これはまるでニュータイプだ! F54 MINI Clubman Cooper S 8ATの試乗

8速AT!? そうです、クラブマンにはついに8速AT搭載となりました。

ということで、今回は新型MINI Clubman(ミニ・クラブマン)を旧型MINI Clubmanオーナーの私が試乗、インプレッションです。

ウェルカムな雰囲気と上質なインテリア

旧型との大きな違いはクラブドアが廃止され、普通の後部ドアがついて4ドア化されたこと。リアハッチの観音開きは健在。

ライト系は各所にLEDが使われ、こんなウエルカムライト(MINIロゴ・プロジェクション、セットオプション)も。

「クラブマン」という新型車(ニュータイプ)

試乗車はF54 MINI Clubman Cooper S 8速AT。3ドアは6速ATだけにその違いはどこにあるか、ということを主眼に走りだしたのですが、そもそも論が。ようはですね、まったく違う車だったのです。

まず、通常のMINI 3ドアHBと違うんですね、ボディの大きさ、重さ、ホイールベース、剛性、サスペンション、タイヤ・ホイールのすべてが。だから同じエンジンを積んでいたとしても、乗り味はまったく別モノ。比較してどうこう、ではなく、もう完全に新型車。R55 MINI Clubmanの後継のようなフリしてますけど、姿かたちは似ていても、実はコンポーネントは何一つ同じものはないという、新設計。ニュータイプ。

3HBと5HBはここまで違うことはなく、ドアがサッシレス、サッシあり、リアサスペンションの硬さが異なる程度で雰囲気は似ていました。しかしClubmanは違うんです、でもMINIの味はそのまま。間違いなく、シューティングブレーク。

CVT化する8速AT

ATモードでは今何速に入っているか、まったく分かりません。2000回転でパンパンとシフトアップしていて、そのショックもほぼ皆無に等しいので、1500回転前後でクルーズ。この結果、燃費にも寄与します。

DSモードに切り替え、アクティブにシフトを前後させればマニュアルモードで操作可能なのですが、トルクバンドがワイドなので、正直DSモードでアクセルをどんと床まで踏み込み、あとは全部MINIがやってくれるので、そっちでいいか、という気持ちになりました。積極的にシフトするのは6速ATの方が向いているかなあ。

おそらく8速ATを採用したのはよりワイドなオーバーオールレシオにして、高速燃費を稼ごうという目的ではないかと。エンジンもマッチングとしてはディーゼルの方があいそうで、将来ディーゼルエンジンが投入されるとの噂。

参考⇒ 高容量FF8速オートマチックトランスミッション(AWF8F35)|代表製品紹介:AT|駆動系|製品事業|アイシン・エィ・ダブリュ株式会社

ハンドルが軽いけど、ナイスなハンドリング

シフトの根元にあるリング、ドライビング・モードは3種類、SPORT、MID、GREENとあり、SPORTではステアリングが重くなり、アクセルのレスポンスが過敏となります。MID、GREENではステアリングが軽く、アクセルはより燃費指向へ。GREENでは鈍感になりアクセルを踏んでも反応せず、簡単にいうと、日本車みたいなフィール。

つまりシフトの方はシフトスケジュールおよびマニュアルモードへの変更、その根元にあるリングの方でDBWとパワステの制御変更となります。

ちょっと気になったのはステアリング。これまでMINIといえば、これ奥さんに運転させるの、重くない? というほど重かったものですが、今回のは相当軽いです。GREENではずっしり感は皆無、ちょろちょろと動き、タイヤのゴムのネジレがなかなか伝わってこないセットアップ。個人的には重い方がいいので、SPORTに固定することでしょう。

この軽々しさはどうも、車庫入れ機能「パーキングアシスト」を追加したことと関連しそう。

とはいえ、ハンドリングが悪いかというと、高速コーナーでは抜群の吸いつき感を見せます。ステアを入れて、アクセルをONにすると、綺麗にロールしてコーナーの脱出方向へグイグイとフロントが引っ張りだしてくれる、FFの良さを感じることができました。くう、これはたまらないです。

ライバル車、購買層は誰?

クルマのできがいいことはよく分かりましたが、気になるのはそのサイズ。

全長 4270mm x 全幅1800mm x 全高1470mm、車両重量1480kg。

完全に1クラス上のクルマとなり、ライバル車がウジャウジャいるレッドオーシャンの市場です。直接的には Audi A3という話で、確かに大きさ、価格帯的にはかなりバッティングしています。またサイズは大きいものの、ベンツのシューティングブレークもよく比較検討されているとのこと。

ただラグジュアリーカーではどうしても奥さまが運転することを想定するため「ピンボケ」したような曖昧な乗り味が残るのですが、MINIはスポーティさに絶対の自信をもっており、響く人には響くでしょう。

MINIディーラーにとっても新しいジャンル、立ち位置のクルマになるので、どういった人が買うか、興味をもつのかまだ分からない、手探りといったところのようでした。

使い勝手アップ

R55クラブマンでは左にしかついてないトランクライトは左右の2ヶ所となり、片方が荷物にふさがれても真っ暗で見えない、ということにはなりません。

後部座席は4:2:4の3分割式。残念なのは水平にならないところか。

細かいところでは。

フロントバンパーと、ホイールアーチにホイールハウスのエアを効果的に吸い出すためのルーバーが空いており、機能させているとのこと。どうも騒音や空気抵抗の低減といった効果があるそうです。少しは燃費にも効くでしょう。

ちょっと大きく生まれ変わったClubman。

重くなっても燃費は向上、上質かつ上品な作りと走りをしつつも、スポーツ性はとんがっているという、まさにMINIらしい1台に仕上がっていると感じました。気になっている方は、ぜひご試乗を。

(試乗:MINI八王子)


追記

初出時、誤ってF55と表記しましたが正しくはF54となります(F55は5ドア)。

型番から考えてもやっぱり新型車ですね。