シンガポールは素晴らしい、国家がまとまっていて先進的でDXが進んでおり、未来への希望に満ち溢れている。なんどか旅行や出張、子どもの短期留学(サマーキャンプ)などで行ったシンガポールがなんとここにきてデストピアになっているという話を聞きました。まるで1984のようだと。
1984とは
オーソン・ウェルズの小説、そして映画化されたデストピアSFの代表作です。これまで未見だったので今回改めて映画、そして解説動画や解説ページを見てみました。1984の世界観は世界が3つの大国に別れて戦争をしており、核兵器を頻繁に使って一部地域は非居住区域になっているほど世界は荒廃しています。
そんな戦時下にあって強い国家を維持管理するため、BIG BROTHERを中心とした独裁国家は情報統制、歴史の改竄を行っており、個人の自由は著しく制限、もしくは皆無といっていい状況。日記をつけることすら許されないのは、国家が頻繁に歴史の改竄を行っている中にあり証拠となるのを防ぐ目的です。
主人公は国家組織に所属するエリートでありながらこの国家体制に疑問をもち、違法となる日記を購入、毎日ひそかにつけており、いつかはバレて投獄されることを覚悟しています。
BIG BROTHERの監視は「テレスクリーン」によって行われており、プライベートな住居であっても監視カメラかつ通信装置となっているテレスクリーンが常に動作し行動を把握します。結婚や出産もBIG BROTHERの管理下におかれ、自由にすることができません。
今のシンガポールの現状
COVID-19の蔓延を防ぐ目的でシンガポールは著しくプロテクティブとなり、出入国はもちろん数名以上のお食事会、会合なども制限されています。これに違反した日本人駐在員がバレ、次の日の0時までの即時国外退去、同席した人も次回出国したら入国させないと脅されています。
このバレた経緯はお手伝いさんによる密告。お手伝いさん=ハウスキーパーは出稼ぎが多く、ビザを発給してもらえないと困ります。しかし政府は密告を義務付け、密告しないとビザを発給しないということで発覚に至りました。なんというデストピア。
他にもCOVID-19のトラッキングアプリがあります。入国者は政府の発給するSIMカードで常にスマホを携帯し位置を把握されます。また住民はアプリのインストールは任意なものの、普及率が上がらないと行動制限を解除しないと圧力をかけており、事実上個人の位置を常に監視される状況になるのも時間の問題。
COVID-19の発症者の多くは港湾地区の肉体労働者たち。6人部屋に押し込められ、密な状態であったために一気に感染爆発しました。この港湾地区は完全に閉鎖、市内と行き来できないよう隔離。そしてその港湾地区の中に医療所やコンビニなど生活インフラを全部用意し、その中で暮らせるようにしています。
この対策に対し多くの住民は「シンガポール政府は素晴らしい!」と喝采しているそうなのですが、この姿がまさに1984のBIG BROTHERを連呼する市民とダブります。
他にもシンガポールが発行するクレジットカード。ほとんどの店がキャッシュレス対応でクレカを使うのですが、そうなると政府にお金の出入りもすべて監視されている状況。
なぜそうなったの?
もともとシンガポールは「明るい北朝鮮」と言われるほど、独裁色の強い管理国家だったのですが、昨年ライバルであった香港が完全に中国化したことで多くのビジネスマンが流入。事実上ライバル都市がいなくなり経済的に安定、過剰な自信を深めたところにこのCOVID-19のパンデミックがやってきました。
1984もそうですが、強大な敵がいる状況下において、強大な権力は暴走しがちです。
これはシンガポールに限らず、20世紀を振り返ると列強に対抗するため帝国化した日本や、ナチスドイツ、ソ連に中国共産党など右派、左派問わず戦時下にはそうなりがち。
密告とか言論の自由がないとか、21世紀なのかと耳を疑いますが、香港から思想・言論の自由がなくなり、米国では大統領選を巡って暴動がおきている状況なので、シンガポールがBIG BROTHER is watching you化しても不思議はないですね。
DXが進まない日本最高
で一方の日本はどうなのか?
思想・言論の自由はもちろん、移動の自由も保証されており、ついこないだまでGOTOトラベルで旅行が奨励されていたほど。「自粛を要請」という英訳できない曖昧な、法的強制力のない、罰則もないなんとなくなお願いベースで同調圧力で自粛している大人しい国民性。
マイナンバーを推進といいながらも給付金を振り込む口座も把握してないのはもちろん、健康履歴も学歴も自動車の違反歴も、紐づいてないから政府が個人の行動を把握するのは不可能。ええ、もちろん諸外国で推進しているIDは紐づけるのが当然なんですが、このていたらく。
しかしこのていたらくが今、国民の自由を保証しているのは事実。いやー本当に日本っていい国ですね~
ってシンガポールに移住してた人が言ってた。
はたして1年後、シンガポールは、日本はどうなっているのか。
COVID-19に勝利するものの、市民の自由はなく洗脳された1984のようになっているのか。
はたまたCOVID-19が蔓延して市民生活が崩壊しているのか。どちらもデストピアには違いないですが、どちらのデストピアがお好みですかね。