Perfume JPN Tour DVDと氷結SUMMER NIGHTに見る「リアル」の危うさと「ライブ」の意味 #prfm

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ようやく私の家にも待ちに待ったJPNツアーライブDVDが届きました。一度WOWOWの放送で見ていたし、そもそもツアーにはさいたまスーパーアリーナ、愛媛武道館、武道館(東京)、そして沖縄の打ち上げ公演と4回も見ていることもあり、もはや慣れ親しんだ映像ばかり。ただ何度みてもJPNスペシャルからGLITTERの流れは素晴らしく、飽きずにリピートしまくっております。

そして先ごろヒカリエでのライブ、氷結SUMMER NIGHT。ダイジェストムービーという割には15分というボリュームでyoutubeで公開されています。

この2つ、JPNスペシャルと氷結SUMMER NIGHT。この軸線上に、あるテーマが我々に突き付けられています。

JPNスペシャルは東京ドームライブを端に発したプロジェクションマッピングの手法をより積極的に取り入れ、さらに3D CGにより Perfumeのメンバーを一度ポリゴン化して再構成するといった映像表現も入れています。このポリゴン化、いわば素粒子化された Perfumeは Global サイトでのプロジェクトでも利用されています。

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そしてヒカリエで行われた氷結SUMMER NIGHTでは3Dホログラムといった手法を導入。透明なスクリーンに映像を映し出すことにより、あたかもその場にいるかのような映像表現となっています。簡単にいうと、スターウォーズのレイア姫のメッセージ映像ってことです。

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さらに驚くのが、この3Dホログラム技術を使い、Perfumeの指が動くとその軌跡をパーティクルがまとい、そして消えていくというまるで魔法を使っているかのような映像表現。これにより空中に「Hurly Burly」という曲タイトルを浮かびあがあらせるのです。

種も仕掛けもあり、よく見ると指先に黒っぽいセンサーをつけていて、それをトラッキングすることでリアルタイムに映像を投射しているのですが、それを感じさせません。まさに魔法といったところでしょう。

圧巻は6人の Perfumeが登場し、映像の3人は素粒子化して消えていくシーン。

はいはい、映像ね、と思えば自然なのですが、ちょっと待って下さい。これを見ているのって何?

そうなんですよ、youtubeという映像なのです。youtubeの中に映っている6人のPerfume、うち3人がスクリーンに映し出された3D ホログラムとしても、残りの3人といえども youtubeを通して液晶ディスプレイに映し出された映像なのです。虫眼鏡で拡大すれば、それぞれはピクセルに分解されていることが自明。いつどんな形で煙のように消え去ってもおかしくない、仮想の存在です。

JPNスペシャルでは三角形のスクリーンの中の映像、そしてその手前に登場する3人がシンクロして動きを見せますが、まるで映像から飛び出たかのような演出。そして再び映像の中で巨大化する3人。それをDVDというメディアを通して、ディスプレイに投影し視聴するのです。

こうなってくると、どこまでがリアルでどこからがバーチャル(作り物)なのか分かりません。Perfumeという3人が映像の中だけの存在ではなく、生身の体として実在する人間である必要がまったくないのです。これはメガゾーン23で言うならば、まさしく時祭イブ。

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時祭イブ、そのものを現実化したのがもはや説明不要となった「初音ミク」。

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現実には存在しないけど、確かに「初音ミク」というアイドルは存在し、現実化しているのです。

バーチャルから出発し、リアル化した初音ミク

一方生身の体をもち、リアルから出発した Perfumeは今まさにバーチャル化しようとしているのです。いやすでにバーチャル化しており、我々がみている Perfumeの姿はすべて幻想

Spring of LifeのPVでアンドロイドになってましたけど、実はあれが現実ですでに Perfumeの量産化に成功、かしゆか 1号、かしゆか 2号...といったように10人のかしゆかが存在するのかもしれません。えっ、なにそれコワイ!

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コン・バトラーVのガルーダは自分を人間だと思っていたものの、前半最終話で自分が量産型アンドロイド(ロボット)の一つであることを知り自我が崩壊、自暴自棄になり自軍を滅ぼしてしまいましたが、そんな感じ。

超電磁ロボ コン・バトラーV - Wikipedia

王子然とした美形キャラであるが、表皮の下に鳥人の姿が隠されている。母であるオレアナを敬愛していたが、第25話で破壊されたミーアを救おうと、初めて足を踏み入れたロボット工場で15体にものぼる自身の失敗作の姿を目にして、敬愛は一気に憎しみへと転化する。

実はガルーダはキャンベル星人ではなく、キャンベル星人に似せたアンドロイド(人間そっくりのロボット)である。ただ完全な機械体ではないらしく、流血し痛覚もあり、傷を修復する等の擬似生体機能もある為、本人もロボットだとは気が付かなかった。

