地獄のF1富士を経験、その後の富士スピードウェイおよびトヨタの対応を2年以上観察しつづけたものとして、今回のレクサス暴走事故のトヨタの対応はまさに想像通りです。
まず問題のレクサス暴走事故について。地獄のF1富士と同様、メディアでの報道、扱いが非常に少ないです。中日新聞と朝日新聞が詳報するくらいで、毎日新聞はほとんどスルーです。
東京新聞:フロアマット問題 トヨタ『注意喚起』 米当局『リコール通知』 認識の違い鮮明:経済(TOKYO Web)NHTSAに報告されている事故例では、運転席フロアマットが規格外だったり、留め具が外れていたりした場合、アクセルペダルが引っかかり戻らなくなる。
八月にはカリフォルニア州サンディエゴでレクサス車が時速約百九十キロで暴走し一家四人が死亡。米メディアで繰り返し報道されている。
事故が発覚した理由が痛ましい。暴走したレクサスに乗った家族が911(110番に相当)に電話で通報したためです。
英語動画 英見聞 Niknews | トヨタ 米レクサス加速、無制御 死亡事故の車は販売店の「代車」と判明、トヨタのお膝元のディーラーの安全管理が問題に、4名死亡事故始め、このショッキングな事故へのアメリカ-メディの報道動画、2年以上も前から起こっていた問題との指摘、参考に最新の日本の報道(下端) 英語動画 5本 英見聞 Niknews Toyota Floor-Mat Problem Was Known Two Years Ago 091018後部座席にいたとみられるクリスさんが「911コール(緊急電話)」をしたのは、交信の長さから、さらに5キロ進んだ、事故現場の3キロ手前のあたりとみられる。アクセルが戻らないなど事故原因を推定させる情報を世に伝えた交信だ。
Toyota Floor Mats May Be Deadly Hazard - ABC NewsDISPATCHER:
911 emergency what are you reporting?LASTRELLA:
Our accelerator is stuck...
We're in trouble. We can't-
there's no brakes...DISPATCHER:
Okay and you don't have the ability like, to turn the vehicle off or anything?LASTRELLA:
We're approaching the intersection...
We're approaching the intersection
Hold on. Pray...
クリス:レクサスに乗って125号を北上している。アクセルが動かない
通信指令係:どこを通っているのですか
クリス:(誰かに何かを尋ねた後、叫んで)120(マイル/h、時速約190km/h)で走っている。トラブルだ。ブレーキが利かない。ミッション・ゴージ道路の終点まで0.5マイルのところだ。
通信指令係:分かりました。車を止めることができないんですね
クリス:交差点にちかづいている。交差点に近づいている。つかまって
クリス(マークの「祈って」という声)祈って。くそ。おー、おー
(女性の叫び声のあと衝突音)
通信指令係:もしもし
そして警察が調べてみると実際に衝突事故が発生しており、全員死亡したという衝撃的な内容でした。
原因はフロアマットがアクセルペダルにひっかかり、アクセルが戻らなくなるというもの。非常に単純ですが、大変重大です。
これに対してトヨタ・レクサスの対応は鈍く、それもそのはず。リコール対象車が380万台にも及び、そのコストがのしかかってくるからです。
東京新聞:フロアマット問題 トヨタ『注意喚起』 米当局『リコール通知』 認識の違い鮮明:経済(TOKYO Web)トヨタは二〇〇七年に「カムリ」などをリコールしたが、新デザインのマットへの取り換えで対応した。米国では「全天候型」と呼ばれる分厚いマットを使用するケースが多い事情もある。今回も「車両の欠陥でなく、マットの使用法の問題」(トヨタ米国法人)にとどめたい意向だが、米当局がどこまで強気に出てくるか、目が離せない情勢になっている。
該当車種のリコールは2007年に行っていたのですが、フロアマットのみの対応に留めています。
