ロボット掃除機、と呼ばれるものが世に出てから幾星霜。周囲のアーリーアダプタたちが絶賛、競うようにして購入しているのを横目で眺めながら、冷めている自分がいた。
なぜか。
部屋が散らかっているからだろうか。
いや、それは片付ければいい。
では片付いたら欲しいと思うのだろうか。
いや、欲しくない。
なぜか?
それは自動的に動く自走式ロボットかもしれないが、掃除機としての機能が入っているとは到底思えないほど小さく薄かったからだ。
薄すぎる
薄くした理由は分かる、ソファやベッドの下に入りこむためだ。
しかしあの薄さは掃除機の「ヘッド」の薄さであり、「本体」の薄さとは思えない。掃除機本体、キャニスター型でもハンディ型でもいいが、あんなに薄いものはない。掃除機として重要な吸引力、そして集塵力。それがまずあの体積と薄さで実現しているとは到底信じられない。
つまり、あれは掃除機ではない、単なる移動するモップである。
回転ブラシは埃を巻き上げる
その次に疑問なのが回転ブラシだ。
回転ブラシは回りの埃を吸い込み口にもってくるため、と説明されているが果たして機能するのだろうか?
否。そんなはずはない。
掃除で「ほうき」を使ったことがあるだろうか? ほうきを使って掃除する場合、ブラシは地面から放してはいけない。必ず集めたあと、ピタッと停止させて、そっと逆方向にブラシを戻す。そうしないとブラシのバネの力で埃を巻き上げてしまい、せき込むことになる。
小学校のときの掃除が埃をまきあげ、せき込みながらしてしまう理由はこれだ。
枯葉のような物理的に大きいもので、ほうきで跳ね飛ばすのはまだ分かるが、ちいさなチリ、埃ではこれはやってはいけない。むしろクイックルワイパーのような、紙モップで集めた方が呼吸にはいいだろう。
回転ブラシはこのやってはいけない、ブラシの反発力を使って埃を巻き上げることをやっている。ブラシは回転させちゃダメなのだ、やるならクランクを使って往復運動でだ。
掃除をしている風
総合するとこれまでのロボット掃除機は、
・吸わない
・埃を巻き上げる
だけであり、埃を移動させ、空気中にばらまいてその一瞬だけ床が綺麗になっているように見えるに過ぎない。数分もすれば空気中に浮かんだ埃が再び床に降り積もり、元の木阿弥になることは自明だ。
だからロボット掃除機と呼ばれるものに対して、冷ややかだったのだ。
これが本物のロボット掃除機
その点今回発売される dyson 360eyeは明快な答えを出してくれた。それはdysonのハンディクリーナーが持つ性能をそのままに、クローラーを搭載したからだ。簡単にいえば、ハンディクリーナーが自分で走っていると思えばいいだろう。
回転をすることや段差を乗り越えること、ブラシ幅からそのサイズは決まり、円筒形となった。
好感がもてるのは、
・回転ブラシを装備しないこと(埃をまきあげない)
・本体幅とブラシ幅がほぼ同一(吸い込み残しがない)
ことである。
緑(ブラシ幅)と赤(本体幅)のラインの差をみれば一目瞭然、デッドゾーンが dyson 360eyeの場合ほとんどないことが分かる。
このデッドゾーンを消すために回転ブラシを装備したと考えられるが、すでに指摘したように埃を巻きあげるだけで、効果的とはいえないどころか、呼吸器にダメージを与える。特にハイハイをするような小さなお子さんがいるところでは致命的な構造欠陥である。
巻き上げた埃
論より証拠。3機種で動作させた場合の比較が分かりやすい。
(動画: iPodStyleさん提供)
走行前の埃のない、桟の部分。この脇を走行したロボット掃除機には回転ブラシが左右に2本装備されていた。
走行後、桟には埃がたまった。
つまり埃を撒き散らしていただけに過ぎない。
回転ブラシ、右側一本の他機種も同様。拭きとれていないこと、そして撒き散らしていることが明白である。
絨毯の上も問題だ。ほとんど埃を吸えていないことが分かる。
dyson 360eyeの吸引力
その点、dyson 360eyeの軌跡は見事だ。
まるで新雪を除雪するラッセル車のように、通った幅だけが綺麗になり、それ以外はそのままである。
排気の向き
もうひとつ、大事なポイントがある。それは排気の問題だ。
掃除機は吸気し、ゴミを取り除いたのちに空気を排気する。物理法則からいえば、吸入した空気と同じ量の空気を排出することになる。ではこの排気はどこからでるのだろうか?
ロボット掃除機はほぼどれも後ろから出すことになる。
ところが吸引できてない、つまり走った後のところに埃が残っていたらどうなるだろうか。排気でやはり埃を巻き上げることになるのだ。
この点、dyson 360eyeの強力な吸引力はアドバンテージである。排気は綺麗になった床面に並行に出るため、埃を巻きあげることが少ないからだ。
以前、子供が生まれて購入したキャニスター型掃除機はこの部分にまでこだわって選んだ。HEPAフィルターを含む3重フィルター構造で、排気は後方ではなく、上方排気であった。特にキャニスター型掃除機では、キャニスター本体がまだ埃まみれの床面におかれていることが多いため、この排気の向きが上方というのは大きなメリットだ。また空気清浄機なみのフィルターにより、結果的に空気清浄機をかけたのと同じだ。
ちなみにこの掃除機はスウェーデン製、寒い冬の時期、掃除機をかける時も窓をあけて換気ができないためにこのような構造になっている。
というように、排気の向きや埃を巻き上げないことはとても重要な指針だ。
アトピー性皮膚炎、弱い気管支
ここまで掃除機にうるさいのにはワケがある。それは自分自身がハウスダストによるアトピー性皮膚炎、そして気管支が弱く、咳が長引いてしまうからだ。また子供に遺伝しているとすると、アトピーになる確率も高いし、確率以前にハウスダストが多いのはトラブルの元になるので、いずれにしても避けたい。
ロボットだろうが、ハンディだろうが、キャニスター型だろうが、掃除機である以上、きちんと集塵されること、そして排気で埃を巻き上げないことは必須条件、さらに排気がクリーンになれば最高である。
dyson 360eyeは360度カメラによる自車位置特定といった最先端技術を採用しているが、それ以前に掃除機としての必要条件をきっちり満たしていることに好感がもてる。
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