上記2件、引用についてのお話。
引用ってどこまで許されるか?というのは数年前、小林よしのりのゴーマニズム宣言を引用し、批判した本を小林よしのり側が訴えた時にちょっと考えさせられた。
私は、かつて小林氏の漫画を絵を含めコマ単位で引用、批判して『脱ゴーマニズム宣言』(東方出版)を出版した。これは、大変に分かりやすいという評判をいただいた。ところが、小林氏から著作権をめぐって訴訟が起こされ、現在係争中である。
今も係争中であるのかはわからないが、少なくとも第一審は合法で、引用の範囲という裁定でびっくりした覚えがある。
現行の著作権は以下のとおりです。
- 著作権法
- 著作権の基礎
- 著作権についての蘊蓄
- 著作権の基礎
これだとわかりにくいので、引用について要点をまとめているものを以下に。
- 法律文献の引用方法
著作物の引用の方法引用は、自分の学説や考え方を展開するために、あるいは自分の説の裏付けや補強のために、他人の学説や考え方を引用することです。また他人の学説や考え方を評論するために、他人の著作物を引用する場合もあります。他人の著作物を引用する場合や参照した場合には、以下の引用方法にしたがいます。
1.他人の論文、判決文などを引用する場合には、引用文を「 」(カギカッコ)でくくって表示し、自分の文章と区分すること。
2.引用される文章の分量は、必要最小限度の範囲にかぎられ、自分の作った文章が主体であること。
3.引用が認められる場合には、翻案して引用することは認められないので、ダイジェスト引用はできない。
4.他人の論文、判決文などを引用あるいは参照した場合には、必ず出所(出典)を注番号で明示すること(注番号の扱いは、後記「6.文中に表記する注番号の扱い」を参照)。
5.引用文(著作物)またはその題名に不本意な改変を加えてはならない。
これは法律関係の論文を書くときを対象に紹介しているが、基本のポイントは同じ。
blogであるが、blogの前に、webでの引用、引用以前にlinkをはるという行為がどういった法律解釈にあたるのを考察しているのは以下の通り。
- 栗田/Web出版における引用
リンク集へのリンク
Links to Legal Citation
残念ながらこの著作権法は「漫画」のような絵と文章をミックスしたメディアや、当然Webや現在のblogのようなシステムがあることを前提には作られてない。そのために現状にあうような法律整備が待たれるのだが、前述したような漫画の引用が許されるという裁定は、自分の感覚からはちょっと離れているなと感じたのであった。
たとえばこれが認められるのであれば、好きな漫画の解説、批判をする本やページ(web publishing)を作る場合に必要となる漫画をスキャンしてよいこととなる。現在webでは漫画をスキャンしてあげるなどモラル的にまずいと思われるが、十分な主体となる「自分の学説や考え方を展開するために、あるいは自分の説の裏付けや補強のために」、他人の漫画を引用することが可能になるわけ。
主従関係(自説と引用)が逆転してはいけないので、自説の分量が十分な必要がある。しかし
文章と文章であれば、文字数やページ数で計測可能だが、漫画と文章ではどう計測するのか明確ではない。漫画は縮小しても意味が伝わるので、見える範囲で縮小してしまえば主従関係を維持するのは容易であるかもしれない。
今は漫画(絵と文章のミックス)がその対象であるが、次の興味は映像はどうなるか?である。TV番組やアニメーション、CMの一部を引用することは可能なのだろうか。今PCで簡単に映像をとれるし、必要なところ切り出すことが可能だ。静止画(画面キャプチャ)ならOKなのであろうか。もしそれがOKなら、モー娘のCMをキャプチャして、それについての薀蓄を語ればOKってことか?
そりゃ常識的にダメだろうと思うのだよ(^^) それだけに、この漫画の引用がOKだということが本当に判例として確定すると、ある意味画期的なことになると思ったのだ。もちろん上記のモー娘の問題はこの漫画の引用からすると拡張解釈となるので、もう一段必要だと思う。
けれども、このように漫画の引用が許されるのであれば、イニシャルDのコマをスキャンしてwebにのっけて「このコマのアングルから考察するに、カーブのRは15R,道幅はトレノの車幅165cmからみるに約4m、この道幅で高速ドリフトするのは実際にはほぼ不可能。しかしテールスライドであれば可能」等々書けば引用として許されるのだ。日本は引用パラダイスになる可能性が大!?
この例はweb publishingにおける漫画の引用のありかたを問われるので、また違う解釈が必要となるとは思うが。
著作権って難しいよね。知的財産だから。そうそう、いい忘れていたけど「引用」が大変なのは著作権者にわざわざ断る必要がない点。著作権者が許可すれば、引用どころか複製も可だからね。