前回までのあらすじ流しのミニヨン・レーサー北川はサラに救出され、埠頭で逃げる算段を考えていた。一方ユキは神山の愛人だったことをあかし、衝撃が走った。
サラが指差した先にあったのは、波止場にとめてあったモーターボートであった。
浜田「なるほど、船なら検問もないですな!」
サラ「そうよ、この闇に乗じて東京湾を逃げるわ。みんな乗って。」
ユキ「なによ偉そうに!」
サラ「今はそんなこと言っている暇はないわ。北川さんもそうだけど、貴方達の命も保証できないのよ。」
ユキはしぶしぶサラの言うとおりにし、全員モーターボートに乗り込んだ。サラは夜の海を静かに走りだした。
・・・
上長「何、まだ見つからないだと!」
捜査員「すみません。埠頭付近に車が乗り捨ててあり、湾岸署に応援を要請、付近を捜索中なのですが残念ながら。」
上長「相手は凶悪犯だ、発砲も許可してある、なんとしてでも見つけ出すんだ、いいな!」
捜査員「はい!」
捜査員は部屋を出て行った。上長は電話を取り出し、あるところに電話をかけた。
上長「すみません、まだ見つかっていません。は、はっ、分かっております。見つけ次第処分致しますので、ご安心を。すべては皇帝の計画のままに...」
・・・
一方日本ミニ四駆振興会の会長に就任した神山は、高層ビルのの一角にある新しい事務所にきていた。
神山「そうか、北川は逃げたか、クックック、余興はな、楽しまないとな。せいぜい逃げるがいい、しかしこの法治国家日本、どこまで逃げるのかな、北川...」」
神山はガラスから眼下に広がる夜景を見降ろした。
神山「これで日本が変わる、ミニ四駆が変わる...ミニ四駆は、日本を、世界を制するのだ。輝かしい未来のために、生贄は必要だからな。レッド・ホイールのレッドは血の色、血を欲しているのだよ、クックック。」
・・・
サラが運転していたボートが東京湾の中央で急に止まった。
浜田「サラさん、どうしたんですかい?」
サラ「北川さん、あなたを逮捕するわ。」
北川「...」
学生「えっ、何をいってるんですか、サラさん、気でも狂ったんですか?」
サラ「北川正治は2人を殺した殺人犯よ。射殺命令もでている。私は警察官、任務を遂行しなければならない。」
突然豹変したサラに回りが動揺している。
浜田「サラさん、いきなりどうしたんですか? 悪い冗談はやめて下さいよ、さっきまで逃げようっていってたじゃないっすか。」
サラ「...そう、さっきまではね。でも気が変わったわ。北川正治を逮捕する、抵抗したら射殺するわ。」
北川「...オレはやってない。捕まる道理はない。」
サラ「何をいまさら、殺人ミニ四駆を作ったといってたじゃないの。」
北川「ああ、確かに作った。でもそれは職人が包丁を作ったのと同じだ。包丁を作っただけでは罪に問われない。殺人はその刃物を使った犯人の罪だ。警官が死んだのは奴が刃物の使い方を誤っただけだ。オレに責任はない。」
サラ「そんな言い訳、聞きたくないわ。そうよ、あなたはいつでもそうだった。自分勝手で言い訳ばかり。いつも私の期待を裏切って、迷惑ばかりかけてその挙句がこれよ。」
ユキ「わたしのジョージに何をいうのよ、この年増女!」
サラ「うるさいわね、あなたも逮捕するわよ。」
ユキが内ポケットから拳銃を取り出した。驚く北川。
北川「やめろ、ユキには関係ない。」
サラ「そうやってあなたは、すぐに他の人ばかりかばって、私のことなんてなんにも考えてないじゃない、考えたことないじゃない!」
涙声になっているサラ。感情が高ぶって、暴走がもう止まらない。
サラ「あなたなんて、あなたなんて、もう私の前から消えて!」
バーーーン!
とどろく銃声。腹を抑える北川。その手の感触はぬるっとしていて、激痛に耐えながら手を持ち上げみる北川。
北川「な、なんじゃこりゃあ...」
手はどす黒い液体にまみれていた。ゆっくりと黒い影がモーターボートの上から海面に落ち、水しぶきがあがった。そして北川の姿が見えなくなった。
ユキ「ジョージ、ジョージ!」
北川はサラに撃たれ、そのままボートから転落したのだった。波間には赤い鮮血が漂っているが、北川の姿は見えなくなっていた。
サラ「・・・そうよ、私の手で北川さんを楽にしてあげたのよ。フフフ、アハハ」
呆然とする浜田と学生、泣き崩れるユキ。サラの乾いた笑い声だけがボートのFRPボディに響いた。
(つづく)
この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。
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