ジュール・ビアンキの事故で再び考えたいF1とマシンの安全性

F1で不幸な事故が起きました。

⇒ F1 - Suzuka : La terrible vidéo de l'accident de Jules Bianchi - Vidéo Dailymotion

詳細は他に譲るとして、ビアンキのF1マシンがクレーン車に突っ込むという事態で頭部損傷、今も意識不明の重体です。

頭部損傷といえば、過去にはマッサの事故や、ジョン・サーティースの息子、ヘンリー・サーティースの事故死が思い出されます。

ヘンリー・サーティース(ジョン・サーティースの息子)、F2で事故死 : F1通信

ウェストフィールド・ベンドの出口でジャック・クラークが大クラッシュを喫し、そのマシンから飛んだホイールがサーティースを襲った。5、6人のドライバーがそのアクシデントを切り抜けたが、ホイールが目の前に飛んできたサーティースは避けることができなかった。 このホイールは彼のヘルメットの右側を直撃し、彼は意識を失った。その後彼はコースアウトしてバリアに衝突した。彼のヘルメットには明らかにタイヤ跡が残っており、ホイールはマシンのエアボックスにもぶつかった。

09年ハンガリー予選 マッサ事故 分析考察 by tw

2009年 7月25日(土)、F1第10戦ハンガリーGP予選セカンド・ステージにて、フェラーリのフェリペ・マッサ選手が走行中、 他車のパーツがマッサのヘルメットに衝突し、マッサは衝撃と頭部の損傷から意識をほぼ失い、 ストレート・エンドのコーナーを直進し、高速で、正面に近い角度でタイヤバリヤ(タイヤ整列シート付き)へ深く衝突した。

ビアンキの事故について、F1レースの天候に対しての開催の可否や開催時間の調整、セーフィティーカー導入のタイミングなど批判が集まっています。

ビアンキの事故で浮上した疑問へのコメント: スーティル ラウダ ハミルトン マッサ : F1通信

ラウダは「セイフティ・カーが出動し、終盤はほぼ安全なレースが行われた」と述べ、彼は、ビアンキのアクシデントは、不運な出来事が組み合わさっただけでなく、自動車レーシングが危険なスポーツであることを思い出させたと語った。 「我々は何も起きないことに慣れていたので、急にみんなが驚いている」

これに対し、自身がひどい事故に遭遇し、奇跡の復活をとげたニキ・ラウダはレースの本質は危険と隣り合わせであることを改めて指摘しています。

一方でそもそもF1マシンの構造上の問題に踏みこんでいるものは少ないです。数年前ですが、こんなコラムが童夢・林氏によって書かれています。

連載コラム 第2の提言 童夢 林みのる モータースポーツ GAZOO Racing

だんだん八つ当たり的になっていくが、だいたい、F1マシンというもの自体が気に食わない。究極のレーシング・マシンの割には、何で空気抵抗の塊のようなタイヤ丸出しなの?タイヤ噛み合ったら飛んでいくよ、とか、コースなんかゴミだらけなのに、今どき、ドライバーの頭、吹きさらしで走らせて良いの?とか、そもそもオープンホイールって自動車レースの黎明期にフェンダー外して走った名残で、単なるレトロ・ファッションじゃないの?とか、いちゃもんはいくらでも付けられるが、何といっても、最早、形状的に自動車としての美しさを失い、危険な香りを売り物にしただけの野蛮な乗り物だ。

(中略)

そうこう言っているうちに、ジョン・サーティズの息子が亡くなり、フェリペ・マッサが重傷を負った。彼らが自分または友人の息子だったら、貴方もきっとフォーミュラが大嫌いになっているだろうよ。


F1ファンはドライバーを死ぬのを見たいわけではなく、レースを楽しみたいだけです。むしろ事故はもう見たくない。このへんは映画「ラッシュ」でも描かれていますし、死亡事故が多発していた当時よりも現代F1は圧倒的に安全性にふっています。たび重なるレギュレーション変更も、安全に配慮したものです。

キャノピーの導入も検討され、実験でその有用性も確認されましたが、未だ導入されずじまい。

タイヤ・ホイールがぶつかっても大丈夫なキャノピーがもしビアンキのF1についていたら...と思わずにはいられませんでした。

ビアンキの回復を心からお祈りします。


【追記】

F1界でも再びキャノピーの導入が議論されています。

⇒ ウィリアムズのパフォーマンス責任者を務めるロブ・スメドレーは、技術的にF1にクローズドコックピットを導入することは容易であり、ジュール・ビアンキの事故を受けて決断を下すべきだと述べた。