中日新聞:トヨタに米当局がペダル改良要求 フロアマット問題で:経済(CHUNICHI Web)米当局は、今年8月にカリフォルニア州で起きたレクサス車による一家4人の死亡事故を重視。ペダルがフロアマットにはまり込んで車両が暴走したのは、マットやペダルの形状、床とのすき間の幅などが複合要因になったとの見方を強めており、トヨタに厳しい対応を求めている。
一方、トヨタは事故原因を独自に調査。事故を起こしたレクサスが規格と異なるマットを使っており、敷き方も正しくなかった事実を指摘。誤ったマットの使用方法が事故を引き起こしたとして、ペダルなど車両本体の欠陥については否定している。
トヨタの言い方だと、ユーザーが悪い、と聞こえます。
ところが新しい事実が発覚しました。なんと暴走事故を起こしたレクサスは、トヨタ系販売店が提供した代車だったのです。
asahi.com(朝日新聞社):米レクサス暴走 死亡事故車は販売店からの「代車」 - 社会米国で4人死亡の暴走事故を起こしたトヨタの高級車レクサス「ES350」は、犠牲者がトヨタ系販売店から、自分の車を整備のため預けている間、借りていた「代車」だったことが分かった。
asahi.com(朝日新聞社):米レクサス暴走 死亡事故車は販売店からの「代車」 - 社会関係者によると、事故で死亡したカリフォルニア州高速警察の隊員であるマーク・セイラーさん(当時45)は、自分の車を整備のために販売店に預けた。セイラーさんの車はES350とは別のレクサス車だった。
8月28日、販売店から借りて乗っていた代車は暴走。妻、娘、義理の弟とともに亡くなった。これまでの調べで、代車の運転席には、トヨタ純正だがES350用より前後がやや長い、別のレクサス車用の全天候型フロアマットが装着されていた
こうなると話はまったく別です。まるでユーザーが「車種の異なるフロアマットを使用」したために事故がおきたといわんばかりの論調、つまり
ユーザーが悪い
と言っていたのがまったくもってアベコベです。
asahi.com(朝日新聞社):米レクサス暴走 死亡事故車は販売店からの「代車」 - 社会代車に全天候型フロアマットを取り付けたのがセイラーさんなのか販売店なのか、地元警察当局は明らかにしていない。
代車にわざわざ自分でトヨタの別の車種用フロアマットを購入、またはどこからか借りてきて取り付けるなんて、常識的に考えてありえません。代車ですよ。
(追記:自分のレクサス車についていたフロアマットが超お気に入りで、わざわざ取り外して代車のES350に乗せかえた、というのも考えにくい)
asahi.com(朝日新聞社):米レクサス暴走 死亡事故車は販売店からの「代車」 - 社会トヨタは「適切にマットを固定し、二重に敷くようなことをしなければ、トラブルは発生しない」と主張しているだけに、販売店を通じてセイラーさんに対し注意喚起をしていたかが問われることになりそうだ。この販売店は現時点では取材に応じていない。
チグハグな感が否めませんね。トヨタが主張する適切な使用方法を守っていたか、まず販売店が明らかにすべきところです。
asahi.com(朝日新聞社):米レクサス暴走 死亡事故車は販売店からの「代車」 - 社会しかし、08年にマット以外に車の構造的な問題があると指摘する調査報告書をまとめていたNHTSAは、今回の4人死亡事故を受け、マットを回収すれば済む問題ではないとの姿勢をさらに強めた。長さや形が少し違うマットを敷いたぐらいでは死亡事故が起きないよう、誤った使い方も想定して常に安全でなければならないとする「フェイルセーフ」の考え方が根底にある。
VWやBMWではアクセルペダルを踏みながらブレーキを踏むと、スロットルが自動で閉じる(回転数があがらない)ような制御、フェイルセーフ機構が働きます。NHTSAが求めている根本的な問題解決はそのようなフェイルセーフ機構をさしているのでしょう。
トヨタの問題点はいつも同じです。地獄のF1富士の時に感じたことと一緒です。
・事実を覆い隠そうとする
・メディアでの報道を少なくする(広告代理店、メディアが自主的に行っているきらいもあり)
・ユーザーのせいにする
・ウソをいう
以前読んだ「トヨタの闇」ではトヨタのリコール数がホンダよりも少ないことに着目。さらにホンダのリコール対応割合が高いのに、トヨタは半数程度しかないことを明らかにしました。コストにダイレクトに跳ね返るリコールを、一部隠していたり、周知徹底を(わざと)しないことでコストをセーブしている傾向がみてとれます。
