のまのしわざ: オンラインゲーム、ネットワークコミュニケーションのビジネス構造(第3回)
今回が4回連載の最終回となります。
【第4回】
・サービス開発者の収益の目
サービス開発者にとって、大規模なオンラインゲーム、ネットワークコミュニケーションサービスビジネスは非常に難しい。進むべき方向性は2つある。
・戦略的アライアンス
大規模なインフラを構築する必要のある大規模サービスの場合、インフラ提供者とサービス開発者との間で、通常の顧客として契約をしているとは思えない。そこで出てくるのが「戦略的アライアンス」である。
戦略的アライアンスとは、通常はビジネスにならないところを、お互いの将来の利益のために、破格の値で契約することなどで、投資的な役割を果たす。今はオンラインゲームはどれくらいのユーザー規模になるか、正確なところはわからない。しかし今少ないユーザーといえども長期的に組めれば将来的に投資を回収できるはずだ、という打算で初年度は自腹覚悟でも契約する。これは信用と実績のあるサービス開発者、または大企業でのみ可能だ。
・抱え込み
もうひとつの方向性は、ビジネスを出来る限り抱え込む方法である。インフラ費用をキャッシュアウトとせず、ホスティングとサーバー、OSを出来る限り自社で調達する。
まずサーバーハードウェアにSunなど保守費用が発生するものを使わず、PCを使う。OSはSolarisやWindowsなどライセンス費用が発生するものではなく、Linuxか、自社開発のものを使う。今後、ハードウェアはPCよりも安いゲーム専用機を流用するなども考慮に入れることになるだろう。
そしてホスティングは自社またはグループ企業のデータセンターを使い、安価に、または無料で使えるように交渉する。
以上の方向性はBEPを押し下げる効果がある。元々BEPの設定が非常に難しい大規模サービスであれば、キャッシュアウトをなるべく抑えこんだ方がよい。またリスクも低減できる。
・まとめ
オンラインゲーム、ネットワークコミュニケーションをビジネスとして展開した場合の方向性について考察した。過剰なインフラ環境の整備によるBEP圧迫、最初から大規模なユーザー数の獲得を前提とした無理なBEPの設定、また、リフレッシュプランによるBEP引き上げなど、ビジネスを成立しにくくする要因が多い。戦略的アライアンスまたは抱え込みを行うことで、BEPを引き下げ、ビジネスとして成立させる方向へと持っていくことができる。
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・次回連載予告
オンラインゲームとチャットなどのネットワークコミュニケーションの違い、tele-communication論や、ユーザーからの視点についてを書く予定。
その前に今回の連載で漏れた、いくつかのポイントを散発的に補足したいと思います。