ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第41話 脱走 #mini4wd

前回までのあらすじ

流しのミニヨン・レーサー北川が作り上げたのは殺人ミニ四駆だった。それを駆り、工場の出口に向かう北川。

警備員A「う、うわぁぁぁあ!!!」

バサッ、、、警備員は倒れた。

警備員B「な、なんだこれは! うぎゃぁぁぁ!」

次から次へと倒れる警備員たち。暗い廊下に鳴り響くモーター音、しかしその姿はとらえられない。

コツーン、コツーン・・・

ゆっくりと靴音を立てながら歩く北川。

北川「フフフ、圧倒的じゃないか、我がミニ四駆は...」

懐中電灯で制御する殺人ミニ四駆はまるで飼いならされた猟犬のように北川には従順で、そして敵には牙をむいた。

警備員を全員倒し、北川はゆっくりと最後のゲートを開けた。工場のそとには新月の漆黒の夜が広がっていた。

・・・

幹部たちがSkypeで緊急連絡をとりあっていた。

幹部A「な、なんだと! 北川が脱走した?」

幹部B「脱走をゆるすなど、言語道断。警備は何をやっていたんだ!」

幹部C「報告によると、北川が創りだしたミニ四駆、あれが次々と警備員を襲ったらしい。その猟奇ぶりはまさに殺人ミニ四駆と呼んでもいいだろう...」

幹部A「これはどう皇帝に報告したものか...」

皇帝「北川が脱走したのか」

突然Skypeに皇帝が割り込んできた。

幹部B「こ、皇帝!」

幹部C「大変申し訳ありません、皇帝。北川は我々に隠れて殺人ミニ四駆を作成、それを使って我々の誇る屈強な警備員たちを次々と倒し、脱走しました。」

皇帝「私の想定どおりだ。北川は、いや北川だからこそやってくれると思っていたよ。殺人ミニ四駆か、面白いではないか。フフフ。」

幹部A「まだ遠くには逃げてないはずです。追手を出して必ず捕らえてみせましょう。」

皇帝「いや、その必要はない。」

幹部A「え、なぜですか? このままでは川崎ファクトリーの情報が警察に漏れてしまいます。」

皇帝「警備員の様子はどうだ・・・」

幹部C「いずれも気を失っているだけで、軽傷のようです。」

皇帝「そうか、それは残念だな。警備員は一人処分し警察に殺人事件として通報しろ。あとは警察が後始末をしてくれるだろう。」

幹部B「えっ・・・」

皇帝「聞こえなかったのか?」

幹部B「...分かりました。ご命令のままに。」

皇帝が通信を切った。

皇帝「北川、相変わらず手が遅いな。私の計画はすでに次の段階に入っている。」

・・・

次の日の新聞。紙面の片隅に警備員が強盗に襲われ亡くなったというニュースが載った。死因は頭部への打撲であった。

北川は無一文だった。歩いて工業地帯を抜けるには距離が長い。以前はトラックがひっきりなしに往来したであろう産業道路も、今ではその影をひそめ、たまに軽自動車とハイブリッドカーが行き来するくらいである。

北川が川崎駅を目指して歩いていると、行く手をサングラスをした黒服の集団が阻んだ。

北川「...追手か」

殺人ミニ四駆は光を使って制御するため昼間は使えない。こうなると逃げるしかない、北川は突然横道に走りだした。

黒服「追え、逃がすな!」

黒服は北川を追った。多勢に無勢、北川はすぐに追い詰められた。

黒服「我々は神奈川県警だ。警備員殺人事件の容疑者として、北川正治、お前を逮捕する。武器を捨てて、大人しく投降しろ。田舎のお父さんとお母さんが泣いているぞ。」

北川「何! お前たち、ダーク・ゴーストではないのか?」

神奈川県警(黒服)「何をいっている、我々は警察のものだ。」

北川「警察...まさか!」

北川はにじりよる黒服から逃げようと駆け出すものの、包囲されていてあっという間に抑えこまれてしまう。

北川「放せ、その手を放せ!」

北川は屈強な警察官に地面に押さえつけられ、体の自由を奪われた。

若い警察官「警部、コートの中からこんなものが」

警察官が押収したのは鋭利な金属パーツがついたミニ四駆と、懐中電灯であった。

警部「うーむ・・・これか、これが殺人の凶器だな。間違いない。」

北川「何をいっている、それは単なるミニ四駆だ、オレは殺してない、ちゃんと峰打ちにしたぞ。いいからこの手を離せ!」

警部「詳しくは署で聞こうか。おい、連れて行け。」

激しく抵抗する北川を警察官はパトカーに押し込め、その場から立ち去った。

(つづく)

この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。

賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。

ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。

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