ソニー・マガジンズ「グランプリ特集」2007年11月号にて富士スピードウェイの特集が組まれているとの情報を得て、取り寄せてみました。
準備不足が招いた「23万人の怒り」サーキット「残酷」物語
富士スピードウェイが満を持して投入した「チケット&ライド方式」
しかし、園内の道路陥没というお粗末な事故などで、シャトルバス乗り場は
まさに修羅場と化した。土曜の夕方から日曜の最終バスまで完全密着した。
この記事は観客の視点にたった、まさに客観的な内容で事実を非常によく詳しく伝えています。記事の書き出しはこの言葉からはじまります。
かつて、これほどまでに観客から「笑顔」を奪ったグランプリがあっただろうか。 (中略) 23万人の観客にただただ苦痛を強いただけの週末となってしまった。
そして予選後のバス大混乱については、
まさに命の危険を感じた観客も数多くいたという。
と、快適とか不快とかいうレベルを通り越して、命の危機まで晒されたことをきちんと指摘してます。
そして決勝日。道路陥没が復旧したにもかかわらず、大渋滞。スタートに間に合わなかったのは85名と発表されているものの、
実際には、レース開始時にスタンドに間に合わず、エキゾーストノートを歩行者用通路で聞いた観客も多くいたはずだ。
と指摘。実際問題その数は100や200ではなく、数千のレベルでいたと思われます。それを「遅延証明書を持ってない」として認めない富士スピードウェイの態度をそっと糾弾しています。
そしてレース開始するや否や、またもや悲しいことが起こります。
レースがはじまるや否や、今度はシャトルバス乗り場を目指して帰り始める観客が増える。前日の悲劇を避けようと早めの行動をとったのだ。
レースを見に来たのに、レースをほとんど見ずに帰り始めなければいけない、そんなばかげた興行があるんでしょうか。でもあるんです、それが富士スピードウェイのF1日本グランプリです。
F1を見に来たはずが、レースをほとんど見ずして帰宅しなくてはならないとは。高いチケットを購入し、楽しみにきた観客は、本当に悔しかったにちがいない。
本当にこれほど悔しい思いをするなんて、思いませんでした。私の場合は決勝日はレース場に行くことすら断念せざるを得ない状況で、子供もいけないことを泣いて悲しんでました。しかし行くと泣いてもどうにもならない悲劇が待ち受けていたわけですから、もう致し方ありません。こんなやるせない気持ちは初めての経験です。
そして記事はこうまとめます。
結局、富士スピードウェイが導入した「チケット&ライド」方式は、まったく正常に機能しなかった。
そればかりか、もっとも罪深いのがこちらです。
鈴鹿サーキットでも、レース終了後は大混雑となる。しかし、クルマやバス、タクシー、最終手段としては最寄り駅まで徒歩で行く、という複数の選択肢がある。しかし、富士の場合、交通手段はシャトルバスと数少ないタクシーだけ。観客は嫌でもバスに乗らなくてはならない。
そしてのそのバスが来ないし、動かないのですから。さらに記事はこう断罪します。
今回の失敗は「1年目だから」で許されるものではない。20年の歴史がある鈴鹿から開催権を譲り受けたのだから、観客には鈴鹿以上のもてなしをしなくてはならなかったはずだ。
記事は最後にこの言葉で締めくくります。
来年、果たしてF1ファンは富士に帰ってくるのだろうか
「いや、二度と帰ってこない」という反語ですね。
記事はコンパクトにまとまっていて、まさに正鵠を射ています。問題点はいくつもありますが、まとめると以下です。
・チケット&ライド方式は失敗。原因は準備不足と手抜き
(未舗装・簡易舗装の1車線しかないバス通路、シミュレーション不足、現地視察なし、予行演習なし、交通整理要員30%カット)
・バス以外の選択肢が事実上ない。来ないバスを待つことを強要された
・時間を気にしてレースを楽しむことができなかった
レースの楽しみでいえば他にも横断幕禁止や、国歌斉唱時にエンジンかけるなどKYな状況だったわけですが、「レース場への往復する」というだけでこれだけの問題を起こした責任は重いです。
さて謝罪したからいいじゃないかという論調も世間にはあるようですが、その記者会見についてもこうぶったぎってます。
記者会見が行われたのはじつは19時から。まだ、シャトルバス乗り場には大勢の観客が何時間もバスを待っている時間だ。いかに、富士スピードウェイが観客のことを把握していないかがよくわかる。来年以降、富士は「観客視線」で運営してもらいたいものだ。
「トヨタと富士スピードウェイは誰のためにF1を開催したのか。観客を楽しませようという気持ちがまるで感じられない。謝罪会見もマスコミ向けで、観客に謝っているわけではない。こんなことでは誰も来年、富士には来ないだろう」
本当にそうなりそうです。