昨今「デジタル万引き」という言葉ができて、携帯カメラで本の写真をとってはいけないことになっています。
本屋さんでのできごと - $ dropdb 人生さっき、本屋さん行ったんですよ。本屋。そしたら小学生らしき女の子が宿題してるんです。
売りモノの本をしゃがみこんで読んで宿題っぽいプリントを広げてえんぴつでプリントに必死に書き込んでるんです。本屋の本をデジカメで撮ったら万引きかどうかってレベルじゃない。もうね、びっくりした。
(中略)
おいおい・・・宿題をちゃんとやろうとする心意気は偉いんだが、根本的なことがちがうよ!ぜんぜんちがうよ!ここは本屋であって図書館ではないよ!たぶんまたしばらくしたら店員が注意するだろう。
本屋で参考資料をみながら宿題をその場でやるという図なわけですが、確かに日本ではマナー違反でしょう。しかしながら、アメリカなど外国を見てみるとちょっと事情が異なります。
デジタル万引き - Wikipedia北米、欧州、台湾など日本以外の地域では店舗内にカフェやコピー機が設置されており、書籍の購入の有無に関わらず自由に持ち込み利用出来るサービスを提供している店舗が一般的であり、映画や小説でもたびたび描写されている(例:映画「ユー・ガット・メール」など)。そのため、日本のような問題は根本的に発生していない。(ただし、近年まで国内でも店頭のコピー機で購入前の書籍の複写を黙認している店舗は多く存在した)
ニューヨークのBarnes&Nobleという書店では床に座り込んで、本を何冊も広げながら宿題をやる大学生の姿が一般的です。さらに店内にカフェがあって本屋の本を持ち込んで、コーヒー飲みながら読み散らかすのもOK。幼児書のコーナーではもはや幼稚園のような状況で、本は床に散乱し、子供たちはそれを踏みつけながら遊んでいるという状況。そこまでやっておきながら、本、買わなくてもいいんですよ。
本を買うのは、書店から本を持ち出す場合のみ。
アメリカでの本屋と図書館の違いは、有料で本を持ち出して返却しなくていいか、無料で本を持ち出して返却しなければいけない、くらいの差なもんです。つまり「紙」を売るか、貸すかの違い程度ですね。
つまりアメリカの本屋は「情報」を売っているのではなく、「紙」を売っているのです。
それに対して日本は「紙」ではなく「情報」を売っているので、「デジタル万引き」やそれに類似した行為はご法度です。
アメリカの本屋で面白いのは、人気のない本はディスカウントされるということです。つまり在庫があまればセールで安くなります。特にカレンダーやクリスマス向けなど季節モノは非常に安くなります。これは服と一緒で、供給過多になったり新鮮味が落ちれば安くなるという、需給の原則に従ってます。かたや日本はというと、再販制度があるので安くなりませんね。
アメリカの本屋が日本のように「情報」に値段をつけず、「紙」に値段をつけることにしているかというと、「情報」さらには「知」に対する考え方の違いから来ているのではないかと思います。
根本的に「情報」や「知」は公共のもので、それをみんなが平等に分かち合える、という民主主義に立脚しているのではないかと。
民主主義 - Wikipedia民主主義の成功のためには国民の有権者全体が知的教育を受けられること、恐怖や扇動に惑わされず理性的な意思の決定ができる社会が不可欠である。
民主主義を達成するためには、民衆が知的でなければなりません。知的になるためには知識の源である本が、誰でも見られる状態になる必要があります。つまりアメリカの本屋は図書館と同様、民衆を知的教育する公共性を有していると思われます。
一方日本は権威主義のため情報や知識は権威が持つものといった風潮があり、逆に権威は民衆が知識を持つのを保身上嫌います。
権威主義 - Wikipedia権威主義(けんいしゅぎ)とは、意思決定や判断において自分の頭で考えたり情報を集めずに権威に盲従する態度。
特に官僚主義と結びついた権威主義、学歴社会が日本社会の主軸となっているので、「情報にこそ価値がある」というのは社会の共通認識です。そのためその価値を値段に換算しますし、閉鎖的にもなります。
そんな違いを感じながら何がいいたいかというと、日本にcostcoが進出しているのだから、同じようにBarnes&Nobleにも進出してほしいなと。そうすれば併設されたカフェで座って本を読んだり、店内で宿題やったりできるのになあ。
【関連リンク】
●Barnes & Noble - Books, Textbooks, Used Books, DVDs, Music, Toys, Home & Gift
●Barnes & Noble、雑誌のデジタル講読サービスを開始 - ITmedia News
tsuchiya
そう言われてみれば、上海最大の書店「上海書城」でも、
書店の本で勉強してノートを取っている大学生で
店内が溢れかえっていましたね。
面白い知見ですが、この問題を議論するには、
図書館と書店の棲み分けの議論が必要かと。
日本以外の国の図書館では、ベストセラーの新刊を何十冊も購入して、
それを利用者が競い合うようにして借りて読む、ということはあまりなく、
調査研究目的の図書館が主体になっている気がします。
tnoma
確かに図書館自体の役割も日本と諸外国で違う気がします。
日本の図書館は無料の漫画喫茶みたいなものに落ちぶれている印象ですが・・・
そもそもアメリカではベストセラーコーナーってのが少なく、日本みたいに書店すべてがベストセラー置き場みたいな状態とは随分異なるんですよねえ。
だからベストセラーをおく図書館というのは、書店の悪影響を受けているように思います。
長くなりそうなので、別の機会に。