車線変更、苦手な方が世の中多いようです。特に初心者マークをつけていきなり環八や大阪環状線に放り込まれたら一生車線変更ができないかもしれません。そこで一味違う車線変更の仕方、コツをお届けします。
そもそも車線変更とは何か。
車線変更とは平行移動である。
車線変更とは斜めに進むといった解説があります。道路を主体として考えるとそうなりますが、実際には他車との関係性に他なりません。他車にとってみれば車線変更とは自動車が真横に平行移動してくることであり、相対的位置関係で考える必要があります。
平行移動を実現するためには他車との相対速度をゼロにしなければなりません。
もしこれが他車よりも遅い速度であればそれは並行移動ではなく、後続車にとっては後続車めがけて突っ込んでくるように見えるのです。具体的にいえば、相対速度が10km/h遅ければ2.8m/s、20km/h遅ければ5.6m/sなので、3秒かけて車線変更するとなると8.4m~16.8m(クルマ2~4台分)も近づいてくるんですよ。後続車にとっては恐怖です。
そこで最初に大事なこと。それは
自車と回りのクルマの相対速度、位置を正確に把握すること
です。
相対速度の把握とスピードコントロール
普通速度はスピードメーターを見ればいいのですが、車線変更の時は自車速度よりも回りのクルマを基準とし、他車よりも
・どれくらい遅いのか(速いのか)
を把握し、他車の車速と同じにしなければなりません。簡単にいうと、
交通の流れにのる
という作業です。時にはそれなりに力強い加速をする必要も出てくるでしょう。
それと同時に行うこと。
車間距離の把握
これは車線変更する先に空きスペースがあるかどうかを確認する作業です。そのためには車線変更先の2台のクルマの車間距離が十分広く、自分が入るスペース+安全な車間距離があるかどうかを見極めます。厳密にいえば、
(前走車)- (車間距離A)- (後続車)
が、自分が車線変更して間に入ることにより、
(前走車)- (車間距離B)- (自車) - (車間距離B)- (後続車)
となるため、後続車がブレーキ等の操作が不要である安全な車間距離Aは
車間距離A >= 車間距離B x 2 + 自車の全長
が必要です。
ゆとり車間距離0102運動の推進 - 埼玉県警察公式ホームページ前を走る車と十分な車間距離を保つことで、心にゆとりを持ち、視界も良好となって交通事故の防止につながるため、警察では2秒以上の車間距離を保つことを推奨しています。
安全な車間距離はおおよそ2秒分と言われているので60km/hであれば 33m分、自車の全長を5mとすると
車間距離 A = 33 m x 2 + 5m = 71m
です。環八や甲州街道で実際にこんなに離れていることはなく、現実的にはもっと短いですが、ここで重要なことは自車が入ることで全長+車間距離B分広がることです。もとからこの車間距離Aがあるところの真ん中には入れれば特に問題になりません。
しかしギチギチのところに「割り込み」したと見なされるとそりゃ後続車も怒ってクラクションを鳴らしたりと、ライトを点滅させたり、あおったりということもあり得ます。
この車間距離をいかに見極めるか、が実は車線変更のカギなのです。
車間距離は変動する
車間距離は実はゴム紐のように伸びたり縮んだりしています。停車しているとき車間距離が最小で、信号が青に変わり加速すると車間は広がり、巡航速度で安定的となり、逆に信号が赤となって停止するとなると段々と狭くなります。
ですから後続車に嫌がられない車線変更をするためには車間が狭くなる減速時よりも、広くなる加速時の方が狙い目です。
言いかえると車間がつまる減速時に無理に車線変更すると非常に嫌がられます。特にトラックなど大型車両は加減速を嫌う傾向にあり、しかもブレーキの効きが悪いのでトラックの前に出て来られるとトラブルの原因となるだけではなく、追突事故を誘発する危険もあります。
大型車はいずれにしても加速が悪いので、交通の流れが速くなると加速時は車間距離は開く傾向があるので、その時に大型車の前に出るのは有効な手です。
ウィンカーは3秒、3回が鉄則
交通法規どおりなのですが、これは鉄板です。
よくウィンカーを1回点滅するかしないかのうちに車線変更をし終わるクルマも多いですが、ここで推奨するのは、
ウィンカー3回点滅し終わるまでは動かない
です。交通法規通りですが、理由は2つあります。
・回りに自分が車線変更をする意思を明らかに伝えること
・その間に危険を感じたら車線変更を止めることができること
特に二つ目の「やっぱやーめた」は大事で、無理に車線変更してぶつかるよりか、千倍マシです。買い物でもそうで、返品できない買い物はリスクが高いのです。
回りのクルマの車種、運転者をよく見る
トラック、大型車にも関係するのですが、車線変更するときにどんなクルマが来ているか、そして運転者がどういう人かをよく観察しておくといいです。例えば赤信号のときに横に並んだクルマの前、もしくは後ろに車線変更しようと考えた時、横のクルマが携帯をいじっていたらどうでしょう?
