Get Wild Song Mafiaで振り返る、オレとゲワイの30年

TM NETWORKとの出会い

TM NETWORKとの出会いは妹の部屋からだった、おそらく1985年。

当時POP音楽にハマっていた妹はすでに小室哲哉サウンドに魅了されており、妹の部屋から流れてきたサウンドは新鮮そのものだった。

これなに?

(たぶん)childhood's endのカセットテープを借りて何度かきいて、それで自分もTM NETWORKというバンドを認知する。しかしビジュアルの最初の印象はあまり芳しくなく、その理由は当時TVKで放送されていたミュートマジャパンでPVがよく流れているのだが、そこでみた dragon the festivalや rainbow rainbowなどのチープな映像は奇抜すぎてどうにも笑えなかったからだ。

それでも バンパイヤハンターDの主題歌、your songをヘビロテしたりと好きになっていた。それが1986年初頭。そして妹はほどなくDX7を購入する。

Disc1-1 Get Wild

不朽の名曲 self controlが出ているものの、まだまだ知名度は低く、ビジュアル系バンドの域を出ていなかったTM NETWORK。一躍認知されたのは今でいうところの「アニソン」、シティハンターのエンディングとなった Get Wildからだ。よく考えるとバンパイヤハンターDもアニソンですけどね。

このGet Wildを収録したアルバムは、初のベストアルバム Gift for Fanks。当時まだCDは一般的ではなかったが、これを購入して当時かったtechnicsの初代携帯型CDプレイヤーでヘビロテしたものだった。

この頃はバブル時代へとまっしぐら、世間が学生も含めて舞い上がっていた時代。学生でもマイカーを持つのが当たり前、とにかく免許にマイカーにということで免許をとったのが1987年9月。

学生が金曜日夜になると集まり、1台のクルマで深夜ドライブにいく、というのが週末の決まりだった。まさに「アスファルトタイヤ切りつけ、暗闇走り抜ける」を地でいっていただけに、この歌詞は我々の行動様式を表現していた。ちなみにタイヤをアスファルトに切りつけるのであって、タイヤはゴム製です。

さらにドリフトが流行りはじめていたのもこのころ、土屋圭市がドリキン(ドリフトキング)を名乗り、箱根などドリフト族が集まり始めていてそれを見に行くのも楽しかった時代。

そのBGMにこのGift for Fanks/Get Wildがピッタリだった。

Disc1-2 Get Wild ("FANKS CRY-MAX" Version)

これはライブ音源、1987年の伝説のツアー、日本武道館のもの。残念ながら私はこのときはライブに行っていないが、その直後 humansystemのアルバムが出たあとの11月、横浜の神奈川県民ホールでのライブにいっている。

このとき先輩と後輩の女性を一緒に誘っていったが、先輩とは漫画家の西山優里子さんで、もうひとりの後輩とはその後つきあうこととなる。なおチケットの入手は、ファンクラブに入っていた妹経由であった。

Disc1-3 Get Wild '89

さらに時代は下り、1989年。景気はさらに過熱を極め、借金して土地を買うのが一番儲かる、借金しない奴はアホだ、という世間の風潮。それを理系学生として冷ややかにみて、いつかはこんなこと崩壊するよなあと思っていたが、その世間の風潮の影響で音楽もとにかく豪華にゴージャスに。PVも予算が増えて派手に。

そんな中Get Wild '89は DRESSという「装いも新たに」というコンセプトで出たアルバムに収録される。内容的にはライブバージョンに近い作りで、このころはライブのたびにアレンジが違うので、そのうちのひとつというイメージ。

Disc1-4 Get Wild ("CAROL TOUR FINAL CAMP FANKS!! '89 Version)

CAROLツアーも行っているが、正直あのミュージカル仕立ての演出はちょっと気に入ってなかった。しかしよく考えるとセットといい、端役といい、とにかくゴージャスだったのは印象的。見たのは横浜アリーナとかそういう場所だった気がする。

Disc1-5 Get Wild ("RHYTHM RED TMN TOUR" Version)

TMが突然リニューアル、TMNとなりロックへと路線変更、Fanksコンセプトを一旦捨ててしまう。

TM NETWORKというのは路線的にはファンタジーであり、その集大成がCAROLだったわけだが、時代はバブル絶頂の1990年。私のクルマもKP61スターレットから、当時大学生が憧れたS13 シルビアへチェンジ。

Disc1-6 Get Wild ("tour TMN EXPO ARENA FINAL" Version)

EXPOライブにいったが crazy for youがとにかく彼女に好評だったことだけ覚えている。ステージからサイン送るよ、だってさ。

Disc1-7 Get Wild (techno overdub mix)

TM NETWORKからTMNへリニューアルしたが、ベストアルバムやリミックスが増えていき、興味自体も失われ始めたころ。大学院を卒業、ソニーに就職。環境も大きく変わり、彼女とのすれ違いが増えてきた。

Disc1-8 Get Wild '89 ("TMN final live LAST GROOVE 5.18" Version)

新聞全面広告でTMN終了。その最終ライブがこのLAST GROOVE。ソニーでは従業員向けにこのチケット販売があり、もちろん2days 2枚申し込んだ。その2days、彼女と一緒にいったのだが、その2日目を最後に彼女と別れる。