これがそのへんの電気製品だったらまだマシですが、トヨタが作っているのは自動車です。命がかかっているものなのです。それなのにこの企業体質は本当に由々しきことでしょう。
書評「トヨタの闇」 ([の] のまのしわざ)しかしこの校長倫理の話に照らし合わせれば自明で、人間仕事ばかりじゃダメなんですね。人間性も失われるし、色々ギクシャクしてしまう。
トヨタはクルマメーカーなのですから、仕事でもペダル同様「遊び」を作ったらどうでしょう。無駄を省く、遊びをなくせばいい、という今のトヨタ流はいつか必ず崩壊すると思います。
トヨタは生まれ変わった方がいいかもしれませんね。
追記)続きはこちら⇒レクサス暴走事故:暴走するとブレーキは効かない。Nレンジにも入らないかも。
[の] のまのしわざ: f1 アーカイブ
F1 日本グランプリ in 富士スピードウェイ 2日目:地獄絵図 ([の] のまのしわざ)
2007F1日本グランプリ被害者の会(事務局)
ysformen
アメリカだと必要ないのに全天候型のフロアマットをディーラーがしこむ、という話を冷泉さんがJMMの中で記載してました。
のまさんは逆の視点なので興味深いです。
たしかに代車に違う車のシートを置くのは変ですね。
tnoma
> ysformenさん
コメントありがとうございます。早速冷泉さんの記事も拝見しました。
私はフロアマットやフェイルセーフとは別に、事故に対する対応や姿勢が問題だと感じています。特に今回トヨタ系ディーラーの代車だったことが明るみになったわけですが、事故が8/28ですから今まで分からなかったはずがないと思うのです。
bobo
今回のレクサスのフロアマットの事故ですが、真実を報道していないことに大きな問題があります。
この問題になっているフロアマットですが、もともとデフォルトで突いているマットではなく自動車を運転していた人が自分で購入したマットを勝手に無理に押し込んで使用していたそうです。このような原因の事故までトヨタが責任を取らされるなんてどうかと思いますし、報道もこの肝心なところを省いていかにもレクサスに問題があったかのように報じています。日本のマスコミはトヨタがコマーシャルから撤退していることを根に持っているとしか思えません。
bobo
批判をブログでするのは自由だと思います。けれど、そういう場合は一方的にするのではなく、ブログに対する批判も載せるべきですよ。そうしなければ、誹謗、中傷された人や企業は反論をするわけにもいきませんから。
こういう偏向的なブログに限って、コメントを制限してるんですよね。どこかから指示を受けて、あるいは商業的な意図でブログを書いていると思われます。
私もブログで批判をすることがありますが、それに対する反論はすべて受け付けています。
skyworker
この記事でまとめて頂いた範囲でしか情報を知らないのですが、アメリカの教習所では
・ギアをニュートラルに入れる
・サイドブレーキを引く
・壁などに側面をこすりつけながら減速する
等のやり方を教えないんでしょうかね。
120milesも出てたら冷静を失うのはしかたないんでしょうし、トヨタの対応も最善とは言えないのは事実ですが…
tnoma
> boboさん
最初のコメントについてですが、システムの自動判断にて保留されておりました。さきほど確認して公開しました。
スパムや公序良俗に反する場合を除き、このブログではコメントは自由に受け付けております。
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> skyworkerさん
高速道路に壁がなかったのかも知れませんし、なんとも今の時点ではいえません。ただドライバーはカリフォルニア州高速警察の隊員だったということですから、一般ドライバーよりも知識もあり腕は確かだったように思います。
げんた
最近の報道ではエンジンがぶんぶん回るとブレーキの倍力装置に異常が出て旨く働かなくなると言うのもありますね。
又、エンジンを止める非常措置がやりにくく、又ユーザーに徹底していないとも言っています。 何でもエンジンの起動ボタンを押しただけでは駄目で、3分間押し続けなければ駄目なんだそうです。
tnoma
> げんたさん
コメントありがとうございます。やはりブレーキの倍力装置が効かなくなるんですね。
ボタンは3分ではなく3秒間の間違いでは。