ホンダに限らず車業界全体に不況の嵐が吹き荒れていますが、そんな中ふとどこかでこの本を見つけて早速読んでみました。本田技研工業株式会社の創業者、本田宗一郎氏による人生書です。
やりたいことをやれ | |
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元々「一日一話」として出版されたものを再構成、「やりたいことをやれ」と改題したとのことですが、内容を見る限り「一日一話」のままがよかったでしょうね。ページ構成として1ページに1話、手短かにエピソードやら、教訓やら、説教やら、決意表明などが書かれています。しかも前後関係はいっさいなし。日めくりカレンダーに一言いいことが書かれているといった風情です。ですから通して「読む」といったものではなく、パラパラと見て「なるほどなあ」と感心するといった感じでした。
特徴的だなと思ったのが、時間に対する考え方。時間はすなわちスピード(速度)でもあるわけで、とにかくスピードだと。
時間はすべての生命である1日24時間という限られた時間から、いかにして人間が自由にできる時間を多く獲得するかというのが、現代のテーマだと思う。
(中略)
現代では時は金以上、すべての命だ。
時間と人間(中略)
時間と空間の相対化というのは、私たちがより安定した快適なスピードを手に入れることによって自分たちをとりまく活動圏をより広くし、時間的にはより狭くしているということだ。このように、こと時間に関しては貪欲なほど積極的に前進しているのだ。
時間はどんな人にも平等で、1日24時間です。この24時間をいかにうまくつかうか、そのためにはスピードが重要です。ライフハックも基本、このスピードの追求ですね。
スピードが勝負だスピードというのは、すべての人間が欲します。すべての問題をスピードが解決するんじゃないですか。人間は生まれでるとすぐスピードなんですね。親だって、早く大きくなれ、早く偉くなれという。早いということは、人間社会のひとつのモラルであり、人間の望んでいることじゃないですかね。戦争だってほとんどスピードですわね。
(中略)
スピードを否定する人間は敗北者だと思います。
ホンダが車メーカーとしてレースに早くから参戦したのは、レースに勝つこと、競争に勝つことですべてが証明できると考えているから。すべてとは、高性能であり、高品質であり、ブランド。
本田宗一郎氏が優れたエンジニアと同時に起業家でありえたのは、企業も競争であり、勝つことにこだわったから。つまりレースと同じだったのでしょう。しかもただ勝つことだけ、を目指したわけではないのです。
いつの世にも変わらぬものすべての社会的現象がスピードアップして、万物流転、有為転変の様相も実にすばやいものになってきた。しかし、そういう変転きわまりない時代にあって、根本的に変わらないものがひとつある。それは何かというと、人の心というやつだ。つまりはその思想であり、その根っこの哲学である。しっかりした思想と哲学を持たぬ企業は、これから先どんどんつぶれていくだろう。
この本を読むと、いかにオヤジさんが人を大事にしていたか、感謝していたか伝わってきます。ホンダも苦境にたたされていますが、オヤジさんのDNAを継いで未来を切り開いていってほしいですね。頑張れホンダ。