Personal ComputingとDesktopの決別といってもいいでしょう。
Adobe Creative Cloudに含まれる、プロおよびハイアマチュア向けの写真現像ソフト Lightroomが5.4にバージョンアップ、同時に iPadアプリ Lightroom mobileが登場しました。
[モバイルの写真加工アプリ | Adobe Lightroom Mobile]
これまでの写真現像の流れといえば、
1) 一眼カメラで写真撮影(RAW撮影がベター)
2) 家に帰ってメモリーカードをPCに挿入、HDDへコピー
3) Lightroomを起動
4) HDDから画像ファイルを読み込み(Lightroom管理下へ)
5) Lightroomで現像、編集、採用・不採用などを決定
とやっていました。
ところがこのスマートフォン時代の到来で、編集、現像もモバイルでやるのが当然、とばかりにAdobeが打ちだしてきたフローがこちら。
1) 一眼カメラで写真撮影(RAW撮影がベター)
2) メモリーカードをノートPCに挿入、HDDへコピー
3) Lightroomを起動
4) HDDから画像ファイルを読み込み(Lightroom管理下へ)
5) 画像ファイル(のメタデータ、スマートプレビュー)をクラウドへアップロード
6a) Lightroom mobile (iPad使用)で現像、編集、採用・不採用などを決定
6b) 編集内容はクラウド間で共有されるので、PCでも同様に見える
・・・
一見何が凄いのか分からないかも知れませんけど、これは革命的な出来事なのです。というのは、
・これまでPCでしか出来なかったことが iPadでできるようになった
・革新的なタッチインターフェースが使える
・クラウドでの同期、非破壊編集によりオリジナル画像はそのまま
といった点です。
一度 Lightroom mobileにアップしてしまえば、PCを開くことなく、タッチインターフェースで直感的に主な編集、ホワイトバランス、明るさ調整やトリミング、回転といったのをさささっとできるばかりでなく、たくさんの画像からいいのを選ぶ作業「採用、不採用」といったフラグ付けができるからです。
PCの機能すべてを iPadでできるわけではないのがまた味噌で、あくまでも一部機能のみ。これは iPadの特性をいかして、歩きながらでも、電車の中でもスマホをいじるように気軽にやる作業に向いています。
相変わらずヘビーな作業は家のデスクトップでじっくりと行うというように、デバイスの使い分けで作業のしわけができるというわけです。
で、この使い分けで改めて感じたのが Personal Computingの行く末。
Personalな作業はどんどんスマホにシフトしている、という現実です。
これまでPCと呼ばれていたデスクトップパソコン、ノートパソコンを含めたキーボード付のコンピューターはより高度でヘビーな作業、 Workstationまたは Office Computerへと回帰していくという趨勢です。
特に画像編集やさらには動画編集といった比較的重い作業は Workstation的に家やオフィスでどっかと座って行い、逆にもっと簡単な採用・不採用のフラグ付け、トリミングといったような簡便な作業は Personal Computingで十分、ということでスマホへとシフトしていくのです。
現在 iPadアプリしかまだ出ていませんが、当然これは iPhoneといったもっと小さなスマホへも展開するでしょう。
(追記:iPhoneの対応は年内予定!)
その時効いてくるのがやっぱりデータのクラウド化、スマートプレビューという機能です。
RAWデータがクラウドを介して端末のあっちこっちに行ったり来たりするのはやはり大変なことなので、その点非破壊編集が可能なスマートプレビューというメタデータであれば軽快に使えるという点です。
ですからRAWデータは大切に家の中のHDDに、そして作業はクラウドを介して軽いものはmobileで、重いものはデスクトップで、という流れに。今回はそのためのファーストステップなのです。
Adobeは単なるアプリ会社と思われがちですが、Personal Computingの行く末をきちんと考えて次から次へと手を打ってくるのは流石、と思わせます。そのためのCreative Cloudサービスなわけですし、今後にも注目です。
ちなみにLightroom 5.4 + mobileは Creative Cloudメンバーシップに加入することで利用可能です。