映画スターシップ・トゥルーパーズを一気見。B級すぎて、逆に面白くなってしまった

ちょうどCATVでスターシップ・トゥルーパーズの1から3を連続放映、一度も見たことなかったのでちょっと見てみたら、これはもうひどい。本当にひどいw

まず1作目。ロバート・A・ハインラインの名作「宇宙の戦士」を映画化、という鳴りもの入りで作られたものの、なぜか肝心の機動歩兵(パワードスーツ)が出てきません。機動歩兵とはガンダムのモビルスーツのアイディアとなったもので、宇宙の戦士をSFたらしめる肝心な部分です。

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ちなみにガンダム製作時、ロボットヒーローアニメの企画に困っていたサンライズは何かいいアイディアない?とスタジオぬえに打診したところ紹介されたのがこの「宇宙の戦士」。ガンダムはそのデザインコンセプトをオマージュしてモビルスーツを作ったという経緯です。ただしガンダムという作品自体にはスタジオぬえの関与は限定的で、これはサンライズ側がスタジオぬえが関与しすぎると(ヤマトのように)SF、SFしてしまいそれを嫌ったという話です。

ただこれに対し、スタジオぬえは反発。特にサンライズがモノの管理がずさんで貸し出した「宇宙の戦士」を返却しなかったことに対して腹をたてたという逸話も(真偽は不明)。

ただスタジオぬえはその後SF的なガンダムの解釈をガンダム・センチュリーにて実現し、その中で美樹本晴彦(当時:良晴)が漫画を書いてました。その後スタジオぬえが深く関与したマクロスではハードにSF、SFして異星人とのファーストコンタクトものを描いたはずが、宇宙をまたにかけた三角関係、ラブコメになってしまいガンダム以上に軟弱なものになったのはなんの皮肉でしょうか。

なんてことを考えるほど、宇宙の戦士の挿絵の機動歩兵がガンキャノンそっくりなわけですが、このハリウッド映画、これが出て来ないんです。

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小説の中でもその描写に相当なページ数を割いていたのですが、まるまるっと削除。で、昆虫型異星人との全面戦争を普通の歩兵がやるんです、マシンガンとバズーカのみもって。

ええと、どんな玉砕でしょうか。

案の定、もうひどいもんです。英語的にもとてもシンプルで、

Follow me! (突撃!)

(しばらく戦闘状態...次々と昆虫に歩兵がやられていく)

Move! (撤退!)

この繰り返し。で上長がどんどんやられて、主人公が次々と昇進していくんですね。もうね、なんというか、お前らの知能、昆虫以下じゃないのかって感じ。またいい具合に体育会系というか、軍隊系なのですよ。上長の命令は絶対、

「電柱柱に上ってミーンミーンと鳴け!」

「イエッサーーー!」

(電柱柱に登って)「ミーンミーン」

というノリ。今はどうか知りませんけど、これ「セミ」といって体育会系の部ではよくあるエンターテインメントです。まあ上級生の下級生イジメですけどね。

昆虫は頭脳バグといって人間の脳みそを吸い取るのがでてきてまた新しい局面を迎えます。

昆虫は人間と同等以上の知能を持っている、という設定で、この頭脳バグを捕らえて研究することで戦いを有利に進めようというのです。この頭脳バグの捕獲に成功し、1作目は終わります。

1作目はあまりにその途方もない無駄死に多い突撃作戦にあきれたわけですが、それ以上の衝撃が2作目以降も続きます。

2作目の舞台はとある前線基地、昆虫に包囲されて持ち場が維持できず、数か月前に放棄された前線基地、チェスのルークの形をした場所へと逃げ込みます。この前線基地は電磁バリアがあり、電源さえ確保できれば安全です。

そのため2作目は1作目と趣が違い、籠城作戦となります。

安全に籠城できるとなると、一気にだれるのがさすがアメリカです。いきなり情事がはじまります、って情事といえば1作目もすぐ情事があったような、まあ死亡フラグでしたが。

しかし2作目の情事は実はホラーのはじまり、のっとり型の小型バグが人間の体に入り込みのっとってしまうという設定。もうそうなってからはエイリアンか、ゾンビものかという状況に。どんどんと体内に忍び込み増殖するバグの前に救援を求め、一人のみなんとか脱出。とても爽快感とは別のいやーんな描写にこれってSF? たんなるホラー映画かゾンビ映画でしょ、という状況。というかほんと、機動歩兵はどこいったの? ハインラインが泣いているよ!