最近は特に多いよそ見運転のほとんどは携帯、スマホ絡みです。ひどいのになると運転中もメールかLINEを打っているものも多く、危険きわまりなく、孫子危うきに近寄らず、です。
スマホをいじっているタイプはふんわりアクセルで加速もしないので、その前に出る方がしやすいですが、前方不注意なので早めに遠ざかる方が吉です。逆に後ろについた場合は車間をあけるなどして、突然の急ブレーキに備えましょう。
車両でいえば軽自動車やエコカーは加速しないので、同じく前に出る方がしやすいです。このためには軽自動車、エコカーよりも力強い加速ができること、が必須ですが。
その他運転者がくわえタバコだったり、サングラスをかけている、VIPカーなどいかにも柄の悪そう、外車、スポーツカーなど速そうなクルマの前へ出るのは避けた方がいいです。例え理想的な車線変更ができたとしても「目障り」という理由でトラブルの原因となります。また高速道路であれば4ドアセダン、クラウン、スカイライン、マークXなどは別の理由で避けましょう、覆面パトカーの可能性があります。
日頃から前後左右のクルマ、運転者がどんなタイプかをよく観察しておくことが重要です。
交通の流れを読む
いわゆる「予測運転」で、交通教則にも書いてあることです。前後左右のクルマを見ておくことが必要ですが、ここから先は上級編「何台前のクルマまで見通せるか?」です。
たいていの人はすぐ前のクルマしか見ていません。
そこで2台前、できれば3-4台前のクルマ、いやいや視界に入る限り遠くのクルマの動き、ブレーキランプ、ウインカーの光に注意を払うことで交通の流れを予測することが可能です。
(イメージ写真:直前のクルマだけではなく、数台前のクルマのサインを見逃さない)
ブレーキ、ウィンカーの光は交通の流れが悪く「遅くなる」ことのサインです。
ですのでその後数秒たって実際に遅くなり、車間距離が狭くなると車線変更をしにくくなります。車線変更をするのならこの数台先のクルマの動きを見て、交通の流れが悪くならないことを見極めてから車線変更した方がいいのです。
これは流れのいい車線を選んで走ったり、事故を避けるという意味でも重要な技術となります。そういう意味でトラックの直後をピッタリ走って視界を悪くするのは避けたいもの。
まとめ
・車線変更とは平行移動である
・車速を回りに合わせるスピードコントロール
・減速時よりも加速時の方が車間距離が空きやすい
・車線変更しても大丈夫なタイプを見極めるクルマ・運転者ウォッチ
・交通の流れを読む予測運転
です。初心者によくありがちなのは、
加速不良、車速不十分で後続車にブレーキを踏ませること。
ぶつけろとまではいいませんが、先行車にぶつけるような勢いで加速して同じ速度までひっぱりあげてから、ウィンカーを3回以上出し、それから車線移動を開始すればそうそう後続車が怒り狂うことはないはずです。もしそれでも怒らせるのであれば車間距離が不足しているところに無理やり割り込んでいるはずですし、さらに十分な車速、車間距離があいているのに怒っているのであればそれは相手が怒りっぽいタイプです。
車速、相対速度、車間距離は目測なので、どれくらいが十分な車間距離であるかは実地で慣れるしかありません。また地域によって車間距離は随分と異なります。
番外編:車線変更がしやすいクルマとは
実はスポーツカーのように加速が鋭いクルマがスピードコントロールをしやすく、車線変更がしやすいといっていいでしょう。直線的に加速し、車線移動時はゆっくり、これがポイント。たまに車線移動時も素早く動くスポーツカーがありますが、それはスポーツではなくリスク。回りのクルマ、運転者の反応速度は予想外に悪いもの。回りのレベルに合わせてウィンカーを十分出し、移動する協調性が問われます。
番外編:加速レーンがある理由
高速道路の合流路が加速レーンとなっているのは、この車線変更を強制的にさせているからに他なりません。ですから加速レーンを使い本線と同じ速度、100km/h前後まで加速する必要があります。ここをふんわりアクセルで60~70km/hまでしか加速しないまま合流すると本線のクルマが急ブレーキ、急ハンドルで事故の原因となります。メリハリのある運転が必要です。
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