脳されて、いつかチャンスがあれば是非行ってみたいと常々思っていた。
今回はちょっと無理やりだけれども週末を利用して来ることができたわけだ。弾む心を抑えながらまずは装備の調達。Yosemite Valleyの中心にある Yosemite Villageの Yosemite Storeに行って前回Grand CanyonでそうしたようにDバッグを買う。観光地なのに$20と安いけど安物っぽく見えないしっかりしたものが買えるのだ。しかもYosemiteのロゴ入り。こうしてDバッグが増えていく・・・(^^;
あとは食料と水分。オレンジジュースと水をあわせて1L、食料はバナナひとふさ(なんと99セント)とサンドイッチ2つ(朝食用、昼食用)。ついでにチョコチップクッキーもDバッグに入れる。
朝はやっぱり寒いのでほとんどフル装備の格好。それにデジカメ、DVカムを入れてゆく。今回は帽子はいいのがなかったので買わずにバンダナで代用することに。
これで行く準備はできた。車はYosemite Village近くのday parking(当然無料)にとめ、そこからシャトルバス(これも無料)を使ってHalf Domeをはじめとしてwaterfallsにアクセスできる trailへの入り口(16番)へと向かう。
時刻は9時15分。スタートするにはなかなかいい時間だ。予測ではしばらくは平坦な道かと思いきや、いきなり登りがはじまる。そして15分も登っているうちにもうばててきた。そうしていると最初の滝にたどりつく。谷あいなので岩が迫りきり、なかなか視界が開けない。
じき vernal falls, nevada fallsへのtrailと、half domeへのtrail との分岐が出てきた。後で考えるとどちらでもいけるのだが、half domeが表記されていた、比較的なだらかなtrailを進むことに。こちらはstockと呼ばれる、馬が通れる道でもある。
あがるについて、waterfallsは近くなるし、yosemite最大の滝である yosemite fallsも見えるようになってくる。壮大な景色だ。特にnevada fallsの近くにいくと岩肌がくっきりとしてきて、普通の山ではないことを思わせる。
そうして2時間半くらいかかってnevada fallsの上にたどりつく。高低差と水量に圧倒される。結構上の方は流れもおだやかでくつろげるのだが、そこで足をすべらせたらそのまま天国に召されてしまう恐ろしさ。アメリカってwarningはするけれども、だからといって安全を確保してくれるほどお節介ではないのであとはat your own riskで滝に迫っていける。
さて、ここはまだまだ途中に過ぎないので先へと急ぐ。しばらく平坦な川際を歩き、campgroundを過ぎていよいよ斜面へとあがっていく。ここでもう3時間以上歩いている。だんだんとバテてきた。しかも弱い右膝がだんだんと悪くなってきた。大腿骨骨折で筋肉は衰えているところに、スキーで靭帯を痛めたので歩きすぎると右足が曲がらなくなってしまうのだ。その兆候が見えてきた。右足をかばいつつ歩き続ける。
斜面には木がうっそうと茂っているのだが、ところどころ倒れた木が黒くこげている。はて?これは燃やしたのか、それとも落雷で燃えたのか。燃やす理由が見当たらないが。後で知ったのだがこのyosemiteは元々indianが住んでいたのだが、100年前にアメリカの軍隊がindianの家や森を燃やしてindianを追い払ったそうだ。100年前の焼け焦げが残っているとは思えないのだが。
さて、そうこうしているうちにどうもペースが落ちてきた。通常は人より早いペースで歩けるのだが、どんどんと人に抜かれていく。まずはバテている。さらに問題は水がもう残り少ないのだった。これは誤算だった。元々片道3時間、往復で6時間程度と見込んでいたのだがどうやら片道で6時間くらいのようだ。
なんとかhalf domeのそばまでやってきた。最後は山ではなく、岩だ。岩は2こぶあって、一つ目と2つめがある。もう右膝は曲げられない。すでに5時間歩いているからだ。一つ目はほとんどが階段、しかもすれ違えないくらいの細さ。歩くのが人の倍遅いので、前から来る人、そして後ろから追い抜く人を先にやりつつ登る。ただでさえ遅いのだが、さらに遅いし、急いでもばててしまう。
そうやって一こぶ目をなんとか上がった。もう完全に右膝は曲げることが出来なくなっている。足をひきずりながら、よくまあここまでやってきたものだ。
しかし頂上まであと数十メートル。最後は階段ではなく、手摺がわりのワイヤーだ。ここにぶらさがって登っていくのだ。
見ればすでに登るひと、降りる人で鈴なり。今までは譲ることもできたが、ここではマイペースに登ることもできないし、休むこともできない。
10分ほど悩んで、結局登頂は諦めた。体力と足の具合を考えるとここに来るのも二度とないかも知れないので無理して登ろうかと思ったが、ここで無理して登ったら二度と地上に降り立てないかもしれない。時間はすでに午後3時間15分。つまり6時間かかっている。ここで往復さらに1時間かかるとすると、下山するまでに5時間。計算すると夜9時15分になってしまう。当然周囲は真っ暗だ。Grand Canyonでの悪夢が蘇る。今回は当然 magliteを持ってきているが、それを使ったとしても足の状態がさらに悪化するわけだから自力で戻れないかもしれない。夜を明かすとなると、毛布2枚でも耐えられない寒さが待っているのに、装備はない。
周囲の人が嬉しそうに "I made it!!"と言っているのを横目に帰途に着くことにした。
行きですでに厳しかったのだが、帰りはさらに厳しい。膝が曲がらないと登りも遅いだけでなく、くだりも遅い。階段は2歩で一段降りることになるので、通常の半分の速度。水もなくなり、とにかく一歩一歩進む。
nevada fallsの手前で分岐がある。これは来るときに通らなかった、距離は近いけれども滝のそばをとおる急激な坂道である。約2.5mileで、来るときに使ったなだらかなtrailは4.0mile位。その差は1.5mile。ここも迷った末、距離が近く、通ったことのない方を選らんだ。しかしそれは失敗だった。
分岐からすぐにつづら折の階段が続く。それもそのはず、nevada fallsの脇を通るのだから。
そして滝つぼのレベルまでさがると少しなだらかな斜面となり、そしてまた次の滝で階段を降りる。これを3回繰り返してようやくなだからなtrailとの分岐までたどりついた。右足が曲がらないために左足でなんとか支えてきたものの、なにせ進む距離は1/2、ということは考えてみると倍の距離を歩いているようなものだ。これは誤算だった。なだらかな道であれば比較的通常のペースで歩けるのだが、階段では2歩で1段しか降りられないのだ。
そうこうしているうちに、体力は限界。しかも左膝も限界に近づいてきたのがわかる。そう、右膝と同じ状態になってきたのだ。両足曲がらなくなったら、どうしよう?歩けないなあと考えつつ、とにかく前に進む。
苦痛を乗り越えてようやくシャトルバス乗り場に着いたのは夜8時。結局往復約11時間もかかってしまった。これからさらに今日の宿にチェックインしなければならないんだから大変だ。
降りる道のり、下山できたら飲みたい飲み物があった。それはなにかというと、「コカ・コーラ」。コカ・コーラが腹いっぱいのみてーーーと思い続けてがんばって降りてきたのだ。なんでコカ・コーラなのかはわからないけど、コカ・コーラだったのだ。実際その後コカ・コーラを飲んだんだけど、炭酸がきつくてちょっと飲んでもう十分。一応定番のビールも買ったけど、バドワイザーはいけてないねー。やっぱ日本のビールがいいよ。でも一番なのはコカ・コーラ(笑)