そんな声にお応えしてかえってきましたよ、3作目。

3作目は1作目の主人公が帰ってきて、しかも今回は念願のパワードスーツ「マローダー」がでる!

 キタコレ!

と喜ぶのはまだ早い。物語はまたもや前線基地からはじまります。相も変わらず数で攻めてくるバグに、マシンガンで対応する歩兵たち。そんなローテクやっているから戦争が膠着状態になるんじゃないですかあ、と思っていたらまあ色々あって主人公が絞首刑に。えっ? ヒーローじゃなかったの?

なんでも軍規至上主義の硬直した組織を描くこともテーマなので、上官(といってももと友人)に反逆したために死刑になったのです。その死刑をこれまた同じ上官に助けられ、案内されたのが念願のパワードスーツ部隊。やったぁ!

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・・・なんだこりゃ!

もうこのおもちゃの方がまだ見れるほど、劇中は超かっこ悪い。しかも神経接続で操作するのでなぜか搭乗員7人(女性含む)が全員裸になったりと、えええーな展開。ヌードはいいけど、エロ要素なし。一人屈強な体型の男性がひとりタオルで前を隠しているとか、まあなんていうかギャグとしか思えません。

物語は総司令官とその一行が不時着した星、砂漠を歩くシーンへとうつります。もともと宗教が認められてないというか、神などいない、みたいな雰囲気だったところに、神がいるんじゃないか、いや神はいるよ、祈ろうみたいな雰囲気になってきて妙な感じ。

だんだんとバグにやられて残りは数名とかなってバグの親玉と総司令官が対峙するのですけど、案の定やられて残り2名女性が残るわけです。でこの2名、一人は神を信じない屈強な女戦士だったのに、最後はもうなすすべなく神に御祈りをささげるわけですよ。

そこへやってきたのが7機のマローダー。あの裸で乗る奴です。で、そのマローダーがどう活躍するかというと、なんだかよくわからん必殺技で敵を一掃・・・そして無事二人を救出してハッピーエンド・・・ってなにその投げやりな展開!

なんだかバカバカしくって、アメリカ人アホなんじゃないか、こんなB級な映画でいいのか? と思ったのですが、そもそもこれはナチスのプロパガンダ映画のパロディとのこと。

スターシップ・トゥルーパーズ - Wikipedia

監督曰くナチス・ドイツのプロパガンダ映画『意志の勝利』のパロディ映画である。

どうりでナチス・ドイツを彷彿とさせる軍服のデザイン、軍への志願を募るCMが必ず最初と最後に入る作りなど、反戦というか、軍を小馬鹿にしたような描写が多いです。

なのでそういうスタンスでみると実はこの1~3作は結構一貫して硬直した上層部と現場の対立、戦争を終わらせない、犠牲を強いる国家の歪などをそれなりに描いてます。とはいえ、まあ全体的にアホさ加減がただよっていて、見事に娯楽映画として成立しているという、面白み。

ただやっぱり全体的にはパワードスーツがないがしろにされ、最後の最後に出てきてあれじゃあねえだろう、という気持ちになるわけですが、やっぱこれはアメリカ人のベトナム戦争後遺症なんでしょうね。旗を立てるシーンは硫黄島、第二次世界大戦っぽいですが。

「宇宙の戦士」からパワードスーツのアイディアを取り出しガンダムにした日本と、パワードスーツを無視してB級エンターテインメントにしたアメリカ。

ちなみに製作はソニーピクチャーズ、その後スパイダーマンを製作したイメージワークスです。スターシップ・トルゥーパーズ製作時スタジオを見学しにいったことがあり、ラフスケッチやら特撮用の模型やら、3D CGやらをたくさんみせてもらいました。スタジオにはレンダリング用のマシン(たしかSGI)がたくさんならんでいて、ポストプロダクションまでやってから最後にフィルムに落とすとかいってました。ああ、懐かしかった。

ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス - Wikipedia