前回までのあらすじ流しのミニヨン・レーサー北川は殺人犯として追われていた。危険を知らせるため浜田たちに会い、絶体絶命のピンチをサラに救出された。
ポワンポワンポワーーーーン
闇夜の海を照らす灯台の明かり、停泊した船から汽笛が聞こえてくる。ここはお台場の埠頭、サラの運転するクルマは追手を振り切り、海まできてきた。サラは警察無線を傍受している。
サラ「...まだ大丈夫のようね。でももう各高速道路、主要道路は検問が敷かれているわ。クルマでの逃走はここが限界ね。」
北川「すまない、オレのために...」
サラ「だって、あなた、やってないんでしょ。殺人なんて...」
北川「確かにオレは殺傷能力のあるミニ四駆を作った。しかしそれで警備員は殺していない。...警官は、あれは不幸な事故だった。」
サラ「不幸なって...本当に警官がミニ四駆で死んだの?」
北川「ああ、目の前でな。しかしあれは正当防衛だ、もう少しで射殺されるところだった。奴ら、本気でオレを殺そうとしていたんだ。」
サラ「警察組織まで動かすなんて...ダーク・ゴーストはどこまで巨大化したの!」
北川「立場は逆転した、もうオレたちがアングラだ。」
サラ「残念だけど、その通りね。そして逃亡を手助けした私たちも罪に問われるわ。」
北川「すまない...」
北川とサラの間の空気が淀んだ。沈黙が二人を包み込んでいる。
浜田と学生、ユキは少し離れて岸壁に腰掛けていた。
浜田「これからどうする?」
学生「パパがミニ四駆振興会作ったんだったら、これからもっとミニ四駆が普及するんでしょ。それを手伝いたいなあ」
普段明るいユキだが、表情は硬い。
ユキ「...あんた、相変わらずおめでたいわね。神山はね、あんたのことを捨てたの。あいつはミニ四駆のことしか興味がないわ、女も、子供も利用できるものは利用して、不要になったらポイ捨てよ。」
学生「なんでそんな言い方するんですか! パパのこと、知らないくせに」
ユキ「よく知っているわ、だってあの人、昔のダーリンだったっちゃ。」
学生・浜田「えっ!」
衝撃の過去がユキの口から明かされ、浜田、学生ともに唖然、呆然としている。
浜田「だ、ダーリンって? つきあってたってこと?」
学生「昔って、ユキさんいつのことですか?」
ユキ「レッド・ホイールの頃よ。私はあの人の愛人だったのよ。女はね、特に若い頃はね、力をもっている人が好きなの。私もそうだったわ...だから神山のことを、、、でもあの人は私のことを愛してなかった...単なる都合のいい女、そしてジョージが現れたの。ジョージは他の誰とも違ったわ。目線の先はいつも遠くを見つめて、現世にあまり興味がない風だった。そんなジョージに私は惹かれていったけど、まったく振り向いてもらえなかった。だからレースで勝ったときの条件で婚約者にしてもらったっちゃ。」
浜田「むちゃくちゃ強引でんがな」
ユキ「そうよ、強引よ。でも神山はそんな私に何も言わなかった、そう彼は私に興味なんてなかったのよ。所詮は使い捨ての部品、ピニオンギアみたいなものだったっちゃ。」
浜田「はあ、そりゃキツイですな」
ユキ「でもジョージも変わっていったわ、最初の頃の純粋な眼差しは消えて、勝負事にカツカツになりすぎて孤立していったのよ。自滅って言った方がいいかな・・・そして私の目の前から消えていった。こないだ再会したときは最初会った時のジョージの目だったの。だから私本当に嬉しくって...ってあの年増女、いつまで私のジョージにベタベタしてんのよ! キーーーーーッ!」
接近して話す北川とサラを見て、ふたたびユキの嫉妬心に火がついた。
浜田「まあまあ、ユキさん、今は逃げること考えないと、やばいっすよ。口封じに我々も殺されるかもしれないって言われているし。」
ユキ「そうね、神山は目的のために手段を選ばないから...」
学生「そんな、パパは、そんな人じゃない。昔は優しいパパだったのに...」
ユキ「でも今はそうじゃないわ。あなたも一緒に始末されるっちゃ。」
学生「...」
サラが3人に近づいてきた。
サラ「ここにいてはじきに捕まるわ。ここから逃げるわよ。」
浜田「どこへ逃げるんですかい? クルマはもうダメでっしゃろ」
サラ「そうよ、だからアレを使うわ。」
そしてサラが指差した先にあったものとは...
(つづく)
この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。
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