ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第39話 メモ #mini4wd

前回までのあらすじ

流しのミニヨン・レーサー北川はミニ四駆工場を見学しているのが国会議員と知った。神山と国会議員の不審な動き。そして元ルンペンを夜呼び出した。

北川は作業が終わると工場内にある、個室で寝泊まりしている。個室といってもそこは4畳半の畳敷きの部屋とバストイレが一体となったユニットバスがあるだけの独房といってもいい。昼間の監視のものはいないが、警備員が徘徊をし、監視は怠らない。そのため自由に建物内を移動することはできなかった。

コンコン、コンコン

警備員の目を盗み、元ルンペンはそっと北川の部屋へやってきた。

北川「...入れ」

元ルンペン「北川さん、なんなんですか。夜出歩いちゃいけないって規則なんですから、これがバレて首になったらせっかくの正社員の身が全部パーですよ。北川さんは命の恩人ですけど、そればっかりは勘弁願いますよ。」

北川は何も言わず、そっと小さく折りたたんだ紙のメモを差し出し握らせると、手で払った。もう行け、という意味である。

元ルンペン「・・・???」

首をかしげながら元ルンペンは貰った紙を持って戻って行った。元ルンペンは自分の部屋に戻り、メモを広げてみた。そこには北川からのメッセージが書かれていた。

「次のものを用意して、持ってきてくれ」

メモにはびっしりと部品の数々が書いてあった。

元ルンペン「えええ、こんなの全部無理ですよ。とはいえ北川さんの頼みだしなあ...」

悩む元ルンペン。一方北川は窓の外を眺めていた。窓からは三日月が見えていた。

北川「三日月か...」

・・・

3日後の夜。

元ルンペンは同じように警備員の目を盗んで北川の独房へとやってきた。

北川「...入れ」

元ルンペン「ほんと、北川さん、勘弁して下さいよ。言われたもの、なんとかもってきましたけど、これ、ヤバイですよ。」

北川は何も言わず、持ってきたものをチェックしていた。

北川「...アレが足りない」

元ルンペン「あっ、すみません、忘れました。」

北川「アレがないとな...まあないなら仕方ない。なんとかする。」

元ルンペン「北川さん、出ていくんですか?」

北川から答えはなかった。

元ルンペン「...わかりました。北川さんは私の命の恩人ですからね、またどこかでお会いしましょう。」

元ルンペンは名残惜しそうに去って行った。北川は用意してもらったものを持ち、工場内の自分の
ブースへと向かった。

真っ暗な工場の中、一人電灯をつけて作業をする北川。そこへ警備員がやってきた。

警備員「おい、こんな夜中にそこで何をしている!」

北川「...みての通り、残業さ。ここは人使いが荒いからな。」

北川の手元ではバラバラのミニ四駆が何台もあり、組立途中だった。

警備員「...そうか、それなら仕方ないな。しかしもう夜中だぞ、明日の仕事に差しさわりがないようにほどほどにしとけよ。」

北川「...ああ」

半田付けの手を休めることなく、ぶっきらぼうに答える北川。

北川は一体何を作っているのか。

(つづく)

この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。

賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。

ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。

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