最初から傀儡(くぐつ)として利用されていたことを悟ったガルーダはオレアナに反逆。巨大メカ、ビッグ・ガルーダに搭乗し単身、コンバトラーVに挑むが敗れ、ミーアの亡骸を抱きながらメカともども爆発、四散するのである。

こうなってくるとまさに押井守の世界。幻の企画となった、押井守監督版ルパン三世のモチーフです。

押井版ルパン三世 - Wikipedia

世界中にもう盗むモノが無くなり、怪盗としてのアイデンティティを喪失し、酒場でのポーカーに大儲けしたものの袋叩きに遭い、身ぐるみはがれたルパンと次元。「そろそろ何かやろうぜ」と次元が促すも、ルパンは「今更何をやるんだ」とやる気をなくしていた。そこに若い女が依頼を持ち込んできた。

依頼は、伝説では現実と非現実の狭間にあるようなものと言われている「天使の化石」を盗むこと。大戦中にアフリカで発掘された後、ナチスの手に渡って、そしてイスラエルに渡り、なぜか日本に持ち込まれているという。最終的にそれを見つけるものの、それはフェイク、ただのプルトニウムだった。それにルパンが触れてしまったことで大爆発を起こし、東京が壊滅する。

しかし、これもフェイクだった。実際には爆発も嘘だった。だからルパンが現実である訳がない。

そう、最初からルパンなんていなかったのだ。

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そうでなくとも「現実」というのは危うい存在。自分がみている「現実」がみんながみている「現実」である保証はなく、「現実」が人それぞれで違うことを意識せず「現実」を捉えている事実。「現実」よりもリアルなバーチャルが世の中にはあふれかえり、そうなってくると人間は何を現実とするのか。それを今まさにつけつけられているのです。

原発がなくても電気が足りる世界。原発がないと電気が足りない世界。

どちらも「現実」ですが、人によって違う「現実」。そもそも電気の需要とは。需要が減れば足りるし、需要が上がれば不足する。同じことは増税、埋蔵金の論議でもありました。増税しなくても足りる、いや足りない。

どちらが正しいか、なんてことは客観性を持たないのです、いや持てないのです。なぜならば現実のベースが人それぞれで異なるから。その最大公約数をとったものを常識といい、共通認識とすることで社会の平安は保たれるのです。ところがその常識が揺らいでしまうと、社会が揺らぐのも当然のこと。

リアルとバーチャルの線引き。何を現実とするのか、それはもう人によって異なり共通認識をもつことは難しい社会に完全に片足を突っ込んでしまったのでしょう、つまり我々はもう押井ワールドの中ということです。

この押井ワールドから抜け出し、本当の現実を見つけることはできるのでしょうか? そのカギはJPN DVDの最後にありました。

去り際にあ~ちゃんがこう言い残します。

ライブっていいでしょ

ライブ感ってそういうの

今日のことは、みんなとの秘密!

そして沖縄公演の最後の花火打ち上げへ。あの日、あの時みた花火。

Perfume 沖縄打ち上げ公演「海パーン!!」:楽しかったネ! #prfm ([の] のまのしわざ)

そしてトドメがアンコール終了後の(すでに有名になった)打ち上げ花火なのですよ。

サプライズで行われた打ち上げ花火。涙ながらに

「しっとった、しっとった?」

と観客に聞くあ〜ちゃん、笑いながら手や首を振る我々。

そう、これが現実なんです。ライブに現実があるのです。映像ではない、躍動する生身の身体、飛び交う歓声、そして震える空気。

目で見て脳で理解するものではなく、肌感覚。温度であり、湿度であり、空気を、音を全身で感じることができるのが唯一「ライブ」。この「ライブ」で我々は生きていることを実感、再確認できるのです。

そういえばライブは LIVE、生きるという意味でした。このLIVEに参加して初めて、Perfumeが本当に生身の身体でありそのへんにいそうな女の子であること、なのに驚異的なパフォーマンスを繰り広げるプロフェッショナルであることをつきつけられて、驚愕するのです。

ええ、映像(バーチャル)で驚いてる場合じゃないってことです。リアルはほんと凄いよ、もっと凄いよ。

だからライブみなきゃPerfumeの真価は分からないってことです。ライブにいったことのない人にはぜひライブにいってほしいし、自分もアジアツアーを見に台湾だろうが、シンガポールだろうが行きたいのです。そして Perfumeが量産化されておらず、かしゆかが未だ生身の人間であることを確かめなければならないのです。

ああ、ほんと氷結SUMMER NIGHTいけた人が羨ましい・・・映像でこれだけ驚くんだから、実際にみたら本当に顎が外れるくらい口あんぐりだったんだろうなあ。

リアルだかバーチャルだかもはや分からない日本社会、押井ワールドから抜けだすには Perfumeのライブ。これに限ります。

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