TMNは終わるし、彼女とも別れるし、その年はアイルトン・セナも事故死しているし、会社の事業部も崩壊、古巣の藤沢に引っ越すなど大きな変化の年だった。

Disc1-9 Get Wild DECADE RUN

終了したTMNがTM NETWORKとして復活! 職場は再び五反田に戻り、二子玉で生活、毎週のようにジムカーナに励んでいたころ。

Disc1-10 Get Wild ("LIVE EPIC25" Version)

その後別れたはずの彼女とヨリが戻り結婚、子どもが出来た頃。仕事のストレス、家庭のストレスが重なり鬱になりそうだった。一番つらかったのはTMの全曲記念アルバム world heritageを買いたいといったら、「なに、そんなのにお金使うの? 買う意味ないじゃん」と言われたこと。TMがきっかけでつきあい始め、あんなに「ウツウツ(宇都宮隆)」いってたのに、ここまで豹変するのかと本当に悲しかった。それ以来妻とはTMの話をしていないし、もちろんライブも誘わない。

Disc2-1 Get Wild ("DOUBLE-DACADE "NETWORK"" Version)

Disc2-2 Get Wild ("DOUBLE-DACADE TOUR FINAL"NETWORK"" Version)

そんなわけで一緒にいく相手もいないし、チケットを入手する手段も特になく、情報に疎かったこともありこのころはTM NETWORKのライブには行けていない。

そのためこの音源は初見でとても興味深い。

Disc2-3 Get Wild ("REMASTER" Version)

TMロスが続いたが、REMASTERで再び復活、ライブに行きたかったがやはりいけずじまい。DVDで購入してみたが、驚いた。

なぜなら・・・TMなのにMCがあるのである。そしてMCで喋る喋る、あのころは「thank youと all rightしかいえなかった」と内情暴露。完全の楽屋である。これじゃコミックバンドに先祖返りだよ!

Disc2-4 Get Wild ("Incubation Period" Version)

とにかくもう一度ライブに行きたい、そんな希望を叶えてくれたのがこのIncubation Periodからである。まさに1994年のTMN終了から約20年ぶりのTM NETWORKライブ。感動したなあ。

20年の歳月はTMも、自分も加齢したことを感じさせる。またファン層もそのままスライド、客層も当時は8割女性だったが、今は半々ではないか。家庭があると女性の方がライブに来にくいのだろう、またソロでの参加も目立つ。

Disc2-5 Get Wild ("FINAL MISSION -START investigation-" Version)

Disc2-6 Get Wild 2014

この最終章のTM NETWORKは改めてTM NETWORKらしい、完全パッケージのショー形式。CAROLを彷彿とさせるミュージカル仕立てで大がかりな演出と、クールを装うTM NETWORKのギャップがギャグである。我々は昔これを「小芝居」と呼んでいたが、その小芝居復活を笑って迎えたものだ。

Disc2-7 Get Wild 2014 ("the beginning of the end" Version)

TK Soloから流れていくGet Wildは初見殺しである。特にここ最近はまったくイントロでは分からないほどアレンジが加えられているため、TK Soloだと思ったらイントロかよ! みたいな意外性が楽しい。特にこのバージョンはそれが顕著。もともとGet Wildはそういう位置づけのもので、ライブごとに違うアレンジだったのがよかったものだ。スーパーイントロドン、みたいな。

Disc2-8 Get Wild 2014 ("30th 1984~QUIT30" Version)

年に2回もTMがある、というかツアーをやっていることがすごいことで、TM NETWORKファンとしてはこれが見納めだからもう毎回おっかけるしかない。なにせウツが一度ガン治療をしているだけに、本当にいつ活動が終わるか分からないからだ。

Disc3-1 Get Wild 2014 ("QUIT30 HUGE DATA" Version)

これもみごとにTK Soloからの流れで9分を超えてはじめてジャジャジャジャ、というGet Wildという種明かしをしない。年々長くなるイントロにファンもだんだん食傷気味。

Disc3-2 Get Wild 2015 ーHUGET DATA-

Disc2-8と同じ音源だったことがあとで発覚。とはいえ切り出しが違い、最初の30秒が長くなっておりおいそれと同じと分からないのがGet Wildの罠。

Disc3-3 Get Wild 2015 ("30th FINAL" Version)

正真正銘、最後のライブバージョンのGet Wildである。そのため27分もの最長記録なのだが、最初の方は完全なるTK Soloで、しかも Self Controlは入っているし、come on everybodyだったりとGet Wildとしていいのかどうか。まあでもいいんだよね、このアレンジは大好物です。だってそれがTMライブの魅力なんだから。

しかしイントロだけでなくアウトローが長いのにはFanksもびっくりで「なげぇよー」という声があちこちから漏れてきた。確かにながい、切れが悪い。でもそこがいい。

こうしてみると、本当にゲットワイルドとともに歩んだ30年だったなあ。免許をとって30年間、ずっとアスファルトタイヤを切りつけて暗闇走り抜けてたよ。チープなスリルに身を任せ、明日に怯えていたよ。

まったく変わらない。進歩も進化もない、19歳と49歳。

ひとりでも傷ついた夢をとりもどすよ。