ミニ四駆小説「流しのミニヨン・レーサー北川」:第34話 限定賞品 #mini4wd

「流しのミニヨン・レーサー北川」連載再開のお知らせ:

1週間ほどお休みしていましたが、本日より連載を再開します。パワーアップした北川に乞うご期待。

前回までのあらすじ

流しのミニヨン・レーサー北川は行方が知れなくなっていた。しかし突如黒い服の男たちに追われながら浜田、学生、ユキの前に表れた。倒れる北川、そして逃走するよう言う。

北川「...これはもうダメか」

時は北川が携帯電話が水没、いやミルク没したときにさかのぼる。いまや携帯電話といえばライフライン、周囲と連絡がとれる唯一無二のインターフェースである。それだけに壊れたとなるとダメージが大きく、連絡がとれなくなってしまう。

北川が向かった先は新宿南口の電気街。携帯電話を修理に出すために来たのである。携帯電話を修理に出す手続きを終えた北川は、ふと目に入ったゲーセンに入った。

北川「学生時代、よくここは通ったものだ...」

学生時代と同じく、ゲーセンの1フロアはUFOキャッチャーがほとんどを占める。UFOキャッチャーといってもそのシステムは多種多様で、昔ながらのクレーンゲームと呼ばれたクレーンタイプは少なくなっている。北川はグルリと一周し、特に欲しいものがないと諦めかけた瞬間、目に飛び込んできたのはミニ四駆が収まったUFOキャッチャーであった。

北川「むむむ!」

アミューズメント専用仕様の限定ミニ四駆と銘打っている、鮮やかなメッキカラーのミニ四駆はマニアならずともコレクションしたい逸品である。北川の限定心に火がついた。

【参考リンク】

【プラモ】《ジャパン アミューズメント エキスポ 2013 レポート》プライズ限定ミニ四駆「スーパーアバンテ イフリート」の詳細が判明 < イベントレポート < ホビーショップ・イベント情報ポータルサイト OMOHAN(オモハン)

エスケイジャパンはすでに発表していた通り、プライズ(クレーンゲームの景品)限定のミニ四駆「スーパーアバンテ イフリート」を大きく出展した。これはゲームセンターなどのクレーンゲーム以外では入手できない、これまでにない流通経路で販売されるミニ四駆だ。)

100円を入れると1回、500円玉を入れると6回チャレンジできる。

北川「...ふっ、ここで100円を入れるのは素人。玄人であるからこそ、最初から500円玉を投入するのだ」

ゲーセン、アミューズメントでのプライズの上限価格は決まっている。ようはその上限価格まではお金がかかっても仕方がない、というのが通の判断である。これが800円なら8回以下でゲットできれば「もうかった」、となるわけだ。そのためプライズが高額であればそれなりの出費は覚悟せねばならない。

北川の予想どおり、アミューズメント限定ミニ四駆はなかなか落ちない。500円はあっという間に飲み込まれ、次の500円玉を投入した。

しかし次の500円玉もあっという間に終わる。クレーンの位置はバッチリなものの、バネの力が弱いのか、景品がつり下がっているゴムボールの摩擦力が物凄いのか、まったく微動だにしない。

さらにつぎの500円玉が飲み込まれて、北川はようやく気付いた。これは絶対に落ちないと。

UFOキャッチャーの台は大きく2つに分かれる。それは取れる台と取れない台。UFOキャッチャーの名人は欲しい景品があるかどうかではなく、取れる台と取れない台を判断し、取れる台でしかプレイしない。UFOキャッチャー名人が名人である理由は、景品を目的とするのではなく、とることを目的としているからだ。

その点ミニ四駆にかけては名人クラスである北川であっても、UFOキャッチャーにおいては素人も同然。限定ミニ四駆に目がくらみ、ついついハマってしまったのだった。しかしここまでお金を投入し、普通にミニ四駆が買える値段よりも多くつぎ込んでしまうとその負けを取り戻そうと止めることができない。どんどんと深みにはまってしまうのだ。

北川もその例外ではなかった。取れないと気付いたものの、欲しいのは他では手に入らない限定ミニ四駆だ。さらに500円玉を投入し、チャレンジを続ける。

すると、その北川の横にすっと立つ、ミニスカ・ニーソの美女が現れた。店の制服であるミニスカ・ニーソ、蝶ネクタイとブレザーに隠されてはいるが、ナイスボディがはちきれんばかりである。その美人店員がそっと北川に耳打ちした。

美人店員「特別に置き直しサービス致しましょうか?」

もはや限定ミニ四駆をゲットすることに夢中になっていた北川は考えることなく頷いていた。

美人店員はニコニコしながら鍵を取り出し、ガラスケースを開け限定ミニ四駆に手をかけた。

美人店員「お客様、そんなにこの賞品が欲しいんですか?」

北川「え、いや、そうでもないがな。ちょっと気になっただけだ。」

強がる北川。その心を見透かしたように美人店員がこう告げる。

美人店員「お客様、相当使っていらっしゃるようなので、もし良ければ、このまま差し上げてもよいですよ。ただし条件があります。」

北川「...条件とはなんだ」

表面上はクールを装っているが、思わぬ提案に身を乗り出す北川。

美人店員はクスっと笑いながら、明るく言った。

美人店員「簡単ですわ、北川さん。あなたにちょっと協力してほしいだけよ。」

と同時に回りに屈強な男たちが北川を取り囲んだ。

北川「き、貴様、何者だ!」

美人店員はくすくす笑いながら、ブレザーの内ポケットから何かを取り出した。

美人店員「詳しいことはまた後でね」

美人店員は取り出した催眠スプレーを北川の目の前に噴射した。

北川「...!」

崩れ落ちる北川、意識は混濁していく。消えゆく視界の中で北川はつぶやいた。

北川「せめて限定ミニ四駆、オレにくれよ...」

(つづく)

この小説はフィクションで、実在の人物・団体と一切関係ありません。

賭けミニ四駆レースは法律で禁じられています。

ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。

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