日本では3ドアホットハッチは絶滅したものの、ヨーロッパではまだまだ元気、というよりも元気すぎて激戦区。その中で気になる存在はMINI。そのMINIの最新型F56の John Cooper Worksモデル、6速ATに試乗してきたので、そのインプレッションを。
⇒ MINI.com - The New MINI John Cooper Works
見た目は意外と大人しい
前モデル(R56)のJCWも試乗させてもらっていますが、今回の F56 MINI JCWも基本は同じ。Cooper SをベースにJCWにしていて、外見の違いは専用バンパーとバッジ位しかありません。ただこの外観の違いはJCWキットというオプションを付ければJCWルックにすることができるので、そう言う意味では他の3ドアと区別することはなかなか難しいです。サイドとリアのJCWエンブレムをみてようやくそうか、と気付くことになるでしょう。
⇒ いい、いいと評判の新型MINI(F56)を試乗してきました - のまのしわざ
⇒ MINI CROSSOVER JCW (6AT)のプチ試乗 - のまのしわざ
⇒ 史上最速のMINI! 買うなら早めがいい MINI JCW GP (写真あり) - のまのしわざ
⇒ MINI Clubman John Cooper Works (JCW) 6速マニュアルの試乗レポート - のまのしわざ
しかし乗ってみるとドロドロした排気音、そして硬質なハンドリングに明らかに「違う!」と唸らされます。
スポーツカーとしての造りこみ
足回りは標準のスポーツサスペンション。硬質なのですけど、あたりが柔らかく、乗り心地はよいです。
スポーツモデル、ATであってももはやアイドリングストップは当たり前。信号待ちではエンジンが止まり、車内は静けさに包まれます。
しかしひとたびエンジンがかかり、アクセルを踏み込むと明らかに威勢のよいエンジンの咆哮が轟きます。スポーツとは視覚だけではなく、聴覚も大事です。
特筆すべきはステアリングインフォメーション。試乗はあいにくの雨(さすが雨男)で、時折強い雨に打たれ、国道16号はトラックによる轍でかなり路面状態が悪いにもかかわらず、ステアリングにつ渡ってくる接地感のおかげで安心して運転できました。
特にセンターから少し切るといったところの領域、ステアリングの座りと、微少領域のリニアリティは特筆すべき美点。応答性、正確性ともに素晴らしく、もうなんというか、だからみんなBMWにやられちゃうんだよな~、と日本人として少し悔しい思いをするくらい。
ダウンサイジングではないターボエンジン
世の中ダウンサイジングターボが流行りで、MINIもターボなのでそうなのかと思いきや、ボディサイズの拡大と比例して、排気量からパワーまで、どんどん上がっているのがMINI。旧型のR56が1600ccターボだったのに対し、今回のF56は 2000ccターボ。パワーもCooper Sで旧型の184psから192psへ、JCWモデルではなんと231馬力までパワーアップ。トルクもCooper Sの 280Nmから320Nmとなってます。
その結果、0-100km/h加速は6.1秒、トップスピードは246km/h。
参考 ⇒ スバルBRZの0-60mph(0-96km/h)加速は7.3秒 - のまのしわざ
だから遅いわけがありません。多少ボディが大きく、重くなっていますけど、動力性能には文句のつけようがあるわけもなく。2000回転も回していればシュンシュンと走ること走ること。マニュアルモードで5000回転まで引っ張ると威勢のいい排気音が、そしてアクセルオフするとブロロロロロー、パンパンというバックファイア音まで聞こえてきて、どこまでやる気にさせるんだ、と思うほど。
残念なのは、このエンジンパワーを合法に全部活かし切るにはサーキットが必要ということでしょうか。
マシンとの一体感
JCWというのはおそらくメーカー、そしてユーザーが持っているJCW像というのが共有化されており、そのイメージに合わせて作られているのでしょう。エンジンパワー、ミッション、そしてシャーシー、体に触れるインターフェースとなるステアリングにシートまで、トータルで高いバランスを保っています。
ステアリングを数ミリ動かしてイメージ通りにラインをトレースできるハンドリング、アクセルのON/OFFに追従するレスポンスとパワー、どれをとってもスポーツを超えたレーシングフィール。
シートベルトを締めるとマシンと一体になり、身体の拡張機能としてマシンが動く感覚があるんですね。モビルスーツ感覚。これが気持ちいい。
これはMINI JCWだけではなく、ヨーロッパのホットハッチ、例えばルノースポールにも共通してあるもの。ルノースポールはベースが庶民のコンパクトカーなので、インテリアがかなりアッサリ、質素なのに対して、MINIはゴチャゴチャ感が強く、より玩具的。クラッシックなインターフェースを現代の技術で実現しており、レトロフューチャーです。VWグループでいえば、VWよりアルミ多用でキラキラが多い Audi的といったところでしょうか。
VWもPolo GTiがあり、Audiには S1 quattroが。Peguot RCZに Citroen DS3と、このクラスのホットハッチは本当に熱いです。
モビルスーツに憧れた世代としては、ボールじゃなくて、GMじゃなくてガンダムに乗りたいけど、ガンダムは無理だからせめて高機動型ザクには乗りたいなあ、と願うわけです。
パプアとか、ミデア、ガンペリーみたいなクルマはもう興味ありません。ありゃあ荷車ですよ。
話が逸れましたが、一体感が最高な高機動型ザク風 MINI JCWでした。
気になるお値段は
唯一の問題はお値段ですよね。6MTで398万円、6ATは415万円です、うぐぐ。
(試乗場所:MINI 八王子)