簡単にいうとTV版マクロスと映画版マクロスくらいの違い。
日本のアニメ業界は以前漫画原作があってアニメ化するときに、元の設定を生かしつつ独自解釈や映像演出によりかなり組み換えをした歴史がある。その最骨頂は押井守氏による「うる星やつら」であるが、評価が高かった一方、原作ファンや原作者との確執を生み出した。
その後はまるで漫画が絵コンテのように、まるっきりそれをなぞるアニメ化が増え、アニメならではの表現や演出はなかなかしにくくなった印象だ。
人気漫画を原作としたアニメ版「頭文字D」も同じスタイルであり、CGを使ったリアルなバトルとユーロビートをのせるという演出はあるものの、脚本・設定はまったく同じだった。ところがこの、台湾製作による実写映画版「頭文字D」はそんな古き良きアニメ化のようなスタイルをとっている。
以下に驚きの設定変更、脚本変更を記憶の限り書き留めたい。
・高橋啓介がいない
なんで削ったのが分からないけど、とにかくいない。いないから拓海がぶち抜くのは中里GT-Rになっている。
・池谷先輩がいない
赤城スピードスターのリーダーがいない。いないからなんとリーダーはイツキくん。
・イツキはGSオーナーのバカ息子
GSオーナーは藤原(父)の古くからの仲間というのは変わっていないが、イツキはそのバカ息子という設定に変更。S13シルビアに乗って、中里GT-Rの挑戦を受けて事故。事故するのは池谷先輩オマージュ。
・文太はアル中でDV
原作では渋いオッサンだった文太だが、酒におぼれ、機嫌が悪くなると拓海に暴力をふるうという設定に。そのため拓海が豆腐の配達でどんどんとスピードを出すようになり、あるとき豆腐をダメにしたときは大きな体罰を与え、背中中あざだらけに。
・GT-Rとのバトル
秋名スピードスターズのバトルの相手は啓介ではなく、GT-Rに変更された。クラッシュしたイツキは家のミニバンで出るというが、バカ息子が大事なGSオーナーはとうふ屋の86を出そうと画策。GSオーナーが文太をクラブに連れていき泥酔させ、バトルをしなければ支払いをしてもらうと脅す。結局拓海はなつきとのデートにいきたいのでバトルを受けるところは原作と同じ。
・拓海となつき
GT-Rに勝ちなつきと一緒に海へ。背中にバスタオルをかけて身体の体罰の痕を隠すという演出追加。それをみてなつきは「男らしいよ」と肯定。すると拓海は傷跡のひとつひとつを「いついつ、どんな状況でDVを受けたか」を喜々として解説。
・エンペラーの岩城がゲイ(っぽい)
バンダナを巻いているとゲイっぽくなるらしい。そしてイツキがS13のあとに乗り換えたトレノ(85?)ノーマルを後ろからつついたり、路上でとまってコースアウトさせたり、挑発したり。怒った拓海が運転を変わり追い越し、岩城はコースアウトクラッシュ。EG6の庄司などいくつかの設定が混ざっている。
・京一がデコトラで登場
エンペラーの京一がランエボ3でトランスポーターで登場するが、なんとそれがデコトラ。岩城のファッションといい、なんかずれている。頭のタオルは健在。
・普通にエンジンブロー
原作ではなつきの援助交際を知って自暴自棄となり京一にバトルを申し込み、エンジンブローしたが、映画では普通にバトルしてエンジンブロー、スピンもせずに停車。涼介にも慰められる。
エンジンブローさせた拓海をDV文太が殴ろうとするが、イツキやGSオーナーに止められる。
レース用エンジンに乗せ換えた86は復活、最初から後付けタコメーターを装着し、文太が模範走行し拓海に教える。えええ?
・最終バトルは京一、拓海、涼介の3台でスタート
京一、涼介、拓海の順序だったが、涼介は拓海に道を譲り、後ろから拓海の走りを観察。
京一は右コーナーが苦手、拓海、涼介が抜く。その後対向車が上に上がってきた無線連絡を無視し、スローダウンした2台を無理に追い越して京一は対向車を避けようとしてクラッシュ、下の道に転落。
転落してきた京一のランエボ3は大破、それを後方においやった拓海、涼介はバトルを続行。
・結末
涼介は拓海の運転をみていてふつうにインから抜く、痛恨のアンダーステアはなし。最後の2コーナーでタイヤがたれた涼介を拓海が抜き返すが、その解説が全部、キャーキャーいうギャラリー女を侍らせた文太とGSオーナー。
ゴール後文太とグルーピーは抱き合ったりと大盛り上がり。
・え、そこで援交発覚?
最終バトル以前にイツキがホテルからベンツにのったなつきが出てくることを拓海に報告、拓海と殴り合いの大喧嘩になっていた。なつきは「これを最後にしよう」とパパと別れるが、自宅前でまっていた拓海と鉢合わせ。拓海は去り、なつきは泣いておしまい。
自暴自棄となった拓海は涼介の誘いをうけ、新しいチーム(プロジェクトD)に入ることを電話する。
おしまい・・・
っておしまいかよ!!
2時間の尺に全部をてんこ盛りにした結果ですが、なかなか面白かったです。日本ではぜったいやらないだろう行動や言動は台湾文化が反映された結果かと。とくに大きいのは文太のDVですかね。あと相手を挑発するのに尻を出すとか。
原作史上主義でなく、柔軟に楽しむことをオススメします。