ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第42話 警察 #mini4wd

前回までのあらすじ

流しのミニヨン・レーサー北川は工場からの脱走に成功した。しかし警察に殺人の容疑で逮捕された。

警察官A「お前がやったのは分かっているんだ、いい加減、吐け!」

殺人の容疑で逮捕された北川に厳しい取り調べが続いていた。

警察官A「いいか、被害者の警備員の額にな、お前がもっていたミニ四駆のフロントジェラルミンバンパーとダブルアルミローラーの跡がくっきり残っていたんだ。これ以上の証拠はないだろう、他にこの特殊な形状の凶器を作れる奴なんていないぞ。」

警察官は凶器とされる北川の作った殺人ミニ四駆を机の上に置いた。

北川「オレはやってない、それより川崎ファクトリーを調べてくれ、あそこに私はとらえられていたんだ。」

警察官A「川崎ファクトリーは登記されたれっきとした株式会社だ。しかも資本は川崎の財閥からも入っている、とてもクリーンなベンチャー会社なんだ。やましいところなんて一つもないんだよ。それに従業員に事情聴取したが全員喜んで働いていたぞ。いい加減、自分の罪を認めた方がいいぞ、反省した方が刑期も短くなる。」

北川「だから、オレは拉致されていたんだ、そこから逃げるのは当然の権利だろう! はっ!」

北川は何かに気付いたようだ。

そこに外で聞いていた警部が部屋に入ってきて、若い警察官と交代した。首を振りながら出る若い警察官。警部は椅子に座るとそっと北川にこう伝えてきた。

警部「北川正治。罪を認めて、早く楽になろうや。」

北川「これは罠だ。ダーク・ゴーストがオレをはめるために仕組んだことだ。」

警部「ダーク・ゴースト? なんだそれは。北川正治の頭の中にだけに存在する妄想ではないのか?」

北川「ダーク・ゴーストは実在する! 川崎ファクトリーは奴ら闇の組織の秘密工場だ。名うてのミニヨン・レーサーが囚われて強制労働させられている。奴らは最速のミニ四駆を作り、日本全国の賭けミニ四駆レースを開催してレーサーから金を巻き上げているんだ。さらに一般客にミニ四駆券を売って儲けている。その中心的存在が神山だ。国会議員ともつながっている。」

警部「北川正治、お前の作り話はもういい。ダーク・ゴーストという組織は存在しないし、お前は警備員を殺した、それだけのことだ。過ぎたことを言っても仕方がない、早く罪を償って改心したほうがいいぞ。」

警部は胸元から拳銃を出し、マイクロファイバークロスで拭き始めた。

警部「もしくはいますぐここで自殺をするか、だな。」

北川「き...貴様、何を言っている...ま、まさか!」

警部「北川は警備員を誤って殺してしまった。その良心の呵責に耐えきれず、警察官から拳銃を奪い、自殺した。まあそんなところでいいだろう。」

警部は綺麗に拭きとった拳銃を白い手袋をした右手で握りしめ、北川に向けた。

北川「貴様、ダーク・ゴーストの手先か!」

警部「北川正治、お前は知りすぎたんだ。お前だけではない、お前の取り巻きもな、消えてもらうぞ。」

北川「!」

北川はとっさに机の上のミニ四駆をとり、警部に投げつけた。

警部「イタッ!」

北川は拳銃を奪おうと警部に飛びかかり、二人はもんどりうって部屋中を転がった。倒れる椅子と机、机の上にあったスタンドが床に転がった。壁に叩きつけられた拍子に部屋の明かりが消え、二人をスタンドのライトが照らし出した。

その瞬間、ミニ四駆のモーターが静かに唸りをあげた。

シュイーーーーーーン

北川「はっ、危ない!」

瞬間的にスタンドの照らす明りから身を隠す北川。明りの中に残された警部にめがけ、殺人ミニ四駆が飛び込んできた。

警部「ギャーーーーーーーーー!」

警部の額にミニ四駆が突き刺さり、まるで噴水のように血がピューーーと吹き出た。そして警部は額に突き刺さったミニ四駆を残したまま、ピクリとも動かなくなった。

北川「まさか電源が入ったままとは、危なかった... しかしまずい、奴らは本気でオレを消す気だ。いやオレだけではない、ダーク・ゴーストを知るものすべてを...あいつらもヤバイ!」

北川は血相をかえ、取調室から飛び出ていった。

・・・

その頃警視庁。

サラが上長に呼び出されていた。

サラ「お呼びでしょうか。」

上長「ああ、実は君が懇意にしている北川のことだ。最近連絡は取っているのか?」

サラ「いいえ、連絡がつかなくって。私も困っていたんです。」

上長「君も知っているだろう、川崎の警備員殺人事件。あの容疑者として神奈川県警が北川正治を確保した。」

サラ「えっ、容疑者!? そんなバカな。」

上長「話は最後まできけ。その取り調べ中に警部を殺害、現在逃走中だ。君のところに連絡が来るかもしれない、その場合はすぐに居場所を突き止め、逮捕するんだ。いいな。」

サラ「なんですって! 何かの間違いでは...」

上長「間違い? 一人だけならまだしも、連続殺人となると話が違う。もはや殺人鬼といっていいだろう、聞いて驚くかもしれないが、凶器は彼自身が創りだした殺人ミニ四駆だ。鋭利な刃物が先端についており、北川の意思に従って相手の頭部を攻撃する。幸運なことにその凶器は押収されたが再び作りだすやもしれん。市民に危害を加える恐れもあるため、各捜査員には発砲を許可した。

サラ「嘘・・・北川さんが連続殺人だなんて...」

上長「君が北川に特別な感情を抱いていることは知っている。しかし北川はいまや連続殺人犯だ。君も警察官として、きちんと対処してくれ。いいな、以上だ。」

サラ「そんな...」

サラは全身から力が抜けていくのを感じた。あの北川さんが連続殺人鬼だなんて。しかもよりによって取り調べ中に警部を殺すなんて、信じられない。

よろよろしながらサラが部屋から出て行ったあと、上長は携帯電話を取り出した。

上長「ああ、私だ。サラをつけてくれ、いいな。」

若手捜査員に電話で指示を出し、そしてもう一度別の場所へ電話した。

上長「いつも大変お世話になっております。指示の通りに致しました。はい、はい、それはもう、分かっております。すべては皇帝の計画どおりに...」

(つづく)

この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。

賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。

ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。

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